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(28時間12分前に更新) |
北朝鮮当局は4月12~16日に「地球観測衛星」をロケットで打ち上げる、と発表した。ロケットの1段目が韓国の西方沖、2段目がフィリピン東方沖に落下するとしている。2段目は南西諸島を通過する可能性が高く、県民の不安をかき立てている。
北朝鮮の発表にもかかわらず、国際社会は事実上の長距離弾道ミサイルの発射実験とみている。ロケットと長距離弾道ミサイルは技術的に同じで、何を搭載するかの違いだけだからである。
国連安保理は北朝鮮に対し2009年6月、弾道ミサイル技術を使ったどんな発射も禁じる決議をしており、これに違反する。北朝鮮は打ち上げを中止すべきだ。
北朝鮮は2月29日、長距離弾道ミサイルの発射などを凍結する代わりに、米国が24万トンの栄養補助食品を提供することで合意したばかりである。米国は打ち上げが実行されれば米朝合意の破棄につながると警告している。経済は低迷を極め、国民に食糧が行き渡らず疲弊している。それでも、打ち上げをしようとする北朝鮮の意図は何なのか。
発表にあるように打ち上げ期間中の4月15日に故金日成主席の生誕100年を迎える。北朝鮮はことしを「強盛大国の大門」を開く年と位置付けている。対外的に軍事・科学力を誇示し、国内的には故金正日総書記の後継となった金正恩氏の求心力を強固にするのが狙いとの見方がある。
4月は重要な政治日程がめじろ押しだ。中旬には朝鮮労働党代表者会が開かれ、正恩氏が党総書記に就任、最高指導者になるとみられる。
打ち上げは周辺諸国にとって安全保障上の脅威となる。北朝鮮が外交的合意を簡単に覆すようでは、国際的信用を回復することはできない。孤立を深めるばかりだ。
北朝鮮高官は「どこの国にも宇宙の平和利用の権利がある」と言っている。確かにその通りだが、北朝鮮のこれまでの行動からは額面通り受け取ることはできないだろう。
国際社会における信頼醸成に自ら背を向けながら、「宇宙の平和利用」を持ち出しても、説得力がない。
田中直紀防衛相は19日の参院予算委員会で自衛隊に破壊措置命令を出すことを検討すると表明した。
日本政府は北朝鮮の意図をどれだけ押さえた上で判断したのだろうか。不安をあおるような前のめりの姿勢には危うさを感じざるを得ない。冷静な対応が必要だ。
日本のミサイル防衛(MD)システムは海上自衛隊のイージス艦による迎撃、さらに航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)による迎撃の2段構えである。
南西諸島に迎撃態勢を敷くことは範囲が広すぎ、現実的ではない。弾丸を弾丸で撃ち落とすようなMDは技術的に多くの問題を抱える。南西諸島に新たな緊張を持ち込むことにならないか心配だ。
政府は手をこまねいて北朝鮮の打ち上げを待つのではなく、6カ国協議関係国である米韓中ロを巻き込んだ外交努力を尽くし、自制させることに全力を挙げてもらいたい。