前回のエントリで書いた通り、普段使用しているパソコン(会社支給、レンタル)のキーボードがすっかりいかれてしまったので、会社から代替機を借りて打っています。まだメールの設定などは済んでいないし、慣れない機種なので不自由極まりありませんが、なんとか原稿やブログは書けるようになりました。
で、ここで書きたい題材はいくつかあるのですが、このところ、紙面その他で民主党の問題点や不安な点を指摘(批判)することが多かったので、本日は「民主党政権」への一つの期待、一筋の光に関するエントリにしようかと思います。といっても、実は今晩、政治評論家の屋山太郎氏の話をうかがい、意見交換する機会があったので、せっかくなので屋山氏の口を借りることにした次第です。
政治記者の大先輩である屋山氏から、おそらく実現するであろう民主党政権のあり方、選挙制度、地方分権、諸外国の政治情勢、日教組の今後などについていろいろと話を聞き、視点を提供してもらった上で、「前回のがとても評判がよかったので」と例によってミニ・インタビューを申し込んだのです。屋山氏も快く、承知してくれました。
私 屋山さんは、今度の衆院選を単なる政権交代ではないと言っているが
屋山氏 うん、今度の選挙を政権選択選挙というのは、ものすごく引っかかる。今の日本の体制は、官僚内閣制だ。政官の癒着というけど、官僚の方が上にいて、政治家を使っている。だからこそ、安倍首相の時代から公務員制度を変えようとしてきたわけだ。官僚内閣制からふつうの民主主義国家になった後に初めて、政権をどうしたいのかどうするのかの政権交代ができると言える。
私 政権交代というより、政体交代だと
屋山氏 そう、今度の選挙はふつうの民主主義、憲法41条(国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である)にしたがった議会制民主主義に向かうエネルギーを秘めた選挙だ。民主党が勝てば、明治以来の官僚内閣制は崩れる。その後に初めて政権交代がこれからできてくる。
私 どのようにか。どんな利点があるのか
屋山氏 例えば、民主党が政治運営に失敗すれば自民党をとるとか、憲法をどう考えるかとか、国家の基本問題について国民に問う政治が始まる。そうじゃないと、自民党だけで憲法改正と言っても、内部に(両極端の)加藤紘一と安倍晋三がいるようではどうしようもない。今だって集団的自衛権の政府解釈見直し一つできない。この政府解釈をだれが決めたんだ?官僚が決めたのだ。こんなのは本来、立法府の至高の権利だ。そんな力は官僚から取り上げて、政治家、立法府が責任を持つようにしないといけない。われわれ国民は政治家は選べるが、官僚は選べない。
私 実際問題、簡単ではないだろうが、まずはそうすることが必要だと
屋山氏 一番最初に官僚制度を変え、官僚主導体制をまず変えると。民主党流に、国会議員を100人政府に連れていくとか、国家戦略局だとか、いろんな方法はあるだろうけど、今の牢固たる官僚支配体制を崩すことで、政治が主導権を持つ。それをやる人を国民が選ぶのだ。今まで(の自民党政権で)は誰を選んでも官僚支配は揺るがなかった。その証拠が集団的自衛権だ。行政府の長たる総理が(解釈見直しを)言ってもできない。内閣法制局長官が「私は辞表を出す」と脅かし、次のやつ、その次のやつまで「辞表を出す」と言って国家の重大問題を官僚に握られている。我々が選んだでも何でもないのにだ。鳩山代表が「地域主権」と言っているのもいいと思う。
私 過程では、混乱や失敗もありそうだが
屋山氏 現在の地方分権推進委は官僚になめられている。そうなったら、何をしてもだめなんだ。省庁のブロック局を「原則廃止」と言ったら、次の日には(官僚によって)「原則統廃合」となる。行革用語で「統廃合」とは何もしないという意味で、それは常識となっている。私も13年間も(行革関係に)いろいろと付き合わされていやになった。
地域主権だとか、中央集権をぶっ壊すということは、みんながうまくいくとは思わない。失敗することもあるだろう。しかし、国全体で失敗するよりは地域が失敗する方がましだろう。
私 屋山さんは、「このままでは日本は窒息してしまう」とも述べているが
屋山氏 だって日本はトンカチ(土建)7対生活3という割り振りだ。だけど、ヨーロッパは7が生活で3がトンカチだ。これは財務省の理屈だ。だけど、土建屋が消費するのも国民が消費するのも同じことだ。じゃあ、生活7でトンカチ3にしようということだ。国民も明確に意識しているかどうかはともかく、とにかく今のままではだめだと思っている。いろいろ問題はあっても前に進むには仕方がない。私は今、これまでみてきた選挙の中で一番わくわくしている。
…屋山氏とは、このほか「オン」でとお願いしなかったところでさまざまな話をしました。そこでは、必ずしも意見・見通しの一致をみなかったこと(主に民主党内の左派勢力が政権交代後、どの程度の力を持つかやその弊害について)もありましたが、別に見方はみんな一緒である必要ないし、どうせすぐ結果の出ることなのでそれはおいといて。で、ここでいったんミニ・インタビューは終わろうかと質問をやめたところ、屋山氏はさらに次のように語り出しました。
屋山氏 安倍さんが(首相時代に)公務員制度改革を始めたときは、「本気か?」と思うぐらい驚いた。安倍さんのことを「KY」なんて言う人がいるけれど、ものの本質を本当にわかっている人だなと思う。教育基本法だって国民投票法だって、そんな一銭にもならないことを本気でやってくる政治家がいるとは思わなかった。50年政治を見てきて、政治とはモノとカネを動かすものだと思っていた。それが、初めてスピリチュアルなものを持ち出してきた安倍さんを見て、全く新しいタイプの政治家だという気がした。そういう人が「KY」なんて言われるのは…。安倍さんは、麻生政権発足時にも渡辺喜美氏を残すよう麻生さんに2度話しているが、麻生さんには安倍さんの思いも考えもわからなかったんだな。
…ちなみに、故郷を求めて様からご依頼のあった「みんなの党」の山内康一氏についても、どう思うか聞いてみたのですが、残念ながら屋山氏は「よく知らない」とのことでした。現時点では私もこの人について何かを語るほどのことは知らないので、また何か情報が入れば、取り上げてみたいと思います。なにせ、都知事選に出た外山某氏と並んで実に珍しい私の出身高校の後輩にあたるようなので…。
by izanippon
「邪悪」と呼ばれたある政権と…