第三部 導なき世界の中で…… (C.E.72年-C.E.75年)
88 業を背負う者達 -イワト会戦 4
イワミから出撃した後、分隊毎に編隊を組んでからクロガネ級の〝盾〟の前面に形成された前線を目指す。今回の戦闘では出撃前の打ち合わせで支援する戦域を予め決めており、パンサー小隊が天底極方面、うちの小隊が天頂極方面を担当することになっている。とはいえ、一個小隊……四機である以上、できる事は限られてしまうのだが、まぁ、それはそれとして、こっちも準備を始めよう。
でも、この前線を俯瞰できる位置ってのは先の戦争での世界樹攻防戦を思い出すなぁ、といった感慨を抱きつつ、小隊に指示を出す。
「ウルブス各機へ、ここらで迎撃態勢を整える。第一分隊は前面に出て近場を警戒、第二分隊は後方でより広域を観測、警戒してくれ」
「ウルブス2、了解。これより広域警戒を開始します」
「ウルブス3、俯角方向を担当するわ」
「ウルブス4、第一分隊の支援とウルブス2の護衛に入ります」
「了解した。優先順位は敵の突破阻止、味方機のフォロー、前線の穴埋めの順だ」
「「「了解」」」
各機からの応答に頷き返し、Aパック装備のマユラと共に前に出て仰角方向の警戒に当たる。そのついでに、前線の状況把握に努める。
……。
うん、まだ最前線で残存BIによる防衛ラインが良い感じに障壁として機能している為か、敵MS隊の決定的な突破を許していない。MS同士の戦闘も、個人技に長けたザフト機が二、三、上手い具合に突破してきた所をこちらのMS隊から倍の数で袋叩きにしている、というような限定的なものしか起きておらず、まだ全面的な衝突には至っていないようだ。
今みたいにBI防衛ラインが機能している内にある程度の数を削れたら……、っと、イワミから通信か?
「イワミより、ウルブス1へ」
「こちらウルブス1、どうした?」
「はい、敵艦隊に動きがありました」
今、考えられるとしたら……。
「一部の艦で強行突入って所か?」
「そのようです」
艦艇での前線突破を図るって事は、それだけ相手も本気というわけか。
「動いた艦は?」
「現状においては、アークエンジェルだけです」
「〝足つき〟か……」
確かに、アレの守りって凄く堅いから、強行突破みたいな任務に向いているだろうなぁ。
「随伴機は確認できているか?」
「大凡で十二機、一個中隊規模ですね」
「そうか……、進行方向は?」
「天底極方向に向かっています」
タワラさん……、パンサー小隊の所だな。
「こっちからの支援は必要か?」
「いえ、アークエンジェルの迎撃の為、こちらもサンサーラとカルマを出撃させる予定です」
「わかった、状況は把握した。もし、何か戦況の変化があった場合にはまた連絡してくれ」
「了解です」
さて、と……、このまま順調に推移していけば、艦隊に取り付かれる可能性は低いだろう。相手艦隊を叩き潰す為の矢は既に放たれているし、上手く矢が刺さって敵艦隊に打撃を与えれば、戦闘の趨勢も変化し始めるはずだしな。
そんな事を考えていると、俄かにレナの切迫した声が耳に入り込んできた。
「ウルブス2よりウルブス1へっ、敵MA隊を確認!」
MA隊……、ザフトでは運用していないし、おそらくはオーブ軍か。
「機種は? 数は? 今、どこにいる?」
「戦域の外れ、右翼側天頂極方向です。数は三十以上、照合の結果、ムラサメと一致します!」
右舷天頂極方向………………、いた。スラスター噴射を示す青白い光点が幾つも移動しているな。
「前線に脇目も触れず、すっ飛ばしている所を見ると……、こりゃ、側面から艦隊に突入する気だな」
うーむ、正直、今から追いかけようにもマリーネのスラスターでは追いつけない。
「レナ、イワミと情報はリンクしているのか?」
「はい、しています」
「……なら、向こうも気づいているとは思うが、念の為に報告だけはしておいてくれ」
「了解です」
「後、届くなら、ハラスメントを兼ねた狙撃も頼む。射程から外れるか、前線の状況が不味くなるまで継続してくれ」
「わかりました!」
「ウルブス4、そういう訳だから、ウルブス2が狙撃する間は前線の警戒も頼むぞ」
「りょ、了解です」
とりあえずはこれでいいだろうっと、レナの奴、早速か。
……あ、でも、見事に当たってるわぁ。
いやはや、レナの腕、本当に凄いわ等と感心しつつ、件の部隊の動向を注視するが……、やっぱり無視か。血気盛んな連中ならこっちに向かってきそうな所だが……、指揮官かエースと思しき派手な黄色い先頭機が見向きもしないことが影響しているのかな?
