依然、地域的流行のはしか 定期接種でしっかり予防を
混み合う年度末 予約早めに
全身に発疹ができ、高熱が出るはしかは、脳炎などの合併症で死に至ることもある。日本では近年、患者が減っているというものの、昨春は関東地方、今年は愛知県で患者が増えるなど、地域的に小規模な流行が発生している。今年は、患者数が増加に転じる可能性もあり、医療関係者は早めの予防接種を呼び掛けている。(佐橋大)
はしかは、ウイルスによる感染症。くしゃみやせきで広がり、インフルエンザなどと比べて感染力が非常に強い。感染から10日ほどして発熱やせきなど風邪のような症状が現れ、いったん熱が下がった後、高熱と発疹が出る。
1000人に1人の割合で脳炎を発症。妊娠中にかかると、流産や早産を引き起こす可能性がある。国立感染症研究所感染症情報センター第3室長の多屋馨子さんは「思春期以降では約8割が入院し、感染が減った最近でも、死者が出ている。昨年は欧州などで感染者が増えており、海外からウイルスが入るリスクが高まっている」と注意を促す。
同センターによると、患者数は全数報告が始まった2008年の1万1012人から徐々に減り、11年は434人。今年は2月22日現在で56人と昨年並みだが、医療関係者は「昨年を上回る可能性がある」と懸念する。
妊娠前に混合ワクチンも
日本では10年5月を最後に、国内にもともといたウイルスでの感染報告はない。今年、最多の17人の感染が報告されている愛知県では、海外のウイルスが見つかっている。感染経路は不明で、年齢も1〜40歳とバラバラだが、ほとんどの患者が予防接種を打っていなかった。
はしかは予防接種で十分な免疫がつけば、かからない。以前、公費負担の「定期接種」は、幼児期の1回だけ。しかし、1回では免疫がつかない人が約5%いるとされ、接種から時間がたつと効果が薄れる人も。
国は06年度から、定期接種を1歳と小学校入学前1年の計2回に増やした。また、免疫が不十分な人が多い世代への対策として08〜12年度の期間限定で、中学1年と高校3年への追加接種が努力義務となった。
世界保健機関(WHO)は、日本を含む西太平洋地域で、はしかの流行をゼロにする「はしか排除」の今年中の達成を目指す。排除条件の1つが、ワクチンの接種率を2回とも95%以上にすること。日本の10年度の接種率は、1歳では95.6%と高いが、就学1年前だと92.2%に下がる。さらに中1は87.2%、高3は78.8%と、いずれも低い。特に昨年、流行のあった神奈川県は中180.5%、高362.6%という低さだ。
2回目の定期接種の期限は、就学前も中1、高3も、年度末の3月末まで。愛知県衛生研究所所長の皆川洋子さんは「年度末は、自治体が接種を委託する医療機関が混雑する場合もある。接種が済んでいない人は早めに予約を」と呼び掛ける。
名鉄病院(名古屋市)予防接種センター長の宮津光伸さんは、12年度に定期接種の対象になる人は、4月に入ったらすぐ、受けることを勧める。はしかは4、5月に感染が増えることが多いからだ。1回目となる1歳の接種を早く受けるのも、感染を防ぐ上で大切。愛知県の今年の感染者のうち2人は、接種前の1歳だった。
はしかの予防接種で使われるのは、風疹と混合のMRワクチン。風疹は妊娠初期に感染すると、生まれてくる子に心臓病や難聴などの障害が出る危険性がある。宮津さんは「1回の接種で風疹の免疫が不十分な人は、はしかより多い」と、妊娠前の混合ワクチンの接種も勧める。この場合は任意接種のため、1万円前後の費用がかかる。自治体の予防接種の窓口に聞けば、接種できる医療機関が分かる。
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