第三部 導なき世界の中で…… (C.E.72年-C.E.75年)
33 変化する日常 -予備役召集 1
2月13日に行われたコンペティションの結果は一週間後に通達されることになっていたのだが、その通達が来るまでの間に、世界でとんでもないことが起きた。
コンペティションの翌日、即ち2月14日に、旧地球連合に加盟していた各国で同時多発的にテロが発生し、総計で数百人単位での死傷者が発生したのだ。
しかも、ユニウス・セブンへの核攻撃に対する報復であるだなんて声明が報道や政府機関に送り込まれるオマケ付きだから、もう、テロの実行犯や背後の組織には、ふざけるなっ、としか言えない。
だいたい、この手の問題を起こす輩はユニウス・セブンへの核攻撃が非道だと……、まぁ、確かに民間人への攻撃は非道だとは思うけど、とにかく、ユニウス・セブンへの核攻撃を錦の御旗に掲げているが、それの報復として行ったニュートロンジャマーの無差別散布の方が、それ以上に遥かに、民間人への犠牲を強いた非人道的な行為であり、局外にいた中立国までも巻き込んだのだから非倫理的だろうに、自分達の都合の悪い部分には目を瞑るから困る。
そもそも、核攻撃の報復はニュートロンジャマーの無差別散布で晴らされてた上に、それ以上の怨みを買っているというのに、まだ、復讐を叫ぶか、という呆れた感情しか浮かんでこないし、いい加減、止めてくれと言いたい。
いや、それは家族や親しい人の命を唐突に奪われた悲しみはそう簡単に癒えることなんて……、癒える事はないだろうけど、その復讐の為にテロを起こすってのも極端過ぎるとしか言いようがない。
これも所詮は、身内に犠牲者が出ていないから言える言葉なんだろうけど……、いつかのゴートン艦長の言葉を借りれば、たとえ、張り倒されようが、それでも誰かが声を出して言わなきゃならないだろうってことだし、どこかで歯止めを……、理性で歯止めを掛ける必要があるはずだ。
でも、人って、その理性を簡単に振り切る事が多いし……、俺自身の少なく狭い経験上でしかないけど、ナチュラルよりもコーディネイター、特にプラント生まれに、その傾向が強いような気がする。
これは俺の想像でしかないのだが、コーディネイターという存在が歪であるというよりも、プラントの教育が能力主義を優先し過ぎて、精神面での成長を疎かにしている所為なのかもしれない。
はぁ、カナーバ女史が動いたお陰で世界に融和的な空気が流れ始めて、ようやく、世界状況が安定へと進み始めたと思っていたのに……、本当に、嫌になる。
とにかく、この連続多発テロで関与を疑われたプラントは、各国に特使を派遣したり、保安局に各国への情報提供を命じたり、在外プラント市民に相手を刺激するような事を言わないように釘を刺したりする等、テロへの関与を否定し、事態の収拾を図る為に奔走しているようだ。
また、ここアメノミハシラでも宇宙港や周辺宙域で厳戒態勢が布かれ、出入港審査も厳しくなっているお陰で、宇宙港は人で溢れているし、貨物ターミナル港も検査を待つ貨物コンテナが増えてきている。ラインブルグ・グループでも原材料や資材の遅配が多くなって操業が滞ったりして困っているから、本当に迷惑千万な話だ。
◇ ◇ ◇
2月20日。
連続多発テロから波及した混乱による遅滞もなく、コンペティションの結果が宇宙軍より通達された。
その結果は……。
「「マリーネの、宇宙軍での採用を祝して、カンパーイッ!」……一言も話させないのもどうかと思うの」
……と、喜ぶべきことに、マリーネは国防宇宙軍とSKOに主力機として採用される事になった。
その通知を通信ではなく、わざわざ技研内の第五開発部まで通達文書を持ってきてくれた、アサギ・コードウェル一尉……コードウェル姉の話によれば、当初における宇宙軍の予定では、モルゲンレーテが開発したオオツキガタとM1アストレイによる役割分担と連携が考えられていたらしい。
