JR西日本の春のダイヤ改定で、一部の時間帯に普通列車も止まらなくなる無人駅が兵庫県と京都府にできる。時間短縮が理由だが、山陰海岸ジオパークの世界認定など観光の追い風に乗ろうとしていた地元自治体は「出ばなをくじかれた」と怒り心頭だ。大河ドラマ「平清盛」のロケ地に近い駅もあり、「理解しがたい」と猛反発している。
17日の改定で普通列車が通過するのは、山陰線の7駅と播但線の1駅、舞鶴線の1駅の、計9駅。兵庫県内では山陰線の玄武洞(豊岡市)、鎧(よろい、香美町)、久谷、居組(新温泉町)と播但線の長谷駅(神河町)が対象だ。通勤・通学や通院の利用者が多い朝夕は止まるが、それ以外の時間帯で間引き運転する。岡山や広島の一部路線で前例はあったが、関西では初めてだ。
福知山支社によると、兵庫県内で対象になる5駅は1日平均の乗車人数が10〜35人で、「スピードアップと利便性の向上」を理由に挙げている。だが県が調べたところ、短縮できる時間は山陰線の豊岡―浜坂で最大4分、平均0.7分だった。播但線の姫路―和田山では、行き違いの待ち時間増加などで逆に平均2.2分増えるという。
地元自治体はJR側に撤回を求めて6回の協議を持ったが折り合わず、2月17日に井戸敏三知事と地元の市町長が全便の各駅停車を求める要望書を出した。県交通政策課の担当者は「県も市町も怒っている。ぜひ再改定を」と訴えるが、JR側は「1分でも短縮するのは大変」と譲らない。
各駅周辺には58〜327世帯の集落があり、観光への影響も懸念される。
豊岡市、香美町、新温泉町は一昨年10月、山陰海岸ジオパークとして世界認定されたばかり。各駅周辺では観光地めぐりなどのツアーも盛んだ。鎧駅はNHKドラマ「ふたりっ子」のロケ地になるなど、高台の駅から日本海を一望する美しい景色で人気を集め、隣の余部駅までの遊歩道も整備されたばかりだ。
香美町山陰海岸ジオパーク推進協議会長の清水浩仁・香住観光協会長は「高台から日本海を望む鎧駅は、降りてみたくなる美しいジオサイト。町民一丸となって盛り上げているジオパークの動きに水を差しかねない」と不満を募らせる。
久谷駅と居組駅が対象になった新温泉町では、鉄道遺産巡りなどを予定している。岡本英樹町長は「昨年は山陰線100周年を記念してイベントも開いたのに」と残念がる。「利用者数などの統計の問題ではなく使いたいときに使えるのが地域交通。その担い手として地域のことを理解していない」と批判する。
神河町の播但線長谷駅は映画「ノルウェイの森」や「平清盛」のロケ地・砥峰高原の近くにある。町は新年度予算にイベントやハイキング企画の予算を計上している。神河町観光協会の高橋修会長は「清盛ブームでイベントに力を注ごうとしていた矢先なのに、寂しい地域という暗いイメージになってしまう。どれほど影響が出るか」。
福知山支社は「今後も協議は続けて、よりよい形にしたい」との姿勢を示している。今回のダイヤ改定では、昨年12月の発表以降、広島支社が芸備線など14本で沿線高校の要望を受けて一部ダイヤを見直している。(伊藤周)
2000年まで上高地線を走っていた、松本電鉄の5000形が、Nゲージの模型で登場。21日から販売。
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