2012年1月23日 10時21分 更新:1月23日 17時1分
障害者団体向けの偽証明書が発行された郵便不正事件で有印公文書偽造、同行使などの罪に問われた厚生労働省元係長の上村勉被告(42)に対し、大阪地裁は23日、懲役1年、執行猶予3年(求刑懲役1年6月)を言い渡した。中川博之裁判長は「厚労省の証明書への信用を著しく害したが、検察官による違法行為で長期間被告の地位に縛られた」などとして執行猶予をつけた。
この事件では、同被告に作成を指示したとされた同省の村木厚子元局長が無罪(確定)となり、その後大阪地検特捜部の前田恒彦元主任検事によるフロッピーディスク(FD)のデータ改ざんが発覚。証拠隠滅罪で前田元検事の実刑が確定し、大坪弘道元特捜部長と佐賀元明元副部長が犯人隠避罪に問われている。こうした経緯から、弁護側は「捜査や公判に著しい不正義があった」として裁判の打ち切りを求めていた。
中川裁判長は「改ざんが内部で発覚した時点で被告や弁護側に明らかにする必要があった。公判遂行上の問題は大きく、影響は軽視できない」と指摘。一方でFD自体が裁判では証拠提出されていないことなどから「真実発見が直ちに困難になったとは言えない」として、打ち切りの主張を退けた。
判決によると、上村被告は04年6月上旬ごろ、自称障害者団体「凜(りん)の会」を障害者団体と認める偽証明書を作成。同年5月中旬ごろには、証明書の作成手続きが進んでいることを示す虚偽の稟議書(りんぎしょ)を作成し、ファクスで同会に送ったとされる。当初、元局長が指示したとされた部分は訴因変更で削除されている。【苅田伸宏、牧野宏美】