だが、アメノミハシラにおいてはモルゲンレーテと肩を並べるラインブルグ・グループが本格的にMSの開発に乗り出し、M1アストレイよりも継戦能力が高く、防御力に優れ、操縦性や生存性も良好なマリーネが登場した事で話が変わったそうだ。
軍内でも、コンペティションが行われるまで、機体性能的に上回り、何気に整備性も優れているマリーネを採用しようとする派と現場での互換性や新規調達に掛かるコスト的に、また、実績があるモルゲンレーテが作るアストレイのままで良いとする派に分れて、喧々諤々の討論が繰り広げられていたらしい。
その流れを一気に変えたのが、コンペティションで如何なく性能を発揮して魅せたマリーネの雄姿と、テストパイロットを務めていたとはいえ、士官学校を卒業して一年程度のナチュラルがそれを為したという事実だったそうで、あの一日で、殆どのアストレイ派が転んだとのこと。
曰く、整備で問題があるならオオツキガタと住み分けたらいいんだ、M1も今運用しているノーマル型は輸出している南アメリカへ安く売ればいいし、宇宙用のA型はオオツキガタとの共用パーツもあるから部品取りに使うか、ジャンク屋辺りに、武装解除して建機として売れば良いじゃないか、うん、とのことらしい。
こんな対案が直ぐに出るなんて、何となく、心情的に反た……、いや、買ってくれるなら、もう別にいいや。
とにかく、マリーネの生産母体となるラインブルグ宇宙工業は、国防宇宙軍及びSKOから防衛隊や艦隊護衛用に百八機の大型受注を得ることになり、関連企業はお祭り騒ぎで対応を進めているとの事だ。
ちなみに、MA可変機としてはモルゲンレーテ支社のオオツキガタが採用されたそうで、旗艦や今後運用される予定のMS母艦で使用されるとのことらしい。
まぁ、何にしろ、この大成功で終わったと言える海兵計画が終わった事で、これで俺が立てた一連の軍需参入計画が終了する事になるが……、しっかりとした足掛りが……、結果が残せて良かったとしか言いようがない。
そんな訳で本社近くにある研修施設にて、これまで頑張ってくれたプロジェクトメンバーを集めて慰労会を兼ねた祝宴を開いたのだが、どこから聞きつけてきたのか、愉快なおっさん連中もといグループの重役連中が差し入れを大量に持って押しかけてきて、いつもの如く、混沌の宴となってしまった。
プロジェクトメンバーからみらば、一つの大きな仕事が終わって、ようやく息を抜けるという所に、自分が所属している会社の親玉が出張ってきたんだから、気を休めることなんてできないだろうが、直接的に顔と名前を憶えてもらえるチャンスだと思ってもらう事で諦めてもらおうかね。
まぁ、とにかく、今回の計画で責任者を務めた俺は、プロジェクトメンバーの一人一人に世話になった礼を言う為にお酒を注いで回っているので、いつものように、おっさん連と馬鹿騒ぎはしていない。
「おうおうおう、兄ちゃんよぅ、俺らの酒が飲めんのかぁ?」
「いや、その……」
「あ、あのっ!」
「んーーーー? なんだい、嬢ちゃん」
「ちょっと待って下さい! お酒なら私が「おい、彼女にそんなこと言われてどうすんだっ!」」
「や、やだ、彼女だなんて、そんな……」
「んなっ! ゆ、ユカリさんは、その彼女じゃ……」
「似合いじゃねぇか。ほれ、……目と目があう、……手と手があう、って、やってられっかぁっ!」
「がぎぎぎ、若造の癖に見せ付けてくれちゃってぇ!」
「最後にあんな事をしたのは…………、う、うううう」
「んーーーー、皆、どうする?」
「存分に飲んでもらえば、俺達の心も晴れるんじゃないか?」
「「「そうだそうだっ、そうだぁっ!」」」
「しゅ、しゅにーーーーーーーーんっ!」
これも全ては希少な身代わりのお陰だ、感謝しよう。
……なんて事を考えているが、実はもう、メンバー全員の所に回り終わっており、今は会場の片隅で腹を膨らませるべく、レナ達が取り皿に奪取してくれていたソーセージやポテトガレット、ピザ、サモサ、酢豚、から揚げ等々を口に運んでいる所だ。
「先輩、今日は、絶対に、飲みすぎたら駄目ですからね?」