……。
しかし、どんな奴だか知らんが、目立つよなぁ、黄色って……。いや、人の事を言えないのはわかってるがって、なんか、過去と今現在の苦労が急に思い返されて、目から汗が出そうになる位に切なくなってきた。
一つ頭を振って意識を前線に戻すと、さっきよりもMS同士の交戦数が増えてきている。
原因を考えるとすれば、BI防衛網が突撃してくるアークエンジェルとその随伴機を最優先目標にしたからか、或いは、純粋に撃ち減らされて、防衛網が維持できなくなったか、だな。
はぁ、もう少しBIの数があれば、前線も楽になったろうに……、やっぱり戦いは数だよなぁ。
戦いに出る度に思うこと……ない物ねだりな事を考えていると、再びイワミから連絡が入ってきた。
「イワミよりウルブス1へ」
「ウルブス1だ、どうした?」
「はい、予定を変更し、迂回してくる敵の迎撃にサンサーラ及びカルマ、イズモのMS中隊と即応部隊の護衛MS小隊二個を当てることになりました」
艦隊への攻撃を阻止する為に全予備機動戦力を投入するってことだろうが、それでも三十越え対二十ちょいでこっちが不利だな。いや、それ以前にだ。
「〝足つき〟と随伴機への対応は?」
「パンサー小隊を中心に第一二護衛MS中隊で対応に当たります」
「……それは少し、きつくないか?」
「はい、ですので、ウルブス小隊からも戦力を抽出して欲しいとの事です」
さて、こうなった以上は無理と突っぱねるわけにもいかんし、どうする?
第二分隊にここを任せて、第一分隊で応援に向かう?
……いや、第二分隊だけだとFSパック装備のコードウェル少尉に掛かる負担が大きすぎるし、自然、突破阻止の主力となるレナが狙撃に集中できなくなって、抜かれる可能性も高くなるだろう。となれば、ここに三機残して応援は単機でってことになるし、応援に向かうのも、マユラ以上に実戦経験を積んでる分、俺が向かう方がいいはずだ。
うぅ、正直に言えば、マユラには付いてきて欲しいというか、分隊毎に動きたい所なんだが……、担当宙域を抜かれたら本末転倒だし、だからと言って微々たる数だとしても、増援に行かないわけにはいかないからなぁ。
結論を伝えようとイワミに連絡を入れようとしたら、レナから連絡が入る。
「先輩! 前線での交戦数が増加! 圧力が高まってます!」
自分の結論を補強されたと思ったら、更にワラルからも連絡が……。
「ッ! アークエンジェルよりジャスティスの出撃を確認っ! パンサー小隊が対応に当たりますっ!」
もう現有戦力じゃ無理っぽいから、後方の第二艦隊かイワト要塞の防衛MS隊を持って来いってな意見を封じ込め、ワラルとレナにそれぞれ自らの結論を伝える。
「ワラル、ウルブスは俺だけだが〝足つき〟退治の増援に向かう」
「お願いします。サンサーラ及びカルマの両機も敵突入部隊を排除し次第、そちらに向かう予定です」
「わかった。二人にできるだけ早く来てくれって伝えておいてくれ」
「了解です」
イワミとの通信が切れて、残るはレナだけだ。
「そういう訳だ、ウルブス2……レナ、ウルブスの指揮を任せるぞ」
「……わかりました。これよりウルブス2がウルブス小隊を指揮します。……でも、先輩」
「ん?」
「無茶は駄目ですよ?」
「……善処するよ」
