埼玉・東松山市保育園児2人死傷事故 設置を行った個人契約の作業員2人から事情聴く
埼玉・東松山市で19日、作業現場の足場が倒れ保育園児2人が死傷した事故で、亡くなった北村 波琉人(はると)君(6)の父親をはじめ、家族が事故現場を訪れた。
亡くなった波琉人君の母親は「本当にきのう、波琉人の体が、そこにいたの...。かわいそうに...」と、泣き崩れた。
わが子の突然の死に、泣き崩れる母親。
父親も、体を震わせながら、無念の祈りをささげた。
波琉人君は19日、倒れてきた工事用の足場の下敷きになり、死亡した。
事故は19日午後0時半すぎ、埼玉・東松山市のマンションで起きた。
波琉人君が通っていた保育園の園長は「(別の保育園で)ドッジボールの対抗試合をするということで、『さあ、行くぞ』という感じで出かけたんです」と話した。
園児22人の列の前後に、女性保育士が1人ずつつき添い、マンションの前を歩いていたその時、高さおよそ10メートルの足場が突然、列の真ん中あたりに倒れてきたという。
救助にあたった男性は「ガシャーンという大きな音と、子どもの悲鳴がしたので、これは危ないと思って、すぐ飛び出た」と話した。
男性が現場に駆けつけると、波琉人君ともう1人の男の子が、足場の下敷きになっていた。
事故現場を目撃した人は「(波琉人君は)わたしが見た時点では、意識がないようでした」と話した。
倒れた足場のあった1階部分のベランダは、折れてめくれ上がっていて、どれほど大きな力が加わったのかがわかる。
1人の男の子は、鼻の骨を折るなどの重傷を負った。
一方、波琉人君は、骨盤が折れ、内臓から出血した状態で、19日夜、病院で息を引き取った。
亡くなった波琉人君の父親は「これが勉強机です」と話した。
4月から小学校に通うことを、とても楽しみにしていたという波琉人君。
FNNの取材に対し、波琉人君の父親は「これ(ランドセル)を背負っていくのを楽しみにしていました。人一倍、体の小さい子だったので...。来月から学校に行くのを楽しみにしていましたので。少しずつ勉強して、足し算や熟語みたいなのを勉強すると、やっていました」と話した。
なぜ、工事用の足場は、突然倒れたのか。
19日午後の映像を見ると、現場近くの木が音を立て、激しく揺れていた。
事故が起きた午後0時40分ごろ、東松山市の瞬間最大風速は14メートルだった。
事故現場とは反対側にも、高さ10メートルほどの同じ足場が組まれている。
よく見ると、足場とマンションが固定されているが、これは事故後に固定されたという。
足場は、19日午前中に組まれたが、マンションには固定しておらず、事故当時、現場に作業員は1人もいなかったという。
この映像を見た仮設足場工事の専門業者、「有限会社英興社」の船木英治社長は「同業者からすると、あり得ないですよね、ああいう施工の仕方は...」と話した。
通常は、足場を作る場合、風がない状態でも、建物と足場を簡易的に固定するという。
船木英治社長は「本来でしたら、この現時点で1カ所、こういうものなんですけど、こういう形で建物につないでいくんですね(足場と建物をボルトなどでつなぎ固定する)。(事故現場の映像には、これがなかった?)なかったですね。建物と足場を結びながら組み上げていくのが基本」と話した。
保育園児2人が死傷した今回の事故。
足場を設置した業者は20日午後、取材に対し、「本当に申し訳ございませんでした。(足場は)部分的には固定されていたんですが、それがちょっと...」と話した。
警察は20日、足場の転倒防止策を怠ったとして、業者などを家宅捜索し、設置を行った個人契約の作業員2人から、くわしく話を聴いている。
(03/20 18:43)