「レナの言う通りよ。私も〝初めての経験〟がお酒臭いなんてのは嫌だから、ちゃんと控えておいてね」
「うんうん、今日のメインはこの後なんだからね、兄さん」
「わ、わかってるって」
慰労会が始まる前から、レナ達から何度も念を押されているのだが、だからこそ、尊い犠牲をおっさん連に差し出してきたのだ。
「まぁ、お前達も、お疲れさんだったな」
「ふふ、先輩の為……、と言うよりも、今後の私達の為ですから」
「うん、レナから、私達との関係を真面目に考えているの聞いて、本当に嬉しかったわぁ」
「通りであれだけお風呂場で誘惑していたのに、兄さんが手を出さなかった訳だって、納得したもん」
「……ミーアの攻めはかなり的確だったので、今後は自重するように」
まったく、どうして、ここまでエロい子に育ってしまったのか……。
「んんっ、とにかく、今日は後片付けしなくていいから、先に帰って良いぞ」
「えっ、いいんですか?」
「ああ、今日は、おっさん連を引き取りに来てくれる奥さま連がやってくれるそうだ」
「アインさん、本当にいいの?」
「いいさ。……女の方が準備に時間が掛かるんだろう?」
「うーん、なら、今日は、先に帰るね」
「はいはい、風呂でゆっくりとお肌を玉の様に磨いてくださいな」
「ふふ、なら、先輩、色々と準備しておきますから、楽しみにしていて下さいね」
そんな返事をレナから貰った後、パーシィが呼んでいることに気付いたのでそちらに向かう事にする。
「ああ、楽しみにしている」
◇ ◇ ◇
「……なぁ、俺の部屋のベッドって、こんなにでかかったか?」
酔い潰れたアーガイルを送ると名乗りを上げた、ギラギラと目を光らせているコードウェル妹に約束のデート資金を渡し、また、パーシィ達二次会に行く連中にも軍資金を渡してから見送り、おっさん連を引き取りに来た奥さま連の手伝いで会場の後片付けも終わらせてから家に帰ってきたのだが、自室のベッドが……、今朝まではシングルだったはずのベッドが……、何故か、ダブルが二つ並びそうな程の、キングサイズになっていたりする。
「あは、アインさんを驚かそうと思って、私達のベッドを運んできたの」
「ええ、先輩が帰ってくる前に、みんなで協力して運び込みました」
「シーツも特注品で大きいのを、みんなでお金を出し合って買ったんだから、感謝してよね、兄さん」
いや、感謝する前に、クローゼット部分を開けられるように……って、開いたわ。
「ちゃんと開くから大丈夫ですって、先輩」
「うん、前もって計算しておいたから大丈夫だよ」
「あ、それとね、兄さん、お風呂もちゃんと用意してるから、いつでも入れるからね」
「わかった、って……、しまったな、避妊具を買ってくるの忘れてたわ」
……俺も、浮かれすぎてたって所かなぁ。
「ふふ、先輩のことだから、そんなこともあろうかと、買っておきました。それと、皆、エヴァ先生から身体に合った経口避妊薬を処方してもらって、飲んでますから、安心してください」
「わ、私もアインさんとの子どもは欲しいけど、まだ、早い気がするからね」
「うふふ、後、兄さんも避妊具をつけない方が嬉しいでしょ?」
「そ、それは何とも至れり尽くせりで……、参りました」
ミーアの言葉が俺の本音を見事に言い当てていた事から全面降伏して、とりあえず、風呂に入ってくるわ、だなんて言っている間に、更に夜も深くなり、本日のメインイベントに突入する事になる。
……。
これから始まる快楽を伴なう一時への期待感、はたまた、長きに渡って獲物を前に耐え続けてきた反動からか、非常に猛っている内の獣と今にも噴火しそうな我が息子を何とかコントロールする為にも冷水を浴びてから風呂を上り、いつもの寝間着姿で自室に入ったら、薄着で素足を晒したお嬢さん方が大幅に広くなったベッドの上で俺が帰ってくるのを待っていたようだ。
あ、息子が、また、元気に……。
「待たせたか?」
「ええ、本当に、長く、待ちましたよ」
「うん、こっちが焦れちゃう位にね」
「わ、私も……」
んん?
