ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第二部  二年戦争/プラント独立戦争 (C.E.70年-C.E.72年)
07  世界樹の落葉 1


 2月14日のユニウス・セブンへの核攻撃は、あまりにも一般市民の犠牲者が多いことから【血のバレンタイン】という公称が与えられた。
 しかし、この公称には、犠牲者を追悼する想いがあまり感じられず、どちらかというと、地球連合が核……大量破壊兵器を使用したという暴虐性を強調し、プラントの市民に団結と徹底抗戦を訴えるプロパガンダ色の方が強く感じられる。

 いや、市民が当たり前のようにこの公称を受け入れているところを見ると、俺の感性がプラント社会とずれているだけなのか……。

 ……。

 気を取り直して、血のバレンタイン後の情勢を考える。


 俺が酒に酔っ払ってミーアと一緒にソファで眠った日、独立を宣言したプラントは、積極的中立勧告を地球上の全国家に向けて行った。
 積極的中立勧告ってことは、積極的中立を勧めるってことだから、単純に言えば、プラントは別にあなたの国のイデオロギーや政治信条、形態に関してはとやかく口出ししませんから、中立を維持して地球連合に加わわらずに戦争に参加しないで下さい、っていう意味合いなのかなぁ?


 ……正直、よくわからない。


 で、このプラントの積極的中立勧告を受け入れた国があった。

 旧オーストラリアといったオセアニア地域の大洋州連合と旧ブラジルとかを含む中南米地域の南アメリカ合衆国の二カ国だ。
 両国共にプラント理事国であった三大国……大西洋連邦、ユーラシア連邦、東アジア共和国とは距離を置いていたことを考えると、三大国の影響力が大きい地球連合を嫌ったのだろうか?

 とにかく、この二国は中立という道を選択したのだ。


 ……したのだが、一夜で状況は一変する。


 翌日の19日に、大西洋連邦が南アメリカ合衆国に侵攻して、パナマにある宇宙港に存在する、マスドライバー……宇宙へとモノを放り上げる、打ち上げ施設を制圧したのだ。

 っていうか、大西洋連邦は南アメリカ合衆国の併合を宣言したぐらいだ。


 うん、この流石とも言うべき横暴ぶりは、前世で超大国だった頃を思い起こさせるよ。

 でも、ちょっと、南アメリカ合衆国も簡単に制圧されすぎというか、もっと抗戦してもいいんじゃないかな、とも思わないでもない。


 この地球連合というか、大西洋連邦の動きに対して、積極的中立勧告を受諾したもう一国である大洋州連合は、地球連合の南アメリカ合衆国侵攻及び制圧を、明日は我が身かもしれないというわけだから、思いっきり批難した上でプラントを食糧面で支援するとの声明を出した。


 それに対する地球連合の答えは、宣戦布告。


 なんというか、どんなことでも、プラントの味方をする奴は絶対許せねぇっていう、連合側の考えが透けて見えるよ。

 でも、こうなる可能性も予測できたはずなのに……何故、南アメリカ合衆国と大洋州連合はプラントの勧告を受け入れたんだ?


「それは非連合加盟国にプラントから物資を供給する、っていう飴のためだよ」
「ああ、ゴートン艦長」
「元より裕福でない非プラント理事国だったんだから、これが好機とばかりに優先貿易という権益を獲得しようとしたんだろうねぇ」

 なんとまぁ。

「あ~、なるほど、欲に目が暗んだ結果の亡国と苦境というわけですか」
「それもあるだろうけど、どちらかと言えば、現在の物資不足の社会状況で、物資を供与するなんて利益をちらつかせたクライン議長や評議会の面々が悪辣なんだと思うよ」
「……確かに、なんとなく、今の議長って、陰湿なやり方を好みそうな顔をしてますからね」

 二人して、腕組みをしながら、頷きあう。

 ……ついでに聞いておく。

「そういえば、艦長。なんで、俺が考えていたことがわかったんですか?」
「……気付いてなかったの?」
「何をですか?」
「独り言。……以前にも言った気がするけど、あんまり、ブツブツ言わないほうがいいと思うよぉ?」

