2012年1月22日 21時10分 更新:1月23日 0時37分
【コロンビア(米サウスカロライナ州)古本陽荘】米大統領選(11月6日投開票)の共和党指名候補争い第3戦の南部サウスカロライナ州予備選は21日、即日開票の結果、故レーガン元大統領の後継者を自負する保守派のニュート・ギングリッチ元下院議長(68)が大勝した。第2戦の東部ニューハンプシャー州予備選(10日)を制した穏健派のミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事(64)は2位。ロムニー氏が有利な戦いを進めてきた候補者選びは一転、両者による2強対決の様相を強め、第4戦となる大票田の南部フロリダ州予備選(31日)が指名争いの行方を占う序盤戦最大のヤマ場となる。
ロムニー氏の競り勝ちとみられていた初戦の中西部アイオワ州党員集会(3日)はリック・サントラム前上院議員(53)が最終的に「勝者」と認定されており、序盤3戦の勝者がすべて異なるのは初めてで、混戦ぶりが浮き彫りになった。米CNNテレビによると、これまでの3戦での推計獲得代議員数はロムニー氏31人、ギングリッチ氏26人。
共和党では80年以降、サウスカロライナでの覇者が全員、指名を獲得しており、アイオワとニューハンプシャーで共に4位だったギングリッチ氏は「追い風」を得た。組織力・資金力で群を抜き、「民主党のオバマ大統領に勝てる候補」として選挙戦で優位に立っていたロムニー氏には打撃となり、フロリダに向け戦略の立て直しを迫られる。
サウスカロライナはキリスト教右派・福音派が多い保守的な地盤。だが、失業率が10%近くに上る中、保守派の間でも、人工妊娠中絶への反対よりも、経済立て直しや雇用創出を重視すべきだとの認識が広がっていた。
ギングリッチ氏は規制緩和や減税による雇用創出案を力説し、選挙戦から撤退したペリー・テキサス州知事(61)らの支持を取り付けた。ロムニー氏は投資会社で企業再建に携わった経験を前面に打ち出したが、企業合理化による解雇などの「過去」を他候補に攻撃され、防戦に追われた。
3位のサントラム氏は、保守派の支持をギングリッチ氏に一本化するため選挙戦から撤退するよう求める圧力にさらされているが、選挙戦続行の意向を表明した。若者や無党派の支持を受けるロン・ポール下院議員(76)は最下位だった。
【コロンビア(米サウスカロライナ州)海保真人】ギングリッチ氏は「愛国者」を自称する保守派の代表格で、弁舌鋭い論客として知られる。1978年に下院議員に初当選し、95年から4年間、下院議長を務めた。
民主党のクリントン政権下で実施された94年の中間選挙で、財政均衡や減税や軍事力強化を盛り込んだ共和党の公約「米国との契約」の作成を主導し、下院で40年ぶりの過半数議席の奪還に貢献した。
今回の指名候補争いでは、その実績を強調した。激しい性格と言動でも知られ、19日の候補者討論会で司会者に前妻との離婚と当時の不倫話を持ち出された際、「悪意に満ちている」と逆に食ってかかった。昨年12月にはパレスチナ人という概念が「創作されたもの」だと発言して物議を醸し、パレスチナから批判を浴びた。
21日夜のサウスカロライナ予備選の勝利集会では「ワシントンを変えようという我々を選択したサウスカロライナの皆さんに感謝したい」と述べ、オバマ政権の「大きな政府」路線への批判を繰り広げた。