正直、核動力機であるジャスティスに加えて、前に戦った手強過ぎた〝黒いの〟のベースとなった〝足つき〟を相手にするだけに、確約なんて出来ない。
「ウルブス3……マユラ、俺がいなくなる分、レナとコードウェル少尉をしっかりとフォローしてくれよ?」
「ええ、任せといて。……それよりも、私がいなくて、大丈夫なの?」
「本当は来て欲しい所なんだが、戦況が許してくれそうにない。ははっ、何、これでもMS運用初期から乗ってるベテランだからな、ヒビキ達が増援に来るまではもたせるさ」
「……ん、信じてるからね?」
いや、そんな、如何にも、俺が死ににいくような顔をしないで頂戴な、ってな文句はこの場にそぐわないので飲み込んでいると、コードウェル少尉からも通信が入ってくる。
「あの……、少佐」
「ああ、コードウェル少尉も訓練通りに二人の言う事を聞いて動けば死にはしない。自信を持ってやってくれ」
「……はい、わかりました。ご武運を」
さて、全員への簡単な連絡は済んだし、行くとするか。
しっかりと前線を警戒している三機に向かって軽く手を振らせた後、機体の向きを変えて、〝足つき〟が侵攻して来ているという宙域を目指した。
◇ ◇ ◇
時折、艦砲ビームや艦砲弾、対艦ミサイルが走る中央宙域を抜け、天底極宙域にやってきたんだが……、〝足つき〟が前線に接近してきた為か、前線が乱戦状態になってるみたいだ。
単機で乱戦って……、俺、泣いていいかな?
心中で泣き言を述べながら、取りあえずは至近に流れてきたザク・ウォーリアをビームアサルトのライフルモードで狙い撃つ。
……。
非常に珍しいことにすんなりと命中して撃墜できた。この驚愕の事実に、もしかしたらモニター内で光ってる星々の中に俺の死兆星が浮かんでいるのかもしれない等と不安に感じると共に、全身に悪寒が駆け巡る。
うぅ、普通ならすんなりと撃破できた事を喜ぶべき所なんだろうが……、俺の場合、普段、とことん当たらないだけに、逆に気持ち悪い。
この何とも言えない気持ち悪さを抱えつつ、時に味方が不利な所にはビームを撃ち込んで横槍を入れたり、時に飛来した破砕榴弾の爆発に巻き込まれかけたり、時に進路を塞ぐように流れてきたザク・ウォーリアの坊主頭を蹴飛ばしてメインカメラを損傷させたり、時にどこからともかく飛来するビームに背筋を凍らせたりしながら、データリンクによって示されている〝足つき〟を目指す。
……っし、見えた。
アラスカ戦以降、迷走一直線な〝足つき〟……白い木馬のような姿形をしたアークエンジェルだ。パッと見た限りだが、どうやらBIの〝バンザイアタック〟を二、三は喰らったようで、右舷側の一部に損傷が見られる。その為か、未だ近くに侍っている五機程の随伴護衛機……M1アストレイの姿も右舷側に集中しているようだ。
っと、早くも見つかったか?
M1が三機、こちらに向かってビームライフルを撃ちながら突撃してくる。
……。
けど、正直に言わせてもらえば、連携も何もなく、馬鹿正直に三機揃って真正面から一直線に突撃を仕掛けてくる姿は……、アマハラ国防軍なら箱に詰められて訓練所に逆送されるレベルだぞ。
もしかして、新兵か?
まぁ、こっちとしては訓練レベルが低い方が都合が良いから助かるけど、等と考えながら、電磁式シールドを前面に展開させ、同時にロールでの回避行動を取りながら、全力噴射で立ち向かう。
まず、はっ、こいつからっ!