 ……うん、絶対に、意識して直そう。

「まぁ、俺はいいんだけどね、面白いからさ。……でも、副長がねぇ」

 そう言われて艦長の背後を見ると、エルステッドの副長でCIC管理官を兼務する、ウラディミル・フォルシウスが厳つい強面に呆れた表情を浮かべて俺を見ていた。

 いや、正確には、俺と艦長とを、だな。

「まったく二人とも、ここが余人の目が入らないエルステッドだからといって、好き放題言い過ぎです。そんなことをしていると、他所でボロを出して上層部批判扱いされかねません。本当に、下手すれば、熱狂的な愛国者やザフト信奉者にコレされますよ?」

 そう重低音な声音で言うなり、俺と艦長に、首を掻き切るジェスチャーをして見せるフォルシウス副長。


 ……いや、この人も大概だと思う。


 なんて思いつつ、俺は二人に声をかけた用件を尋ねる。

「それで、艦長と副長、お揃いで何か用ですか?」
「何を言ってるんだ、お前は……。時間を見ろ、ラインブルグ。作戦会議の5分前だろう?」
「えっ? あれっ、ほんとだ。……もう、そんな時間だったんですか?」
「……艦長、声をかけて正解でしたね」
「ああ、そうだねぇ」

 苦笑未満といった顔で二人が俺を見つめてくる。

「ラインブルグ、先の戦闘で、ああいうことがあった後だ。お前が呆けるのもわかるが……」
「そうだねぇ。戦闘の前に腑抜けすぎると……下手すりゃ、死んじゃうよ?」
「……それに、お前はMS小隊のリーダーなのだ。お前の状態一つで小隊全体が危機に晒されることもある。だから、しっかりしてもらいたい」

 どうやら、俺が目に余る呆けっぷりを見せていたため、二人に心配をかけてしまったようだ。

「すいません。ちょっと、休みボケが取れてなかったみたいです。……すぐに元に戻します」
「……うん。その言葉、信じるよ。……では、副長、ラインブルグ君、会議室に行こうか」
「はっ」
「はい」

 直に、ザフト宇宙機動艦隊による、L1宙域にある地球連合のコロニー【世界樹】の制圧作戦が行われる。

 この制圧作戦の目的は、駐留戦力を撃破することでプラントの安全を確保するため、地球連合に対する抗戦の意志を見せ付けるため、ザフトが宇宙での行動の自由を獲得するため、地球圏に睨みが効く有力な駐留拠点を手に入れるため、そして、月と地球との連絡線を断つための五つだ。

 そして、今から行われる会議で、司令部から通達された今回の制圧作戦についての概要が説明されるのだ。


 すでに、L1宙域は近い。

 作戦開始まで二日も無いのだ。

 ……気を引き締めないとな。


 そんな決心をしつつ、俺は展望休憩室を後にして、二人を追いかけた。


 ◇ ◇ ◇


 到着したエルステッドの作戦会議室には、エルステッドの戦闘部門の責任者が顔を揃えていた。

 艦長、副長、航法通信管制班長、CIC火器情報管制班長、MS小隊のリーダーである俺とアシムも含まれて、計六人だ。

 早速、全員で艦長に敬礼した後、着席して艦長の話を聞く。

「さて、皆に集まってもらったのは、これから行われるL1宙域制圧作戦についての概要を説明するためなんだが……」
「……?」
「ぶっちゃけると、作戦なんてもんはない」
「へっ?」

 思わず、疑問の声を上げた俺は変だろうか?

「機動艦隊司令部は、二度にわたる戦闘の結果、MAに対してMSは絶対的な有利を持っていると確信したそうで、正面からの力押しで十分に勝てると考えているそうだ。真正面からぶつかって、圧倒的な実力で敵戦力を排除した後に、L1宙域を確実に制圧する、とのことだよ」

 ん、んな、アホな……。

「当然の判断ですよ、艦長! 俺達コーディネイターで構成されたザフトが、ナチュラルどもに負けるわけがない! 作戦なんて、惰弱なナチュラルの、核攻撃をするような卑劣な作戦しか考えられない愚かなナチュラルの考えることであって、絶対的な能力を持つ我々ならば、作戦などに頼らずともいいのですっ! 作戦などっ、不要なのですっ! どんな小細工だろうと我々ザフトはナチュラルどもを粉砕して、L1を……【世界樹】を制圧して見せましょう!」
「…………アシム君、イイこというねぇ。……まぁ、そういうわけだから、各々、戦闘開始まで英気を養っておいてね」
「起立、敬礼!」

 副長の言葉に合わせて立ち上がり、敬礼を施す。


 ……が、俺は納得がいかない!

