1 GIMPによるCMYK変換
初出時、色校正(色確認)について不正確な記述をしていました。(yamma_maさんご指摘ありがとうございます。)(2011/08/23)
1.1 はじめに
この記事はわたし自身が入稿用の写真データをCMYKで作成するために調べた内容をまとめたものです。
わたし自身の目的はフィルムをスキャンして得た画像データからCMYKに変換した画像データを作成することです。そのため、画像の加工については写真の画像データを加工するという観点から記載しています。
1.2 作業の概要
GIMP自体では色空間としてCMYKはサポートされていませんが、Separateというプラグインを利用することで、CMYKへ変換ができるようになります。Separateプラグインではこの作業をCMYK変換ではなく色分解と呼んでいるようです。(だからSeparateという名称なんですね。)
このプラグインはRGBで作られた画像データからCMYKのデータを作成するだけです。GIMPがCMYKの色空間を扱えるようにするものではありません。そのため色の調整はGIMP本来のRGBで行う必要があります。
CMYKの色空間はRGBの色空間に比べて表現できる色の範囲が狭いため、単純にRGBの画像をCMYKに変換すると全体的に鮮やかさがなくなり色がくすんだ様になります。また、緑と青はせまくなるため赤みが強くなったように感じます。
GIMPでCMYKに変換する作業は
- RGB画像データからCMYK画像データへ変換する。
- CMYK画像データから色校正用画像を生成する。
- 色校正画像を元にRGB画像で色を調整する。
という作業を繰り返します。
PCを使って印刷をして出力された色が気に入らない時に、画面で色を補正して再出力するときの作業に似ています。画面上で確認できるので、印刷よりは楽です。
yamma_maさんより
印刷シミュレーションを用いて
GIMPの編集機能を用いてリアルタイムで色を追い込める方法を教えていただきました。ただ、わたし自身がこの手順を確立できていないため説明を書くことができません。
興味のある方は、
yamma_maさん作のビデオをご覧ください。ビデオで紹介されている方法で色を追い込んだ後
SeparateプラグインでCMYK変換(色分解)を行ってください。
画像データを加工する大きな流れとしては
- 元画像を作成する。(画面上での画像調整)
- 画像データをRGBからCMYKへ変換する。
- 画像解像度および画像サイズ(ピクセル数)を調整する。
という順番で行い、画像の劣化が最小限になるようにします。
ただし、使用するPCのメモリが少ない場合は先に画像サイズの調整を行わないとメモリが足りなくなり作業できないかもしれません。
1.3 インストール
1.3.1 GIMPのインストール
展開するとgimp-2.6.XX-i686-setup-1.exeといったファイルができるのでこれを実行してGIMP2をインストールします。デフォルトではC:\Program Files\GIMP-2.0にインストールされます。
GIMP2のインストールが完了したら一度起動しましょう。GIMP2は最初に起動されたときに環境設定を行います。起動したらすぐに終了して構いません。
1.3.2 separate+プラグインのインストール
Separate+プラグインは
Separate+からダウンロードできます。わたしはこのページの一番下にあるダウンロードから「separate+-0.5.8+lcms2_win32_bin.zip : Windows用バイナリのみ(Little CMS2、DLL不要)」をダウンロードしました。
このSeparete+のページにはSeparate+プラグインの使い方が説明されています。必要に応じて目を通すことをお勧めします。
ダウンロードしたZIPファイルを展開するとseparate+-0.5.8というフォルダ(ディレクトリ)ができます。この中のbin\win32+lcms2にあるファイルを全てGIMP2のプラグインフォルダにコピーします。
GIMP2のプラグインフォルダはインストールフォルダ配下のlib\gimp\2.0\plug-insになります。デフォルトのままインストールした場合はC:\Program Files\GIMP-2.0\lib\gimp\2.0\plug-insになっているはずです。
1.3.3 CMYK ICCカラープロファイルのインストール
わたしの場合はすでにICCカラープロファイルはインストールされておりこの作業は不用でした。PhotoShopElementsやAddbeReaderなどがインストールされているからかもしれません。
試しにC:\Program Files\Common Files\Adobe\Color\Profilesかこの配下にあるRecommendedを調べてみてください。JapanColor2001Coated.iccというファイルがあればCMYK ICCカラープロファイルはすでにインストールされています。
これらが見つからなかった方は以下の作業を行ってください。
ICCカラープロファイルはAddbeのサイトからダウンロードします。
- ますAddbeのページAddbe digital imaging solutionsに移動します。
- このページ一番下のDownload the Adobe RGB (1998) ICC profileという項目のWindowsをクリックします。
- downloadsページのICC profile download for End Usersをクリックします。
- ライセンスページでAcceptボタンをクリックするとICC profile downloads for Windowsに移動します。
- このページ少し下に移動するとFILE INFORMATIONという項目にProceed Downloadsというボタンがあるのでクリックします。
- 移動したページでさらにDownload Nowというボタンをクリックするとダウンロードが開始されます。
