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【コラム 私は見た!】

鶴竜の言や佳し

2012年3月18日

 絶対に引かないという誓いを立てたことが、鶴竜に関する話題になっていた。非常に結構なことだと思う。鶴竜だけではなく、同調する力士が出てくればもっと素晴らしいのだが、果たして同調者が出るかどうか。遠慮なく言えば、鶴竜の立てた誓いが、本来の意味合い通りに受け取られず、エキセントリックな変わり者の言だと受け取られてしまうことに、私は憂いを持つ。

 大相撲の現状は、そんな憂慮を持たなければいけないほど悪くなっている、と言わざるを得ないところに落ち込んでいることも事実なのだ。

 これは極端な例だが、土俵に上がったら、もう相手をはたくことしか考えないような力士がいた。この人なりに好調不調の波はあるのだが、幕内の常連ともいえるような成績をなんとか挙げるので、十両にまでは落ちない。一方で、役力士の地位を占めたことも、一度や二度はあっただろうか。とにかく、攻めに出るといってもはたき込み一本やりみたいなものだった。そのはたきがさえにさえて、8勝のうち6勝だったか5勝だったか、勝ち越しの星をはたき一筋で挙げたことがあった。

 鶴竜は今度の決意表明に関して、一番一番自分の相撲を取ることだと思っていると言っているようだ。まさにその言や佳しと思うのだが、引きやはたきを自分の相撲から全く締め出してしまうことは、どんなものなのだろう。というのは、はたきやかわしが鶴竜の相撲のレパートリーとして、十分武器の役割を果たしていたからである。その意味からすれば、自分の攻め手を狭くすることに気をつける必要がある。

 しかし、このくらい際どい方法を取らない限り、大相撲の品位を保ちにくいことになっているのも事実なのだ。その意味で、もう一度ほめておくが、まさにその言や佳しである。 (作家)

 

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