 作戦がないなんて馬鹿なことに、納得がいかない!

 鼻息荒くアシムが勇んで出て行ったが、俺は絶対に作戦が無いなんて、納得できないっ!


 ……。


 良かった。

 会議室には納得がいかなかった人がちゃんと他にもいたよ。

 航法通信管制班長に火器情報管制班長って、アシム以外は残ってるよ……。

 いや、でも、流石に、当然……だよねぇ?

「はいはい、どうやらご不満な人たちが残っているようだよ、副長?」
「……あの説明で一人出て行ったことに、私は非常に強い不安を感じるのですが、艦長?」
「あのいかにもザフトの勇者に成り切っている様子じゃ、ねぇ」
「戯言ですよ、艦長。予測できていたことです」

 ……何気にひどいことを言っているよ。

「……さて、ここに残った以上はそれぞれに作戦に不満があると考えるけど、それでいいかい?」
「あまりに作戦……と呼べるものとは思いませんが……作戦が楽観的すぎることを考えると、不満を感じるのが当然の反応だと思いますが?」

 残った三人で目を見合わせた後、代表して、航法通信管制班長のリュウ・ミンリンが答えてくれた。

「うんうん、その言葉を聞けると艦を預かる身としてはとても頼りになるねぇ」
「……」
「よろしい。ラインブルグ君、鍵閉めて」

 艦長に言われたとおりに会議室の扉をロックする。




「はい、作戦開始まで時間も少ないから、本艦の作戦会議をすぐに始めるよ」




 うるさいというか、話が通りにくい奴とはいえ、仲間を締め出して、本命の会議を行うこの人が、酷い人というか悪い人だと感じたのは俺だけじゃないと思う。


 ……もっとも、同じだけ、頼りになるなぁ、とも感じたがな。


 ◇ ◇ ◇


「じゃあ、副長。改めて、まずは現状の説明をよろしく頼むよ」
「はっ」

 ゴートン艦長に委ねられたフォルシウス副長が何やら卓上端末を操作すると、会議室中央に固定されている会議卓に状況展開図が表示された。
 それを立ったまま上から覗き込むと、どうやらL1宙域周辺を示したもののようで、緑色をした三角の群がL1と表示された方向へと向かっているのがわかる。

 いつも何をするにしてもブリーフィングルームばかりを使っていたから、会議室の机にこんな機能があったなんて、知らなかったよ。

 ……今度、小隊の図上戦術演習にでも使わせてもらおうかなぁ。

 って、今は、話に集中しないと。

 そう思った瞬間に、副長が状況を説明し始めた。

「今現在、我々がいる場所は、ここ……緑色の光点で示す通り、L5とL1を結ぶ国際設定航路上をL1に向けて航行している。我々の戦力はFFM(ローラシア級)を主力とする宇宙機動艦隊で、前衛部隊と本隊を併せてFFMが14隻、艦載MSであるZGMF-1017(ジン)が定数限界である84機だ。また、後衛部隊であるFFM4隻と艦載MS24機は予備戦力となる。……対する地球連合軍だが、L1に存在する地球-月間の中継コロニー【世界樹】に駐留する二個艦隊に加え、月に根拠地をもつ一個艦隊が増援として向かっていることが確認されている。このことから、三個艦隊が防衛戦力になると予測できるだろう」
「……敵の一個艦隊の戦力はどれぐらいになるのでしょうか?」

 CIC火器情報管制班の班長であるミハイル・ガンドルフィが、渋いバリトンボイスで連合軍艦隊の一個分の戦力について質問する。
 すると、副長は一つ頷き、卓上の展開図脇に、地球連合軍が使用している三種類の宇宙艦艇のモデルを表示させながら、説明を続ける。

