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岡田氏:自民への大連立打診 膠着状況打破の狙いも

岡田克也副総理=国会内で2012年3月16日、藤井太郎撮影
岡田克也副総理=国会内で2012年3月16日、藤井太郎撮影

 岡田克也副総理が自民党の谷垣禎一総裁に近い同党幹部に大連立を打診した背景には、ともに消費増税を掲げながら、衆院解散・総選挙の時期をめぐる対立で協力機運の盛り上がらない膠着(こうちゃく)状況を打破する狙いがあったとみられる。大連立には双方の党内に強い反対論があり、「実現は無理」との見方が大勢。ただ、野田佳彦首相と谷垣氏はそれぞれ党内基盤に不安を抱えており、水面下で連携を探る動きは今後も続きそうだ。【佐藤丈一、葛西大博、高橋恵子】

 ◇自民「谷垣降ろし」激化か

 岡田氏が自民党幹部に大連立を打診し、断られたのは3月上旬。これに先立つ2月25日、野田首相は谷垣氏と極秘に会談し、消費増税法案への協力を求めている。参院で野党が過半数を握る「ねじれ国会」で法案を成立させるには、自民党の協力が不可欠とみているからだ。しかし、谷垣氏は先に衆院を解散するよう求め、会談は物別れに終わった。

 17日、那覇市で記者会見した岡田氏は、自民党幹部との会談については言及を避けつつ「お互いに国民の立場に立って議論し、譲り合って合意に達する必要がある。そういう政治が実現しない限り既存政党は国民から見放されていくだけだ」との見解を示した。

 自民党側には解散の確約と引き換えに消費増税に協力する「話し合い解散」への期待もあるが、岡田氏は既存政党への批判が強い現状での解散・総選挙は民主、自民双方にとって得策でないと考え、大連立の呼びかけに踏み切ったようだ。岡田氏は別の自民党幹部との会談で、橋下徹大阪市長の人気について「1年ぐらいしたらメッキがはがれるのではないか」と語っており、この幹部は「岡田さんは選挙を遅らせる気持ちが強いというのがよく分かった」という。

 ただ、大連立は民主党の小沢一郎元代表排除が大前提となる。自民党幹部の一人は「今のままの民主党と自民党が組むことはあり得ない」と語る。そのため、党分裂回避を最優先に考える輿石東幹事長には大連立の呼びかけは党内結束の軽視と映る。与党幹部は「官邸と党執行部の信頼関係が崩れるかもしれない」と語った。

 石原慎太郎東京都知事を党首に想定した新党構想を進める国民新党も反発している。下地幹郎幹事長は毎日新聞の取材に「大政党同士の小細工は政局ありきのイメージを与え、消費税や社会保障の議論を潰してしまう」と批判した。

 「野田政権の延命に手を貸すことになる」と一蹴した自民党側も一枚岩ではない。今国会で解散・総選挙に追い込めなければ、9月の総裁選へ向け「谷垣降ろし」が激化するのは必至。そのため消費増税だけ食い逃げされかねない「解散前の大連立」は受け入れ難く、谷垣氏は「消費税を掲げて選挙を戦えば、協力の仕方はいろいろある」と次期衆院選後の大連立や政界再編をにおわせてきた。

 しかし、衆院選小選挙区では2大政党の候補が激突する。その選挙後の大連立には「絶対にしてはいけない」(伊吹文明元幹事長)といった反対論が自民党内にも根強い。

 公明党は大連立の可能性は低いと見ながらも「この手の話は今後も続く。自民党は10年参院選で消費税10%を公約し、民主党から狙われやすい」(幹部)と、接近機運を警戒する。

 ◇小沢グループは強く反発

 岡田克也副総理による大連立構想の打診は、消費税率引き上げでは一致する自民党との連携を模索することで、増税慎重派の小沢一郎元代表をけん制する意味がある。小沢グループの反発は必至で、民主党内の消費増税法案の了承手続きにも影響しそうだ。

 打診について、小沢グループの中堅衆院議員は「反対する人を排除して増税をやってしまえということだ」と反発。別の若手衆院議員は「『小沢切り』が目的だ」と語った。推進派の党幹部も「党内を説得している最中の表面化は、いかにもタイミングが悪い」と影響を懸念する。

 党執行部は党の税制調査会、社会保障と税の一体改革調査会などの合同会議を21日に開いて了承手続きを終え、法案の23日の閣議決定を目指す。そのため、16年度をめどに再増税に向けた法整備を図る「追加増税条項」を修正し、慎重派の理解を求める構えだ。だが、景気悪化時に増税を停止する「弾力条項」に、「名目成長率3%」などの数値を明記することを慎重派は求めている。推進派との隔たりは大きく、着地点は見いだせていない。

 国民新党の亀井静香代表も閣議決定に反対。同党の下地幹郎幹事長は、民主党に閣議決定の月末までの先送りなどを求めており、閣議決定が翌週の27日以降にずれ込む可能性もある。

毎日新聞 2012年3月17日 21時24分(最終更新 3月17日 23時00分)

 

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