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【社会】

福島観光 春遠く 花見間近 消えぬ風評被害

福島第一原発事故による風評被害で、観光客がまばらになった飯盛山の参道=福島県会津若松市で

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 東京電力福島第一原発事故から一年が過ぎても、東北の観光地は風評被害による観光客の減少に悩まされている。福島県内では放射線量が東京より低い地域もあるのに「フクシマ」の名が国内外に負のイメージで広がっている。 (竹田佳彦)

 「お客さんが戻ってきてくれるか、花見シーズンの春が正念場」。白虎隊最期の地、福島県会津若松市の飯盛山。土産物店兼食堂の支配人井関一浩さん(39)は「他の観光地で花見旅行が定着してしまうのでないか」と気をもむ。

 原発事故以降、一時は観光客が十分の一に減り、廃業する土産物店も出た。登山道では今もシャッターを閉めた店が目立ち、数人の旅行者が足早に通り過ぎる。同市の観光協会によると、昨年の観光客は前年比15%減の二百三十五万人。特に県外からの小中学校の修学旅行は八百四十一校から百校に激減した。

 会津若松の放射線量は毎時〇・一一マイクロシーベルトで、東京都江戸川区の〇・一三マイクロシーベルトより低い(いずれも十六日)。市が各校に説明しても「放射能汚染を心配する保護者の理解が得られない」という答えが多い。

 県は昨年七月、県内で社会見学や遠足をする地元の小中学校に助成金を出す制度を新設するなど対策を取っているが、全体の減少分を補うには至っていない。

 喜多方ラーメンで知られる隣接の喜多方市も、旅行者の減少にあえぐ。ラーメン店「勝っつぁん」店主、渡部勝男さん(65)は「今や街中に観光客なんて歩いてないべ」。昼に訪れていた修学旅行生の姿は消え、のれんが寒々しく揺れる。

 風評被害は福島県内にとどまらない。岩手県花巻市の花巻空港は、台湾や韓国など海外からのチャーター便が昨年四月〜今年二月で前年同期の三十八機から七機に減った。岩手県空港課の職員は「外国人から見れば『フクシマに近い』というだけで敬遠されてしまう」と話す。

 こうした逆風をよそに、岩手県平泉町の中尊寺は、観光客が例年の年間十三万人から昨年は二十五万人に倍増。六月に世界文化遺産に登録されたことが「追い風」となった。

 会津地方の観光事業者十社でつくる「風評被害対策協議会」は昨年五月、東京電力に「福島第一原発から『福島』の名前を外してほしい」と文書で要望。今も返答はない。

 

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