「敵一個艦隊の戦力は、以前からの情報と偵察衛星による観測情報を元に推測すると、旗艦空母……300m級1を中心にして、戦艦クラス……250m級が4、護衛艦クラス……150m級が20で構成されると予想される。また、機動戦力も、300m級及び250m級に艦載されているMAが、少なくとも、80から100は存在すると考えた方がいいだろう。……それぞれの艦隊によって、数の増減が多少はあるだろうが、大凡はこれに近い数になると思われる」
「となると、敵戦力は少なく見積もっても、艦艇が300m級が3、250m級が12、150m級が60、それに加えて、機動戦力であるMAが少なくても、240から300は存在するということになりますね。……これは……大戦力です」

 ほんとに、どう考えても、艦艇と機動戦力に、数の差がありすぎるよね。

「うむ、リュウ班長が今言ったように、確かに大戦力だ。……なのだが、どうにも司令部は、先に行われた二度の機動戦力同士の戦闘で完勝していることから、連合軍の実力を甘く見ているか、己の実力を過信しているのではないかと、私と艦長は危惧している。……もっとも、作戦らしい作戦がないことについては、今の司令部は、先のユニウス・セブンの件で、どうも思考が熱くなってしまっているようでな」
「……先のユニウス・セブンの事を考えて、復讐を考えてしまうのは仕方がないとはいえ、もう少し司令部は作戦を練った方が良くはありませんか?」

 司令部の無策ぶりに憂慮を示したリュウ班長が切れ長の黒眼をより鋭くさせて声をあげる。
 それに応えたのは、半目の中の瞳に憂いを内包させたゴートン艦長だった。

「いや、俺もね、司令部にそう言ったんだけどさぁ、誰も彼も、ナチュラルに目にものを見せてやるって、鼻息が荒くってねぇ。俺の意見をマトモに取り合ってくれなかったよ」
「……それ程にユニウス・セブンの件が大きいということですか?」
「そういうことだよ。……俺は独り身で、しかも知り合いもユニウス・セブンにいなかった。その上、不幸中の幸い的な何かで、乗組員にもそういう立場の者がいなかったから、犠牲者や愁嘆場が遠くて……どうしても心理的に一線を引いちゃってねぇ。そんな心境だからさ、大切な人を亡くした者と感情の温度差ができてしまってさ、話が噛み合わないんだ。……ついさっきまで、司令部相手に頑張ってたんだけど、やっぱり、どうしても話が通らなかったんだよねぇ」
「それに加えて、先のクライン議長による独立宣言に含まれていた扇動も効いている」

 副長の補足に、俺もあの独立宣言を思い出し、口を挟む。

「確かに、徹底的に戦い抜き、独立を勝ち取ることこそが、犠牲者への追悼である、ってな意味合いでしたね」
「うん、そういう内容だったよね。まぁ、あれはそれぞれが独立したコロニーの集団であるプラントというものを国家としてまとめるには、とても効果的だったと思う。……でも、その扇動が効き過ぎているんだよ」
「効き過ぎている、ですか?」

 俺が艦長の言葉を反復すると、艦長は一つ頷いて答えてくれた。

「そうなんだ、ラインブルグ君。あの扇動が効き過ぎている。……現に司令部は煽られた影響で思考停止になってるだろう?」
「……確かに」

 俺は納得のあまりにうんうんと頷いてしまうが、その間にも艦長の話は続く。

「あんまりこういう言葉は使いたくないけどさ。今の現状って、悲しいけど戦争なんだよねぇ。どんなに恐ろしいことでも普通に起こる非常事態なのよ。……実際、ユニウス・セブンの犠牲者や遺族には申し訳ないけど、昔からさ、戦争での大量虐殺とかは、軍民問わず、割と普通のことなんだよ」
「……艦長……今の言葉、ユニウス・セブンで犠牲になった者や、その遺族には、絶対に聞かせられんですな」

