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イラン国会:「一時婚」登録制を拒否

 【テヘラン鵜塚健】イラン国会は、正式な結婚とは別に、男女が契約を結べば一定期間だけ婚姻関係を持つことが許される「一時婚(シーゲ)」について、「役所への登録は不要」との結論を出した。一時婚はイスラム教シーア派独特の習慣。国内の女性からは「売春と同じだ」との批判があり、登録制にして一時婚の管理・抑制を求める声が強い。しかし、男性が大半を占める国会は「国民のプライバシーにかかわる問題だ」として登録制の動きを阻止した。

 イスラム教では一般に男性は4人までの妻帯が可能。一時婚はこれとは別で、男女が互いにアラビア語で誓いをし、男性が女性に金を払えば、1時間から数十年間までの一定期間、関係を持てる。男性は既婚、未婚を問わないが、女性は未婚のみで、相続などの権利は一切ない。イスラム教スンニ派は一時婚を認めていない。

 イランでは婚姻外の恋愛はご法度で、性的関係が発覚すれば男女とも石打ちによる死刑に処せられる可能性もある。だが、一時婚は貧しい女性を救済する意味もあり、金銭を介した男女関係として宗教上認められている。

 イランの女性からは「男性ばかりに都合がいい制度」と評判が悪い。大半の男性は一時婚についてだれにも口外しない。一時婚で生まれた子供が父親に認知されず、福祉や義務教育の対象にならないなどの問題も多い。

 このため、政府は女性団体などの意向を受け、一時婚を登録制にすることを盛り込んだ「家族保護法」の改正案を07年に国会に提案。長く議論を続けたが、多くの男性国会議員が強く反発。結局、今月5日に「女性が妊娠した場合や当事者が望む場合だけ例外的に登録する」と修正して可決した。

 国会の決定について、テヘラン在住の女性人権活動家のバリモラドさんは「今後も男性に一時婚を奨励するような決定で、女性の人権を踏みにじるものだ。一時婚の後に子供ができたことがわかり、生活に苦しむ母子も多い。これでは家族保護法ではなく、家族破壊法だ」と話している。

毎日新聞 2012年3月15日 21時05分(最終更新 3月15日 21時26分)

 

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