「ぐぅっ!」
三機の内、真正面ど真ん中の一機、こちらの狂気染みた動きを想定していなかったのか、慌てたように回避行動を取ろうとした中心機に左手のシールド、その尖った先端を打突面に体当たりを仕掛けて、腹部を打ち抜く。当然の如く、身体に圧し掛かる負担は酷く、機体情報にレッドやイエローといった警告や注意を示すランプも灯るが、心構えさえ出来ていれば身体への負担は耐えられるし、マリーネの剛性なら多少の衝突くらいでは屁でもない、……はず。
取りあえずは見事なまでに上半身と下半身の真っ二つに引き千切れたM1を振り払い、味方がやられて動揺しているのか、動きが止まった残りの二機に、一機はビームライフルで、もう一機も頭部機関砲で攻撃する。
……うん、両方とも撃破したけど、やっぱりM1ってのは脆いなぁ。
ビームライフルで撃破されるならともかく、頭部機関砲の直撃を少々喰らっただけでフレームを破壊されて行動不能に陥るのは如何なもんだ? つか、戦時量産タイプで華奢なストライクダガーでもここまで脆くなかったし、ジンでももっと耐えられるはずだぞ?
なんて風に評論家めいた事を考えながら、三機の爆発に巻き込まれない為にも、その場から離れつつ回避行動を取る。
……〝足つき〟からの艦砲ビームが機体のすぐ脇を通り過ぎた。
むぅ、一度でもいいから、あっという間に敵を倒した俺カッコいい、ってな具合に、ででんってその場に居座って、自分に酔ってみたいもんだ。
独り心中で軽口を叩きつつ、残る二機のM1と〝足つき〟の動向を探ると……、〝足つき〟の艦砲はこっち向いたままだし、残っていた二機もこっちに来たな。
さて、どうするかと思案しながら、〝足つき〟の進路上へと特別改良版のダミーバルーンを放出し、当たるわけがないだろうが、こっちに向かってきている二機にも破砕榴弾を一発ずつ射出しておく。
……そういえば、なんで〝足つき〟はミサイルを撃たないんだろうか?
うーむ、もしかしたら故障でもしたか、これまでの攻撃で損傷したかで使えなくなったのかと、微かに抱いた俺の淡い期待を吹き飛ばすように、艦体後部からミサイルが撃ち出され始めた。
やはり、何事もこっちの思い通りにはいかないもんだ。
思わずそうボヤキそうになるのを我慢して、さっきよりは手ごわそうなM1の動きに注意しつつ、早くもこちらに向かって接近し始めているミサイルの目を誤魔化すべくフレアーを放出しながら、バルーンを目掛けてビームを速射する。
……あれ?
ビームが通らないって、〝足つき〟もアンチビーム粒子を装備していたんだったな。
今更ながら度忘れしていた〝足つき〟に関する情報を思い出したが、もはや手遅れ。〝足つき〟が前もって放出していたらしいアンチビーム粒子の影響で一部のビームが掻き消えてしまって、半数くらいしかバルーンを破壊できなかった。
もっとも、ビームが届かなかった残りのバルーンも一部に関しては爆発に巻き込まれたから、〝足つき〟にそれなりのダメージを……、むぐぐ、あの健在振りを見るに、与えることができたのか?
やれやれ、前の戦争でザフトを翻弄し続けただけあって、さすがの頑丈さだ。
まぁ、〝足つき〟を覆うような爆発の連鎖に驚いたM1の一機に破砕榴弾が直撃したんだから、やるだけの価値はあったと思うことしよう。
そんな風に先の行動を評価をするが、フレアーに気を取られなかったミサイルに追われているので今一締まらない。付け加えれば、〝足つき〟からも再度ミサイルが発射され、艦砲も常にこちらを狙うように動いている上、最後の一機となったM1も怒り心頭といった感で、ビームライフルを連射しながら追跡してくる始末だ。唯一の救いは〝足つき〟のCIWS群が半分近く沈黙しているくらいか?
