政府系機関に勤める男性Pさん(38)のケースは、中産階級まで危機に陥っている韓国の家計の深刻な状況をよく表している。
Pさんは3年前、銀行から2億7000万ウォン(約1800万円)を借り、ソウル市陽川区にあるマンションを5億ウォン(約3400万円)で購入した。Pさんは5年間の元金返済猶予期間に毎月利息だけで110万ウォン(約7万5000円)を支払っていたが、元金返済が始まる前に、家を買い替えようとした。先輩たちが広い家へと住み替えていった典型的な財テク方法だった。しかし、住宅価格が3年連続で横ばいで推移し、窮地に追い込まれた。2年後からは元利合計で毎月270万-280万ウォン(約18万4000-19万1000円)を支払わなければならないが、月450万ウォン(約30万6000円)の給料では到底払いきれないからだ。Pさんは「このままでは借金に追われ、家を売却し、賃貸物件に入るしかなさそうだ」とため息を漏らした。金融当局はPさんのようなケースを、延滞可能性が高いローンに分類している。借入金が年収の4倍を超えているためだ。
1.中産層も耐えられない元金返済
現在、住宅を担保に融資を受ける人の5人に4人は、Pさんのように元金の返済を繰り延べし、金利だけを払っている。銀行など金融機関が2005年から担保付き住宅ローンに力を入れ、元金返済猶予期間を5-7年に設定したからだ。この猶予期間が昨年下半期から期限を迎え始めた。利息だけでなく、元金も返済しなければならない世帯が急増している。
元金を返済しなければならなくなると、中産層の収入でも借金返済は苦しい。元金返済猶予期間が満了し、延滞が発生した担保付き住宅ローン1919件を韓国銀行が分析した結果、全体の45.6%が元金返済開始月から10カ月以内に延滞状態に陥っていた。一方、猶予期間満了直前の6カ月の延滞率は7.3%で、元金返済が始まると、急に延滞率が上昇することが分かる。
2.限界に達した多重債務者
複数の金融機関に借金がある多重債務者の問題はさらに深刻だ。離婚して子ども2人を育てるトラック運転手Kさん(41)は、月収が150万ウォン(約10万2000円)だ。しかし、子どもの教育費だけで100万ウォン(約6万8000円)以上掛かる。生活費に困ったKさんは昨年、クレジットカード会社や金融会社から4回にわたり、計2500万ウォン(約170万円)を借りた。しかし、借金を返済できず、毎月延滞額が数十万ウォン(数万円)ずつ膨らんでいる。
韓国銀行によると、第2金融圏(貯蓄銀行、信用協同組合、セマウル金庫など)から融資を受けた人のうち、多重債務者(57%)は借り入れ先が1カ所の単一債務者(43%)よりも多い。銀行融資の場合、多重債務者(33%)が単一債務者(67%)の半分にも満たないのに比べると対照的だ。