「常勤医」から「遠隔診療」へ。飛島(酒田市)で16日開いた説明会には約60人が集まった。島の人によれば、半数近くの世帯が出席しているという。開会時刻を過ぎても島民は来た。「命、かかってるもの」。ほかの会合では集まらないほど集まった人数に島民自身が驚いていた。
島民らは交代で発言した。「今になってなぜ説明か」「こんな仕方はない」「自分が島民だったら、どう思う?」。市の手法に批判は集中した。約2時間を締めくくる担当者の言葉が印象的だった。「私の一存では決められない。予算もあるし」。無情に乾き、いかなる島民の声をも無言でのみ込み、そのままという響きがあった。次回説明会の日程ぐらいは決められただろうに。
なにも決められない担当者とは、なにか。説明会は「事後承諾会」であり「ガス抜き会」であったのか。そこにも「島民不在」のにおいを感じた。
65歳以上約6割、50歳以上9割超。「底の知れない不安な現実が4月から飛島島民を襲うでしょう」。遠隔診療の続く新潟県粟島浦村の看護師の女性は言った。島民の願いは「未来の……」ではなく「今日を安心できる医療」だ。【佐藤伸】
毎日新聞 2012年3月19日 地方版