先の攻撃で沈黙したと思しきCIWS群が狸寝入りではない事を祈りつつ、防御火線が薄い側から〝足つき〟への接近を試みるが……、後方からのビームが……、残りのM1が邪魔をしてくれる。
どう接近を図ればいいかと悩みながら、時々呻く事で回避行動の度に負担を掛けている身体からの不満を逸らしていると、通信系からワラルの声が聞こえてくる。
「こちらイワミっ、アークエンジェルが艦隊の攻撃圏内に入りました! 前面に出た一四戦隊が対艦戦闘に入りますっ! ウルブス1は至急に退避して下さい!」
「了解!」
巻き込まれては適わないと、後追い射撃の中を冷や汗を流しながら大急ぎで離れていくと、四本の艦砲ビームが交差するように〝足つき〟に飛来して……、って、嘘だろっ!?
俺を追いかけていたM1には思いっきり直撃しているのに、〝足つき〟はあの巨体にも関わらず、ロールして、間一髪で直撃コースを避けやがった!
あれか、〝足つき〟には曲芸好きのνタイプでも乗ってるってのかっ!?
あまりにも信じられない光景を目の当たりにして、唖然としていると、〝足つき〟は飛来した対艦ミサイルを迎撃しつつ、艦首の特大艦砲を露出させると、強烈な閃光をぶっ放した。
「ッ! ハツユキ被弾っ、撃沈されましたっ!」
ちょ、マジで強いっ!
「ぇっぁっ! じゃ、ジャスティスと戦闘中だったパンサー1と4をロストっ! 同じくパンサー2及び3の被弾を確認っ! パンサー小隊が、か、壊滅しましたっ!」
なっ、に?
「ウルブス1っ! 警戒してくださいっ! ジャスティスがそちらに向かっていますっ!」
〝足つき〟の対策もまだだってのに、ど、どうしろってんだっってぇっ、早速来やがったっ!
資料や映像に加えて、この目で間近に見たこともある赤い機体が回避行動を織り交ぜながら、こちらに向かってっ!
「っぅっ!」
狙いが正確だなっ、おいっ!
切れ目なく飛んでくるビームに当たらない事を祈りながら、必死に回避行動を取るがっ!
その分だけ……、距離を詰められたっ!
ッァッ! 右かっ!
仰角右方向から急速接近してきたジャスティスの攻撃……ビームサーベルでの一撃を逆噴射で後方に下がることで回避しつつ、頭部機関砲で牽制を入れるがっ!
くそったれっ!
PS装甲の所為で、機関砲が目晦ましにもならんわっぅっ!
機関砲での牽制を気にもせず、即座に姿勢を制御して、こっちの動きに付いてきたジャスティスの切り替えしの一撃を左肩の電磁シールドで受け……サーベルの出力が高いだとっ!?
やばいっ、押し切られるっ!
咄嗟にメインスラスターを大噴射しつつ、半ば切られかけ機能を失った左肩のシールドもパージし、ジャスティスの右上方に逃げる、って、しつこいっ!
機体が反射反応した為にいつもの足癖が出て、追随しようとしたジャスティスの頭部を左脚で思いっきり蹴り飛ばしたがっ、こっちの爪先がちょっと破損したのに、頭部が少々仰け反ったくらいで、頭部のアンテナブレードすら折れねぇって、どういうこったっ!
内心で悪態を付きながら、蹴り飛ばした反動を利用してジャスティスと距離を取りつつ、ビームアサルトを速射するが、シールドに当たったビームは乱反射する上に、向こうからも機関砲ががががっ!
……ぬうぐっ!
う、うぅ、左腕のシールドと右肩の電磁シールドで何とか受けきったけど……、電磁シールドがボロボロにされて使えなくなった。
それでも何とか、機関砲弾の雨から離脱できたからいいとするって、ジャスティスが更にビームライフルで攻撃をををををっ!
ならば、こっちもと、残っていた右肩の電磁シールドを脱離させつつ、目晦ましの為のダミーバルーンを放出、更にはジャスティスの後方にいる〝足つき〟との位置関係を考えながら、残っていた破砕榴弾を全弾射出する。
もっとも、ジャスティスはダミーバルーンの群れには見向きもせず、しっかりとこちらを狙ってビームを撃ち放ってくる。
こちらも更に応射しながら、せめて破砕榴弾が当たってくれたらなぁという切なる願いを抱きつつ、得も知れぬ気迫を機体そのものから感じさせるジャスティスを見据える。
本当に……、純粋に強い!
