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2/11(土)
改行の整理をしました。
表現の修正をしました。
第2章 初めての魔法世界
第14話 新しい名前


「ではその子が、おっしゃっていた救済すべき魂の1人ですの?」

 うわ~。いかにもお局様なシスターだな。
 こんなのを相手にしてるなんてシルヴィアのやつも大変だぜ。

「えぇ、彼女の魂の枷はすでに解き放ちました。今は無垢な仔羊。これから生きる術を学び、羽ばたいて行く命です」

 すげぇな。堅苦しい言葉がすらすら出てきてやがる。
 ここに来るまで普通の女の子みたいに喋ってたが、伊達に何百年も天使様やってねぇって事かよ。

「それから彼女には名前がありません。出来ればきちんとした名前と後見人を付けてあげたいのです」
「あら、それでしたら【銀の御使い】様が後見人になるのがよろしいのではなくて?教会に身を置くのでしたらこれ以上の後見人はありませんわ」
「私は使命ある身です、いつまでもメガロメセンブリアにいられないのです」

 【銀の御使い】だと?二つ名持ちかよ!
 それにしても使命ってのは世界中で転生者を探し回ってるのか?

「では洗礼は受けさせますの?」
「それは本人の意思で決めてもらいたいと思っています」

 洗礼!?俺は宗教信じて無いぞ!
 いや神様が実在してるのはもう十分解っちゃいるんだがな?

 とりあえず名前どうするか。不本意だが男には戻れないみたいだしな。
 神の力ってのもあの筋肉が上級神だったせいでどうにも出来なかったらしい。
 だからって女の子らしい名前はごめんだ!

「では『フローラ』はいかがかしら?これから花咲く可憐な少女にふさわしいと思うわ」

 何いいぃぃぃ!ちょっと待て!
 そんないかにも女の子な名前はごめんだぞ!

「えっと『フローラ』?って呼んでいいのかな?」
「イヤだ!おr……――むぐむぐ!」

 『俺は男だ!』って言おうとしたら、シルヴィアが口をふさいできた。

(彼女を怒らせると、見習いの子達はすっごく怒られるの!だから、言葉使いは気をつけて!”ふり”で良いから、丁寧な言葉でね!)

 そう耳元で囁いてくる。

 なるほど、やっぱりお局様なわけか!
 しかしフローラはねーよ!
 だからと言って決めないとフローラにされちまいそうだし!

「その子に異論が無ければ『フローラ』と呼びますわ。よろしくて?」

 やべぇぇぇぇ!何か考えないと!
 せめて中性的な名前で!

「ふ、ふろーー!」
「フロウ?そっちが良いのかな?」

 ナイスだシルヴィア!『フローラ』に比べたら100万倍ましだ!

「あら、では『フロウ』ね。これからよろしくお願いいたしますわ」
「は、ハイ。ヨロシクオネガイシマス」

 あ、あぶね~。
 もうちょっとかっこいい名前が良かったが、仕方が無い。

「それでは【銀の御使い】様、この子を着替えさせてきます。後でお部屋にお連れいたしますわ。着させていた外套は洗濯させておきますわ」
「はい、よろしくおねがいします」

 あぁそうか、マント借りたままだったな。うん?
 なんでシルヴィアはそんな顔でこっち見てるんだ?
 何か哀れむような?

「それではフロウ。こちらにおいでなさい」
「あ、はい」
「また後でね」






「シスターではないので修道服は着せませんが、【銀の御使い】様が連れてきた娘です。それなりの格好をしなければなりません。ですのでこれを着なさい」
「はぁ!?」

 そういって渡されたのは、上品にレースがあしらわれた白いワンピース。
 修道院という場所柄か肩の露出を控えた長袖のものだが、女物という時点でありえない。
 ちょ!あのときの哀れみの目はそういう事か!
 ――待て!?もしかして下着も!

「着方は分かるかしら?」
「え、その、あの!」

 まてまてまて!
 パニックを起こしている間にお局シスターにテキパキと着せられていた。
 いつの間にか髪を梳かされている。

「はっ!俺は何を!?」
「俺?」

 じろりとお局シスターの目線が光る。
 あ、しまった。シルヴィアが言葉使いには気をつけろって言っていたじゃないか!
 でもいきなり女言葉は無理だって!

「フロウ。貴女はまだ小さい。【銀の御使い】様が魂の枷をお解きに成られたと言うならば今まで苦労してきたのでしょう。これからは皆で淑女の何たるかを大切に教えていきます。よろしいですね?」
「ハイ……」

 お局シスターの眼光の鋭さに、そう答えるしかなかった……。






「シルヴィア、きたぜ……」
「いらっしゃい。やっぱり可愛くされちゃったね」

 あぁやっぱり解ってたのか。
 そうならそうと言ってくれれば良かったんだ。

「私のほうで動きやすい服とか、中性的なものを用意しておくよ、でもシスターに見つかったら怒られると思うから、結局はある程度は慣れないとダメかな?」

 そうか、怒られるのか。
 じゃぁなるべくシルヴィアと居よう。俺の事をちゃんと知ってるのはシルヴィアだけだしな。
 あとは他の転生者か。俺達の事を考えたらやっぱり酷い事になってるのか?

「なあシルヴィア。他の転生者ってどうなってるんだ?」
「分からないの。生まれる年代が近くならないと情報が出てこないんだよ」

 情報?この間使っていた本か。
 見せてもらえるなら何か調べられるんじゃ?

「シルヴィア。この間の本を見せてくれないか?」
「え!?良いけど……私にしか使えないし。それに、笑わないでね?」

 笑う?何で渋ってるんだ?

「はい……」

 どこからとも無くいきなり本が出てきた。
 とりあえず受け取ってみてページをめくる。

 ――!?シルヴィアちゃんの取扱説明書♪』って!

「はぁ!?」
「だから笑わないでって言ったのに……」

 これも神の悪戯ってやつか!
 ぺらぺらと内容をめくってみると――。

「チートじゃねぇか!」
「やっぱりそう思う?」

 俺の『魔力はナギの2倍、気はラカンの2倍』も大概だと思ったが、こいつのはおかしいな。
 筋肉神が魂の器に限界があるとか言っていたが、神の魂は伊達じゃないって事か。

「とりあえず役に立ちそうなのは魔法の教本部分くらいっぽいな。あとは転生者に直接会わないとダメだろう」
「うん。でも魔法はそれに書いてある事以上の知識はもうあるから、別にまとめてあげるよ」
「お!それは助かるぜ!」

 気は何となく解るが魔法はさっぱりだからな、先生も居る事だしじっくりと魔法を覚えるか!


14話目終了です。

風竜という事で、フロウ≪flow≫にしました。
「名は体を表す」を意識しています。


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