大分市の顔であるJR大分駅の新駅舎が17日開業し、鉄道が完全に高架化される。市街地を南北で遮っていた鉄路が高架になり、周辺の交通渋滞を解消、街の回遊性が高まることが期待されている。事業主体の県によると「100年に一度の事業」。JR九州は、2015年春に地上22階建ての新駅ビルを開業させる計画で、県都の玄関口は大きく装いを変える。
■新たな集客呼ぶ
「紅茶はいかがですか」「チーズケーキもありますよ」。16日、JR九州が新駅舎横に整備した商業施設「豊後にわさき市場」であった内覧会。飲食や土産、総菜など四つに分けられた区域で、試食を勧める店員の声が響いた。
高架化されたホームの下にある同市場に33店舗、駅南に隣接する立体駐車場施設にも8店舗が入る。暖色の柔らかな照明が光を注ぐ場所や、白を基調にした店舗が並ぶ明るい雰囲気の区域も。これまでと違って、改札口を通らずに、駅の北側と南側を自由に行き来できるだけでなく、商業施設としても集客力を発揮しそうだ。
大分市商店街連合会の園田孝吉副会長(70)は「街中に人が集まる好機。商店街は駅南の立体駐車場の駐車券サービスも始めた。駅で客足がストップしないよう、イベントなどを企画したい」と相乗効果を呼び込もうと思案している。
■渋滞解消に期待
高架化事業は、大分駅を挟むJR日豊線3・65キロと、駅東の豊肥線1・6キロ、久大線1・92キロが対象で、02年に着工した。事業費は総額約600億円。JR九州が7%、残る93%のうち半分を国が、残る半分を県と大分市が負担する。
このうち豊肥、久大線は08年に高架化され、踏切3カ所が廃止された。17日の日豊線高架化で、10カ所の踏切が市街地から消える。渋滞解消には大きな効果が期待される。
高架化に伴い国道210号にあった大道陸橋を撤去。国道は昨年1月から通行止めとなり、同6月には仮踏切の完成で、再び通行が可能になったが、朝夕のラッシュ時には、計5時間のうち1時間15分もの間、踏切は遮断機が降り、周辺は激しい渋滞が起きていた。
■変化続く玄関口
高架化事業に合わせる形で、大分市は1996年度から、「駅周辺の一体的な発展」を目的に駅南の区画整理事業を進め、約49ヘクタールで宅地や道路を整備する計画だ。駅を中心にした約1キロに新たな街並みを整備する「大分都心南北軸整備事業」も進めている。
これらの事業では、駅北口と南口の広場をはじめ、駅から南の上野丘公園に通じる幅100メートルの「シンボルロード」も2013-15年に完成する。さらに大分市は、駅南に複合文化交流施設「ホルトホール大分」を建設中で、13年7月に開館予定だ。
様変わりする県都の玄関口。南北軸整備事業のアドバイザーで、東京の建築事務所代表の西村浩さん(44)は「高架化された街にいかに人を呼び込むか、全国で試行錯誤が続いている。駅北側の商店街まで集客効果を波及させるためにも、行政と民間は戦略を立てることが必要」と指摘した。
=2012/03/17付 西日本新聞朝刊=