嘉風(左)を小手投げで下す白鵬=大阪府立体育会館で
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◇春場所<6日目>
(16日・大阪府立体育会館)
横綱白鵬(27)=宮城野=と5大関は今場所初めてそろって白星。白鵬は嘉風を小手投げで下して6戦全勝とした。大関陣は綱とりの把瑠都が旭天鵬を下手投げで退け、日馬富士(27)=伊勢ケ浜=らとともに1敗を守った。大阪府出身の豪栄道(25)=境川=が地元力士の一番に出された懸賞「吉本賞」獲得一番乗りを果たした。平幕高安が敗れて全勝は白鵬、鶴竜の2人だけ。
場内がドッと沸く。嘉風をまともに引いた白鵬が俵を背負う。左を差して組み止めたが、そこから再び土俵際まで寄られてドッと沸く。だがそこまで。盛り上げるだけ盛り上げておいて、最後は豪快な小手投げできっちりと決めてみせた。
「押し込まれましたねえ」。ヒヤヒヤさせながらの6連勝を横綱は苦笑いで振り返った。それでも余裕たっぷり。「最後の最後まで投げにこだわった。つかまえて投げたいというのがどこかにあった。それで苦労したかな」。フィニッシュ技を決めていたのだから次元が違う。
常に横綱としての「運命」を感じながら土俵に上がっている。読書好きで歴史の文献などに興味がある横綱は場所前に母国の英雄、チンギスハンの伝記を読破した。
「モンゴル語の本。チンギスハンの子孫がどこで、どう途絶えたのかという内容だった」と説明してくれたが、その中で心に残った言葉があったという。
「望んだ者は望みがかなわない。運命がある人がなれる。そう書いてあった。王になりたくてもなれない。運命がある人がなれると」
まるで横綱に昇進したのは運命なのだと、自分自身のことを話しているかのようだった。
だからこそ、「責任感とか、見本とかにならないといけない」との自覚がある。大関と横綱との違いを「精神力だね」と言い切る自信も根底にある。
闘志みなぎる嘉風の激しい攻め。それを「受けながらでも残せるというのは自分が目指す相撲でもあるし、きょうは嘉風を褒めるべき」。奥行きのある言葉を残し、車に乗り込んだ。 (岸本隆)
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