「マユラ、もしかして、緊張してるのか?」
「そ、そりゃ、初めての事だし……、わ、私が、その……、今日、一番、最初だから……」
「……あ~、もしかして、順番か?」
「ええ、先輩がお風呂に入っている間に決めました」
「一番目がマユラさんで、二番目がレナさん、……で、最後が私ね」
ミーアの言葉に頷き返しつつ、一番最初の相手となるマユラの隣に腰掛けると、ぎこちない動きながらもマユラが身を寄せてきた。
「え~、最初にマユラで」
隣に座って俺の肩に頭を預けながらも、どうやら、寝間着の下で普段以上に猛って屹立している我が息子を目撃してしまったのか、顔から肩口までを赤く染めたマユラがちょっと固い動きで頷いてみせる。
「次にレナ」
俺の言葉に応えて、だぶだぶのTシャツ……以前、ミーアが俺にと買ってきた十枚組の一枚で、何の因果か最も色物だった〝助平心〟だった……を着て、ベッドの端で女の子座りをしているレナはニコリと微笑を見せるが……、いつもいちゃいちゃする時に見せる笑顔より、更に扇情的だったりする。
「んで、最後にミーアだな?」
うんうんと頷いたミーアが俺のお気に入りのTシャツ〝大和心〟を着て、ベッドの真ん中というか俺の前で仁王立ちして、例の如く大きな胸を張っているんだが、期待感で目がキラキラしているのはどうかと思う。
つか、これでいいのか?
「……何か、ムードがなくないか?」
「ふふ、なら、先輩が作ってくださいよ」
「まぁ、兄さんにできるならねぇ」
レナとミーアから発せられた手厳しいお言葉に何かお返してやりたい所だが……、内の獣もナイフとフォークをチンチンと打ち合わせながら荒々しく呼吸しているし、我が息子も元気一杯に即応臨戦態勢に入ってるから、後でタップリと〝なかす〟ことでお返しするというか、ほんとうに、そろそろ、俺の方が限界だ。
なので、じーっと、好奇と期待に溢れているレナとミーアの視線に晒されながらも、本格的に始動すべく、マユラの肩をあえて力強く抱き寄せる。
「マユラ」
「あ、ぇ、その」
ぎこちない動きのマユラの緊張を解す為にも軽いキスを、唇を除いた頬や首筋、時に肩や二の腕、鎖骨にまで、何度も何度も繰り返しながら、ベッドにそっと身体を押し倒しす。そして、マユラの足の間に片足を差し込む事で、目的地への侵入路を確保する為にも、割って入りながら覆い被さり、残しておいた弾力のある艶やかな唇への深いキスに移行する。
ついでに言えば、キスの間にも俺の両手はマユラの身体を這うように走らせており、〝無用心〟と達筆で書かれたTシャツを捲し上げて、その下にある我が侭な膨らみを柔らかく揉んでみたり、その頂を軽く弄ったり、お尻や太ももの肉付きを確かめるように撫で上げたり、秘所を守る最後の砦であるショーツを取り除くべく動かしていたりする。
「ん、ぁっ! アイン、さん……、んん……」
喘ぎに近いマユラの声が聞こえるが、最早っ、ここまできた以上はっ、問答は無用であぁーーーーーーーーるっ!
……というわけで、本日のフルコース、美味しく頂かせていただきますです。
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