"anime"として世界的に評価が高い国内の商用アニメーションについて、優れた作品やクリエーター、
また長年にわたってアニメーション業界に貢献した方らを表彰する「アニメーション神戸賞」各賞の受賞者・受賞作品が決定しました。
【委員長】
櫻井 孝昌 | コンテンツメディアプロデューサー |
【委 員】
高尾 俊太朗 | (株)学研パブリッシング 第二出版事業部 アニメディア編集長 |
福岡 俊弘 | (株)アスキー・メディアワークス 週刊アスキー総編集長 |
松下 俊也 | (株)徳間書店 アニメージュ編集部 編集長 |
矢野 健二 | (株)角川書店 メディア局 局次長 |
竹田 尚弘 | 神戸市 企画調整局 情報化推進部長 |
第15回アニメーション神戸審査委員会は、上記審査委員会メンバーの出席のもと、平成22年8月18日(水)15時から、東京都内で実施し、受賞者及び受賞作品を選出しました。 |
審査委員長
コンテンツメディアプロデューサー/櫻井 孝昌
2007年12月から「アニメ文化外交」を始め、アジアから欧州、北米、南米まで18カ国のべ54都市で、講演やアニメの上映等を通して世界と接してきた。いかに、世界が日本のアニメを愛しているか。いま「メイド・イン・ジャパン」の顔は明らかにアニメだ。1年目の新米審査委員が審査委員長を引き受けるのはアニメーション神戸の伝統らしいが、アニメ業界を知りつくす先達のみなさんのなかに私が加えさせていただいたということは、世界から見た日本のアニメを語れということと判断させていただいている。そんな見方をしたとき、今年の受賞作品、受賞者はまさに「王道」そのものといえる。「ハルヒ」や「けいおん!!」、「ミク」と世界の若者の距離は、日本人が考えている以上に近く、世界は何も変わらないことをいつも実感させてくれる。世界に日本そのものをPRしているともいえる立役者たちをアニメーション神戸で改めて表彰できる機会を持てたことをとてもうれしく思っている。
1967生まれ。富山県出身。1991年東映動画(現・東映アニメーション)入社。アニメーターとして活躍したのち、演出家に転向。2003年ルイ・ヴィトンのイメージ映像「SUPERFLAT MONOGRAM」を監督。その後、フリーとなり、 2006年劇場版「時をかける少女」を発表、日本アカデミー賞最優秀アニメーション賞、毎日映画コンクール アニメーション映画賞、アヌシー国際アニメーション映画祭長編部門特別賞、シッチェス・カタロニア国際映画祭アニメーション部門最優秀長編作品賞など各国で数多くの賞を受賞。2009年「サマーウォーズ」でデジタルコンテンツグランプリ経済産業大臣賞、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞、芸術選奨文部科学大臣新人賞、毎日映画コンクールアニメーション映画賞、日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞など多数受賞し、ベルリン国際映画祭に正式招待された。
審査委員
(株)角川書店 メディア局 局次長/矢野 健二
『サマーウォーズ』よりも以前、さらに『時をかける少女』よりも以前に、熱心なアニメファンの間で語られていたのが、細田守というクリエイターの名前だった。たとえば『劇場版ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』『劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』の監督として、『劇場版デジモンアドベンチャー』や、TVシリーズ『おジャ魔女どれみドッカ~ン!』第40話「どれみと魔女をやめた魔女」の各話演出として、そのまぶしいばかりの才能の持ち主として、細田守はファンの驚嘆と期待を背負って、すでにアニメの世界に新しい風を送りこんでいた。その風がもっと大きく力強いものとなって、日本国内どころか海外のアニメファン/映画ファンたちの心を揺り動かすようになったのが、『時をかける少女』『サマーウォーズ』という近年の作品だったと言えるだろう。細田守が今後、どんな嵐を巻き起こしてくれるか、世界中のファンが首を長くして見守っていることだろう。今回の個人賞は、すでにたくさんのファンによる賞賛と評価を得ている細田守というクリエイターに宛てた、ちょっと出すのが遅すぎた感もあるファンレターなのかもしれない。わたしたちは、次回作という名の返事を、待っています。
代表取締役 平城徳浩 1965年、長崎生まれ。
1993年(平成5年)12月6日 株式会社美峰として練馬区に本社を設立。背景美術を手掛けるアニメーション制作会社。
過去の主な作品に、新世紀エヴァンゲリオン (1995年-1996年)を始め、逮捕しちゃうぞ (1994年-1995年)、攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG(2004年)、ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島 (2005年)、近年では「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」「マクロスF」「ホッタラケの島 ~遥と魔法の鏡~」「天元突破グレンラガン」「ブレイクブレイド」など。
