家計の危機、五つの導火線

3.悪化する借金の質

 世界的な金融危機より前の2007年末、韓国の家計債務は743兆ウォン(約50兆6000億円)だったが、昨年9月には995兆ウォン(約67兆7000億円)へと34%増えた。同じ期間に銀行の融資残高が24%増えたのに対し、第2金融圏の融資残高は63%も増えた。第2金融圏を利用するのは、信用等級が低い庶民層が多い。問題は第2金融圏の平均貸出金利が年24.4%で、銀行(9.8%)の2.5倍に達していることだ。借金の返済は困難にならざるを得ない。

 赤信号は既にともった。庶民層の利用が多いクレジットカードローンの延滞率は昨年末現在で2.72%となり、1年前(2.34%)に比べ大幅に上昇した。金融研究院のチェ・ゴンピル常任諮問委員は「1000兆ウォン(約68兆円)に迫る現在の家計債務は、韓国経済が耐えられる水準の限界に達している」と警告した。

4.生活物価の上昇

 物価上昇も、破綻寸前の家計に重くのしかかる。韓国政府が発表した1月の物価上昇率は3.4%だが、低所得層の家計に影響が大きい食料品は4.8%上昇した。年初に大手ディスカウントストアが牛乳、コーヒーなどを値上げしたのに続き、今後も悪材料が山積している。今月25日にはソウルの市内バス・地下鉄料金が17%値上げされる予定だ。年初に値上げが相次いでいるのは、昨年から政府が取ってきた人為的な物価抑制策が限界に直面しているためとみられている。

5.減少する所得

 苦しい状況の中で、勤労者の財布はさらに軽くなっている。昨年1-9月の韓国の勤労者の月額平均名目賃金は0.1%の上昇で、昨年の6.8%を大きく下回った。雇用労働部(省に相当)によると、企業業績が不振で、成果給が出なかった企業が多かったことが理由だという。そこに物価上昇が重なり、実質賃金はマイナスとなった。

 家計所得の減少を補うためには、高齢でも働き続けなければならない。50代女性の就業者数は昨年、前年比で13万人(6.8%)増の205万人だった。これに対し、20代女性の就業者数は3万人(1.4%)減の192万人にとどまった。50代女性の仕事は大半が時給5000ウォン(約340円)前後の日雇い労働やパートタイムだ。

 経済が困難に陥ると、非正社員の賃金が大幅に減少する。世界的な金融危機がピークを迎えた09年8月の非正社員の賃金は前年同月比で7.3%減少した。同じ期間に正社員の賃金は3.5%上昇した。高金利の負債を抱えた低所得層で所得まで減少すれば、借金苦はさらに深刻化せざるを得ない。

金正薫(キム・ジョンフン)記者 , 孫振碩(ソン・ジンソク)記者
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