正直、勝てる気がって、いかんいかん、弱気は駄目だ。
そう断じて、弱音を吐きそうになる気持ちを大きな吐息と共に吐き出す。つか、今、気づいたんだが、息を付く暇もなかったんだな。こんな状態、慣用句の世界だけだと思ってたよって、なんだ?
野郎、肩から、何を?
……よくわからんが、そろそろっ!
「しっ!」
破砕榴弾が二発〝足つき〟の右舷艦首に命中したっ!
うち一発は艦首艦砲に上手く命中したみたいだから、これで対艦攻撃能力を少しは削ることができたはずだって、ジャスティスが動いたっ!
例の如く、大推力に物を言わせて、急速に接近をしてきたがっ!?
警報っ、右だとっ!?
咄嗟に機体の上半身を仰け反らせて、突如飛来した危険物を回避って……、なにこれ、ブーメランってぇ!
「しまっ!」
がっぁぅっ!
た、たい、当たりで、はじ、かれた、上、りょ、う足を、刈り取られ、たっ!
で、も、せ、めて……、一、撃っ!
体あたりで、跳ね飛、ばされた、勢いも、利用してっ、仰け反らせた機体、を一回転させて、正面から、たい、あたっ、りっ!
「なっ!」
「ふぐぅぅうううっ!」
接しょく回線か、あいての、動揺するこえが聞こえたがぁっ、知るかってんだっ!
どう時に、ぜん推力を全開にっ!
あとはっ、左腕のシールドをっ、ジャスティスの右かたの間接ぶに、叩きつけるっ!
「ぐぅぅぅぅうっ!」
……ぬぐうぇふっ、き、機体情ほうが真っ赤に染まってる。
って、ジャスティスが左手のシールドをって!
「ぬがぅっつっ!」
シールドを、腹部に、叩き、つけられて、激しく、身体を、揺さぶらぇっぐっ!
このまま、もう一撃、喰らうと、機体が、ぶんかい、しそうだ。
な、なんとか、にげ……、あ、や、ばい……、すい進剤が、じどう、カッと、されてるっ!
こ、ここはっ、ば、万事、きゅう鼠、猫をかむで、らいふるでっ!
……あっ。
一瞬……、おそかったか。
ゆっくりと時が流れる中……、こっちの動きを、み透かすように距りを取ったジャスティスが……、びーむライフルを構え……、その銃口を……、こっちにむけて……。
「ラインブルグさんっ!」
……ジャスティスの、直近を、複数のビームが、走った。
ジャスティスが、回避こう動を取りながら、いそいで離れて、いくのがわかる。
……それを、追うように、連続して飛来する、ビームが、ジャスティスからの、こちらへの、攻撃を阻止して、くれている、ようだ。
「ラインブルグさんっ! 応答をっ!」
この声は……、ヒビキか。
ど、どうやら、ヒビキが、来るまで、なんとか、持たせる、ことが、できたか。
「大丈夫ですかっ! ラインブルグさんっ! すぐに助け「かまうなっ!」ッ!」
うぐぅぁっぅ、い……、いたい。
「かまうな、おれは、だいじょうぶだ」
「でもっ!」
「いいから、いけっ、あいつを、とめろっ!」
「っ!」
「おまえ、は……、なすべき、ことを、しろ」
「……わ、わかりました」
まだ、何か、言いたそう、だったが……、ヒビキは、行って、くれた、ようだな。
……。
うん、ヒビキと、ジャスティスが、戦とうを、開始、した、みたいだ。
と、いうか……、もう、自分の、状態的に、うごけなぁ゛っ……、い、いつつ……、あ、後は、ヒビキに、任せるしかぁッぐ!
