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政治
【東日本大震災】医薬品輸送、女性医師が米軍を動かした
「アリガトウ」。連絡を取り合っていた米軍担当者からの言葉に有井は戸惑った。自分たちが頼んでいるのに、なぜ感謝されるのか。医薬品輸送は大震災発生後、横田基地からの支援としては初めての大型作戦だった。米軍も活躍の場を求めていたのだと感じた。
アクシデントが起きたのは輸送前日だった。横田基地からのメールには「USAID(米国際開発局)が最終的に承認しなければ、われわれは動けない」とあった。輸送要請の申請書を記入してほしいという。寝耳に水だった。急ぐしかない。夢中で書類を書き、1時間後にゴーサインが出た。
出発当日の朝、米軍と最終連絡を取っていた有井に母親から電話が入った。祖母が亡くなった知らせだった。輸送機には英語が堪能な有井が1人同乗することになっている。「しっかりしなければ」。5分ほど一人、トイレで泣いた。
集まった医薬品8・5トンは、横田基地までパトカーが先導した。横田基地でも特別扱いだった。ゲートはノーチェック。荷降ろし、梱包(こんぽう)、輸送機に積み込む作業にはさまざまな部署から何十人もが駆けつけた。
「私たちはオバマ大統領に日本の人道支援のためにと集められたチーム。人命を助ける作戦に参加できてよかったです」と口々に語った。米軍兵士の表情は誇りに満ちていた。
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