 艦長の物言いに顔を顰めたガンドルフィ班長が、眉間に皺を大いに寄せて、苦言を呈した。

「うん、聞かせられないよ。この場に犠牲者に関わる人がいないって、わかってるから言ったんだよ。……で、話を戻すけど、今の司令部……戦争を指揮する立場にある者が、大量虐殺ぐらいのことで頭が熱くなり過ぎて、しかも、味方の扇動に乗せられちゃって、冷静さを失って思考停止になるようじゃ、駄目だと思うんだよねぇ」
「……ですが、それは先の悲劇を所詮は他人事だと捉えているから、言えることではありませんか?」

 艦長は天井を見上げて、しばらく黙考した後、答えた。

「そうだねぇ、本当にリュウ班長の言う通りだと思うよ。……所詮は他人事だから、こんなこと言えるんだと、自分でもそう思う。……もしも、身内が犠牲者になっていたら、落ち着いて冷静に考えろだなんて、他人から言われたりしたら、張り倒してるだろうさ」

 ……俺も張り倒しているだろうな。

「でも、そういう立場にならなかった以上は、どれだけ相手の不興を買おうとも、例え感情的になった相手に張り倒されたとしても、言わなきゃならんだろう? 作戦には、知り合いっていうか、部下の……仲間の命が懸かっているんだからさ」

 艦長の言葉を……思いを聞いて、俺達三人が何も言えなくなる中、副長が再び話し始める。

「今、艦長が言われたように、司令部が熱くなり過ぎて、意見具申が通らなくなっている以上は、作戦全体の変更は最早不可能だろう。また、たとえ、作戦の変更が認められたとしても、作戦開始まで時間の猶予がないのも事実だ。……ならば、次善として、比較的冷静な者達に現状を認識させて、それぞれが最善の行動を考えられるように、また取れるようにと、艦長は考えられたのだ」
「うん、おそらく、この作戦ではザフト全軍に復讐の熱狂が渦巻くだろうねぇ。そして、いい具合に血が上ったら、先のユニウス・セブンの時のように、また、相手に付け入られる隙が生まれるかもしれない。……ならば、我々が為すべきことは、熱狂して暴走する友軍に必ず生まれるであろう隙を潰す事と味方の昂ぶる士気を崩されないように地味に裏方で支える事だ」
「……我々に、できますか?」


「ガンドルフィ班長、できません、じゃあ、すませられないんだよ。それこそ、上手いこと立ち回らないといけないんだ」


 いつか見た怜悧な光が艦長の目に宿っている。

 自然、その目に射られた班長二人と俺は背筋が伸びた。

「で、俺からのオーダーなんだけど、ガンドルフィ火器情報管制班長は、戦場全域を見据えると共に敵味方の動きを常に把握して、常に最新の情報に更新し続けて欲しい。また、敵の攻撃基点を察知したら、艦砲やミサイルでもって牽制妨害し、余裕があれば、敵艦隊の弱点を探し出してこちらから攻撃を仕掛けること。……もちろん、敵艦艇を沈められるようなら沈めてもかまわないよ」
「はっ」

 ガンドルフィ班長が、背筋を正して敬礼した。

「リュウ航法通信管制班長は、常に味方艦との連携距離を維持し、味方との通信リンクを絶対に確保し続けること。また、索敵管制や情報管制、MS管制と連携して、MS小隊に戦域の最新情報を提供してサポートするように」
「わかりました」

 リュウ班長は、しっかりと頷き返した。

「そして、ラインブルク君の小隊は、敵への攻撃はアシム小隊や他のMS部隊に任せればいいから、前線から一歩引いて前線宙域を把握し、味方の突出で穴が開いたら埋め、連携の乱れで隙が出来たら潰し、味方がやられそうなら援護支援して、攻撃の基点になりそうな凄腕がいれば、嫌がらせでもして気を引いて拘束、もしくは撃破する、っていう具合に、徹底的に前線が崩されないよう掩護に回って欲しい」
「了解です」

 俺も、意識して、砕けた敬礼を返す。

 ガンドルフィ班長、リュウ班長、俺と続けて、オーダーを受け入れたのを見て、ゴートン艦長は満足そうに頷いて見せた。

「……よろしい。皆、大変だろうけど、よろしく頼むよ」
「敬礼!」

 副長の号令にあわせ、俺達は艦長に再び敬礼した。
11/02/06 サブタイトル表記変更及び内容を圧縮。
11/09/11 誤字修正。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。