公益通報制度:5年間で「改善指示」ゼロ 実効性に問題

2012年1月21日 15時0分 更新:1月21日 16時26分

 労働者が不正行為を内部告発する公益通報制度で、食品の適正表示を規定したJAS法違反を疑う通報が制度開始の06年度から5年間で国や都道府県に計63件寄せられながら、違反事業者名が公表される「改善指示」には1件もつながっていないことが分かった。一連の食品偽装問題などをきっかけに制定された公益通報者保護法だが、罰則がないことなどから制度の実効性に問題があるとの指摘もある。消費者庁は「公益通報制度の利用が低迷しているのは確か」として来年度から改善に向けた実態調査を始める。

 JAS法は99年の改正で生鮮食品の原産地表示を義務づけ、ちょうど10年前に発覚した雪印食品(02年4月に解散)の食肉偽装事件などを受けて迅速な業者名の公表や罰則強化が図られた。事業者の営業範囲が単一の都道府県なら当該の都道府県、複数にまたがれば農林水産省と消費者庁が原則として対応。違反事業者名を公表する「改善指示」や、これより軽微な「指導」などの措置を取る。

 消費者庁によるとJAS法違反が疑われる公益通報は、07年度2件▽09年度30件▽10年度31件と推移。「改善指示」は1件もなく、41件は事業者名が公表されない「指導」、他の22件は「措置せず」を含め指導より軽い措置にとどまったとみられる。

 一方、農水省や消費者庁は独自に入手した情報などから、同じ期間にJAS法に基づく指示を160件発出していた。これは各地の農政局などに配置した表示・規格指導官(通称・食品Gメン)による巡回調査などの成果が大きいとみられる。

 国や都道府県が10年度に受理した公益通報4571件の94%は労働関連が占めており、消費者庁の専門家懇談会では「通報者の(労働条件など)私益確保に用いられている」との意見も出た。消費者庁は制度認知が進まない理由や運用の在り方などを調査する方針だ。

 公益通報支援センター(大阪市北区)事務局長の阪口徳雄弁護士は「通報者に報奨金を与え、違反者に懲罰的措置を盛り込むなど、公益通報者保護法を改正すべきだ」と指摘している。【井上大作】

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