ダウンロードしたZIPファイルを展開するとRGBとCMYKのふたつのフォルダができそれぞれにICCカラープロファイルが格納されます。
これらのICCカラープロファイルを適当なフォルダ(ディレクトリ)にコピーします。例えば、C:\Program Files\GIMP-2.0\ColourProfilesのようなフォルダを作成してそこにコピーします。
1.4 印刷データ作成手順
作業は画質の劣化を防ぐこと、他システムとの互換性を考慮してTIFF形式で進めていきます。
画像データを劣化させる主な作業は次の通りです。
- JPEGは圧縮率を高めるため非可逆圧縮を行います。保存するたびに画像が劣化します。
- 色の変換や調整およびは色の諧調を失うことになります。
- ピクセル数の変更(特に縮小)は画像の情報を失うことになります。
これでは何もできないと思うかもしれませんが、ある意味その通りです。可能な限り少ない編集回数で調整を行う必要があります。
PhotoShop(Elements含む)には調整レイヤーというものがあり元画像を変えずに編集情報だけをレイヤーとして重ねることができます。試行錯誤する場合はこちらの方が画像データの劣化を防ぐことができます。PhotoShopElementsをお持ちの方は元画像の作成はPhotoShopElementsを使いましょう。
1.4.1 CMYKデータ作成
GIMPを起動したら元画像を2回読み込み、ふたつの編集ウィンドウに画像を表示します。ひとつは色の調整用、もうひとつは色の確認用です。
- 色の調整用のウィンドウをアクティブにします。
- メニュー「画像」→「Separate」→「Separate」でSeparateダイアログを表示します。(以下の設定はわたしの例です。)
- Source color space に画像のカラープロファイルを指定します。Lenobo ThinkPad LCD Monitorというディスプレイのプロファイルを指定しました。
- Give priority to embedded profileにチェックを付けると画像に埋め込まれているカラープロファイルが優先されます。
- Destination color spaceにはJapan Color 2001 Coatedという日本の印刷標準のカラープロファイルを指定しました。
- Rendering intentにはRelative colormetricを指定しました。(こちらの方が色の転び方が少ないように感じます。)
- Use BPC algorithmはチェックを付けます。
- Preserve pure blackはチェックを付けます。
- Make CMYK pseudo-compositeにチェックを付けます。(CMYKの4刷を見ることができます。ただし、色の確認はできないとのことです。)
- OKボタンをクリックするとCMYK変換を行い別のウィンドウに結果を表示します。
- CMYK変換した画像をアクティブにして、「画像」→「Separate」→「Proof」で色校正用の画像を作成します。
- Monitor color spaceにディスプレイのカラープロファイルか元画像のカラープロファイルを指定します。
- Separated images' color spaceには色分解に用いたカラースペースを指定します。上記にあるJapan Color 2001 Coatedを指定しました。
- それより、Give priority to attached profileにチェックが付いていれば自動的に設定されます。
- ModeはNormalを指定します。
- OKをクリックすると新しいウィンドウを開いて色校正用の画像を生成します。
- 最初に開いた色の確認用の画像と色校正用の画像を比較します。
- 納得が出来たら画像サイズの調整に進みます。
- 色の調整を行った画像を保存する場合は、元画像を上書きしないように気を付けましょう。
- 色を調整したいときはCMYK変換後の画像から推測して色調整用の画像の色を調整し、再度CMYK変換を行います。
- それまでのCMYK変換画像は閉じてしまってもかまいません。(開いていてもいいですが、メモリが足りなくなるかもしれません。)
色の調整は主にメニュー「色」→「レベル」で調整します。各RGBごとの濃度を調整し「明度」で全体の明るさを調整します。色の調整を数回行った場合は画質の劣化が懸念されますので、アンドゥーで元に戻すか再度画像を開きなおすことをお勧めします。そのため調整した値を記録しておいた方がスムーズに作業を進めることができます。
さらに細かく調整したいときはメニュー「色」→「トーンカーブ」でRGBそれぞれや「明度」の調整を行います。しかし、正直なかなか大変です。
この「レベル」や「トーンカーブ」の調整を行うダイアログではヒストグラムが表示されます。このヒストグラムに隙間が多くなったときは諧調が失われていることを示します。
1.4.2 サイズの調整
画像サイズの調整はメニュー「画像」→「画像の拡大・縮小」で行います。
例えば、水平解像度と垂直解像度を350dpi、幅60ミリメートルでの印刷を想定した画像を作成するとします。
水平ピクセル数は 60mm / 25.4mm * 350dpi => 826.771・・・
- メニュー「画像」→「画像の拡大・縮小」で画像の拡大・縮小ダイアログを表示します。
- 画像サイズ:幅に827を指定します。
- 水平解像度に350ピクセル/inを指定します。
- 拡大縮小をクリックします。
1.4.3 画像の保存
最後に完成した画像を保存しますが、GIMP自体はCMYKの画像を扱うことはできません。画像の保存にもプラグインを使用します。
メニュー「画像」→「Separate」→「Export」で保存します。
最後に、CMYK変換後のウィンドウを閉じるときに画像を保存するかGIMPが聞いてきますが、「保存しない」を選択してください。でないとせっかく作成したCMYKの画像データを上書きしてしまいます。