あー、やっぱり、立て続けの衝撃で、胸が、やられたみたいだ、凄く、熱くて、いたくて、これ以上は声がだせない……。
……。
よく見たら、めっとのバイザーに血が付着してるし、口のなかに、血の味がしたり、のどにからんでいるし、下手したら、肺までや、やられている、可能せいも、ある。贅沢だろうが、このじょう態では、か重が大きい、脱出そう置を使いたくないし、イジェクションレバーは、ほん当、に、最後の、手段に、しよう。
……っぅうぐ。
さ、幸いなことに、この忌々しい、胸のいたみで、意識をある、程度は、保っていら、れているが……、機体と意しき、どっちが、どれだけ、持つかものか。
……取りあえずは、ぬ、ぬぅっ!
も、もう、腕を、動かすのも、おっ劫だが、少しずつ、視かいが霞み、始めてるし、身体に、染み付かせた、動きで、なんとか、切り取られた、下半しん、や、破そん、か所の、エネル、ギー供給を、カットして……と……、…………ッぅ、……、……ふぅ。
ありがとう、パー、シィ、安全で、頑強な、せっ計を、してくれた、お陰で、機たい、の方は、大丈ぶ、そうだ。
あとは、俺の、身体か……。
っと、なんだ、いまの光は?
……なる、ほど、〝足つ、き〟が、また、艦ぽうを……、撃っ、たのか。
今度、は、…………通し、ん?
「……セⅡ……撃沈を……しま……! 敵……再攻撃ま……凡百二……秒!」
この声、は……、ワ、ラルか?
「ッ! 敵MS…………線を突……! 艦……の突入……始!」
……そうか、かん隊が、不味、いか。
俺が、出、来る事は……、こ、の距り、なら、むき、出しに、なって、る……、〝足、つき〟の、かん砲、を……、ねら、え、るか。
……あー、ま、ずい、きゅう、に、意、しきが、遠の、いて……、きた。
でも……、あれ、を……や、らんと、どのみ、ち、俺が、生きの、これ……る、可、のう性も、ひく、くな、るし…………、や、るしか、ない。
……でも、も、う、目を、開い、て……、ら、れなく、て、つう常……、の、しゅ段、が、使え、ないし……、やると……、した、ら……、かんに、たよっ、た……、しゅ、動か。
これ……、なん、て、むり……ゲー、とい、うか……、む、ちゃ、ぶり……、に、も程が……、ある。
……どう、した、もの…………か……。
……。
…………。
……。
――アイン、こんな所でぼんやりしている暇はあるのかね?
あ、あー、そうだったな、い識をしっかりと持たないと……。
――どうやら随分と拙い状態のようだな、……ならば、少し手を貸そう。
いや、しり拭いをさせるようで、すまんね。
――何、これも友の誼だ。……ロックオフ、…………仰角に十三、…………左に八。
…………こんなもんか?
――少し右に戻したまえ……ああ、それでいい。…………よし、撃てっ!
懐かしいこえに導かれるままに、ひき金を、ひく。
――ふむ、これでよかろう。後は奴が何とかするはずだ。
はぁ、たすかったよ、……ラウ。
――しかし、君も大概、変わっている。妙な声が聞こえてきたら、少しは動揺しそうなものだが?
よの中ってのはふし議なことで満ちているんだ、これくらいはどうってことないよ。
――ふっ、ならば、それでこそ、我が友と言い直すべきかな?
そういうことにしておいてくれ。……しかし、おまえさんが逝ってからもさ、ごらんの通りで、せ界はあい変わらずだよ。
――仕方があるまい。人が人である以上、我欲からは逃れられぬし、理では正しくともそれを上回る情も必ず付いて回るのだからな。
……たしかに。
――むっ? ……どうやら、いま少し行かねばならぬ場所が出てきたようだ。
なんだ、おれのお迎えじゃなかったのか?
――ふふっ、まだ、その時ではないようだ。
そうか。……なら、いずれ、また、ラウ。
――ああ、その時まで壮健であれ、アイン。
らうのこえがとおのき……、ききな……まゆ……ら……のこえが……きこ………………。
機動戦士ガンダムSEED DESTINY、放送終了でございまする。
これまでの応援ありがとうございました。
次回作:劇場版 機動戦士ガンダムSEEDにご期待ください。
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