“首相と密会”バレた谷垣総裁
側近からも批判され四面楚歌
野田佳彦首相との「極秘トップ会談」が明るみに出て、自民党の谷垣禎一総裁が窮地に立たされている。批判が噴出して「谷垣おろし」になりかねない情勢だが、これも一握りの側近ばかりを重用してきたツケかもしれない。
谷垣氏の脇を固める側近は、川崎二郎財務委員長、遠藤利明幹事長代理、田野瀬良太郎幹事長代行の三人。川崎、遠藤両氏は谷垣氏の出身派閥と同じ古賀派所属で、もう十年来の側近だ。田野瀬氏は山崎派だが、谷垣体制で党総務会長に就任して以来、側近を務める。この三人に、やはり十年以上も谷垣氏と行動をともにする逢沢一郎前国会対策委員長を加えた四人が、最側近グループと目されている。
とりわけ川崎氏は総裁との“近さ”をアピール。党本部の五階から四階の総裁室に足しげく通っているという。
「もっぱら政局情報を総裁の耳に入れています。谷垣政権になったら自分は官房長官だ、と信じている」(自民党幹部)
遠藤氏も六年前の総裁選で谷垣氏の選挙対策を取り仕切り、谷垣政権で要職に就くのが夢だとか。
だが、加藤紘一元幹事長が森内閣打倒を目論んで大失敗した「加藤の乱」以来、川崎、遠藤両氏の政局音痴ぶりと他党とのパイプのなさは自民党内に知れ渡っている。その二人を補う役割を果たしているのが、派閥の違う田野瀬氏だ。藤村修官房長官らと接触を保ちつつ、永田町の“潮流”を読めない谷垣氏を、なんとか「現実の世界」につなぎ留めている。
側近グループが厚い壁を築くがゆえに、幹事長ら党執行部と総裁との距離が遠のく事態は、かつてもあった。情報過疎に陥った河野洋平総裁は総裁再選を断念せざるを得ず、新進党時代の小沢一郎党首も最後は党解体に追い込まれた。当時、跳梁跋扈(ばっこ)していた側近たちは、党内で「河野四バカ」「小沢四バカ」と呼ばれていたものだ。
ところが、野田首相とのトップ会談にあたって、谷垣氏は側近グループに相談さえしていなかったようだ。メンツを潰された川崎、遠藤、逢沢の三氏は都内の中国料理店に谷垣氏を呼び出して、「トップ会談はタイミングが早すぎた」「衆院解散の担保はとれていないんでしょう」などと不満をぶつけた。
四面楚歌の谷垣氏だが、党内では、「いざ、というときに信用できない側近を抱えているようでは、総裁再選などムリだ」とささやかれている。