名古屋市名東区の中学2年、服部昌己(まさき)君(当時14歳)に暴行して死亡させたとして傷害致死罪に問われた無職、酒井秀志被告(38)の裁判員裁判で、名古屋地裁は8日、懲役8年6月(求刑・懲役10年)を言い渡した。伊藤納裁判長は判決理由で「暴行はしつけとは言えず、短絡的、悪質で刑事責任は非常に重い」と指摘した。
判決は、酒井被告が▽内縁の妻の長男・昌己君に、目つきが悪いなどの理由でしつけと称して日常的に暴力を振るっていた▽11年6月ごろ、昌己君の通う中学校や児童相談所の職員からは暴行しないよう数回指導を受けた--などと認定した。
酒井被告は起訴内容を認めた上で、被告人質問では暴行について「しつけの一環だった。(暴行は)時と場合によっては必要だ」と主張したが、伊藤裁判長は「被害者の父でありたいという思いがあったとしても理不尽だ」と指摘。さらに「後悔の言葉はあるが、事件の背後にある問題について深い反省がない。謝ったのに命を失った被害者はふびんだ」と非難した。
判決によると、酒井被告は11年10月22日午前6時35分ごろ、昌己君がうそをついて居眠りしていたのを認めなかったことに立腹し、胸を数回蹴るなどして急性循環不全で死亡させた。
事件では、市の児童相談所が暴行を知りながら、「反省している」という酒井被告の話を信じ、昌己君を一時保護しなかった。
判決を受け、河村たかし名古屋市長は8日、記者団に「子どもが親から虐待されるのは最大の不幸。ボランティアなどのマンパワーが必要だが、市も全力でやる。根絶しなくてはいかん」と再発防止に向けた決意を述べた。【山口知、三木幸治】
毎日新聞 2012年3月8日 14時14分(最終更新 3月8日 14時48分)