明治天皇の暗殺を計画したとされ全国で社会主義者らが検挙された大逆事件で、医師の大石誠之助ら6人が連座された新宮市で17日、シンポジウム「『大逆事件』101年目からのステップ-『愚者の死』発表百年展に寄せて」(新宮市教委、佐藤春夫記念会など主催)が同市福祉センターで開かれ、約250人の市民が来場した。
最初に早野透・桜美林大教授が講演し、「原発建設は国策だったが、福島の原発事故以降、反原発の動きが大きくなっている。大逆事件は、国策による思想弾圧。政治、原発問題に対し、観客型民主主義から参加型民主主義に変わることが必要」などと訴えた。
この後、早野教授や「大逆事件の真実をあきらかにする会」事務局長の山泉進・明治大副学長、大岩川〓(ふたば)・同会世話人らが参加してシンポジウムがあった。
大岩川世話人は、大逆事件の再審請求に関し、訴訟記録など資料について解説。山泉事務局長は「大逆事件の裁判制度は明治時代の刑事訴訟法に基づいたもの。26人のえん罪を晴らすにはまず、明治時代の裁判の仕組みから研究しないといけない」などと話した。【山中尚登】
シンポジウム会場で高知県四万十市の田中全市長(59)と、新宮市の田岡実千年市長(51)が懇談し、大逆事件を通じた文化交流を深める事を確認した。
田中市長は同市にある「幸徳秋水を顕彰する会」のメンバーとともに新宮市を初めて訪れた。「新宮市とは地理、風土、文化が似ている。いろいろ交流ができれば」と呼びかけた。田岡市長は「お付き合いが出来ればうれしい」と応じた。
シンポに先立ち、田中市長は、新宮市営南谷墓地で事件の犠牲者、大石誠之助らの墓参をした。【神門稔】
毎日新聞 2012年3月18日 地方版