韓国水力原子力の古里原子力発電所1号機で今月9日に起きた停電事故で、原因となった非常用ディーゼル発電機が事故からわずか20日前に、政府と韓国水力原子力による合同定期安全検査で異常なしと評価されていたことが分かった。問題の発電機は、外部電源が途切れた場合、自動で作動する機能を備えていた。古里原発1号機には別の手動非常発電機もあるが、職員は「すぐに外部電力が復旧するだろう」と安易に考え、発電機のスイッチさえ入れていなかった。
■定期点検で非常発電機分解
韓国水力原子力は14日、非常用ディーゼル発電機は毎月、性能検査を実施しており、事故発生の20日前に行った性能検査では全く問題はなかったと説明した。また、事故当時は非常発電機2台のうち、1台は定期点検のために分解され、もう1台は待機状態だったが、作動しなかった。韓国国内にある原子炉23基には、それぞれ2台ずつ46台の非常用発電機が設置されているが、今回のように発電機が故障する事態への懸念が指摘されている。
専門家は「電力遮断装置と非常発電機の検査を同時に実施したことが問題だ」と指摘する。韓国水力原子力によると、作業員が発電機に過度な電流が流れないようにする継電器(リレー)を点検した際、リレーを誤って作動させたため、外部電源の供給が途絶えた。この際、非常発電機が2台とも作動可能な状態にあったならば、今回のような事故は回避できたはずだ。
■日本にもないという非常電源、活用せず
ディーゼル発電機2台とは別に設置されていた手動の非常発電機を使用しなかったことも疑問だ。日本の福島原発事故を受け、原発監督当局は「韓国の原発には、日本にはない非常電源が別途ある」と自慢した。非常代替交流電源(AAC)と呼ばれる手動の非常電源で、古里原発では1・2号機の原子炉4基で共用している。
韓国水力原子力は事故当時、AACを作動させず、予備用の外部電力網と接続したと説明した。