アニメーション背景・設定デザイン制作、2D及び3DのCG・アニメーション制作を主な事業として活動している。デジタル時代の流れに沿い絵の具と筆のアナログな背景からコンピュータを用いたデジタルな製作に移行、現在ではほとんどのスタッフがデジタルでの製作を行う。2004年に本社を練馬区高野台に移転した後も今まで通り背景美術としての姿勢を変えず、常にクオリティーの高いもの作りを発信し続けている。
幅広い時代のニーズに応えるべく海外展開にも早くから積極的に取り組み、現在ではベトナム・タイの支部で背景の一部を担当する事により様々な要求に対応出来るシステムを構築している。
審査委員
「アニメージュ」編集長/松下 俊也
特別賞には業界の功労賞的な側面があり、これまでさまざまな業種のビッグネームが受賞してきています。ところが、美術の分野からはまだ受賞者が出ていません。そこで審査委員会では、まず今回の特別賞は美術関係のスタッフに贈ろうということで、意見がまとまりました。
これは決してバランスの問題だけではなく、近年のアニメーションでは、美術の占める比重が年々高くなっているからです。昨今ファンの間で「神アニメ」と呼ばれる作品は、例外なく美術のクオリティーが高い作品です。画面の密度を高める上で、美術のすばらしさはもはや不可欠な要素になっているのです。
アニメ業界には、受賞に相応しい業績を残している美術監督が多数いらっしゃいます。しかし、アニメーションを産業として捉える観点から、今回はあえて個人ではなく、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』や『マクロスF』『戦国BASARA』など多くのメガヒット作品ですぐれた仕事をしているスタジオ「美峰」さんを選出させていただきました。ベトナムに支部を置くなど、デジタル時代ならではの活動を展開している点も、見逃せないポイントのひとつです。
クリスマスが間近に迫ったある冬の日。学校に向かった主人公「キョン」はいつもの日常と違うことに気づく。後ろの席にいるはずの「涼宮ハルヒ」がいない……。さらに驚くべき事に、その席に座っていたのは、(『憂鬱』にて)キョンを殺そうとして「長門有希」に消滅させられたはずの「朝倉涼子」だった!
TVアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズは、2006年に放送された14話、さらに2009年放送の14話で全28話の構成。それは「涼宮ハルヒ」とその仲間たち…「SOS団」が結成された"春"、終わらない夏休みの"夏"、そして学園祭などがあった"秋"の3シーズンを主に描いたものでした。
そして、劇場用アニメ『涼宮ハルヒの消失』はこれまで以上の精緻な作画、光と音の演出で、SOS団の"冬"を描いています。主人公「キョン」と「長門有希」の心理描写は、多くの「ハルヒ」ファンの心に響き、24館という小規模な公開スタートながら、約8.5億円もの興行収入を記録しました。
審査委員
「アニメディア」編集長/高尾 俊太朗
『涼宮ハルヒ』シリーズの中でも、『涼宮ハルヒの消失』の面白さは突出している。なぜなら、普段は絶対に感情を露にしない長門の「デレる姿」が萌えるのに加え、緻密に張りめぐらされたSF設定の伏線が、約3時間という長い時間できれいに回収されていくからだ。この『ハルヒ』に出てくる世界改変能力や時間軸を行き来するという、SF設定に基づいたストーリー運び。私見ではあるが、タイムスリップ系のトリックとそれを使用した人間ドラマのつくりの妙は、かの人気SF作家ロバート・A・ハインラインの『夏への扉』にも比肩し、また改変された世界の中であがくキョンの姿は、フィリップ・K・ディック『流れよわが涙、と警官は言った』などのSFの名作を彷彿させる。長門に起きた「バグ」が時間の歪みを生み、ハルヒがいない世界を作り出す。それがあたかもキョンを独り占めできない彼女の「嫉妬」という、本来彼女が持たないはずの恋愛感情が引き起こした事件にも捉えられる、「SF設定と萌え要素」がクロスオーバーする物語。本作は、SFの面白さと「萌え」を見事に両立させたSF美少女アニメの傑作である。
高校1年生の春に、軽音部に入部した楽器初心者の平沢唯。部長の田井中律、恥ずかしがり屋の秋山澪、おっとりした琴吹紬の3人とともに、普段の部室でのお茶を中心に、合宿、学園祭、クリスマスと楽しい日々を過ごしていた。高校2年生時には、真面目な新入部員の中野梓を迎え、軽音部2度目の学園祭を5人のバンド「放課後ティータイム」として大成功を収める。
そして、唯たちは高校3年の春を迎える…。
女子高の軽音部を舞台に、楽器初心者の唯を中心としたメンバーたちが繰り広げるゆるやか部活アニメ!?
審査委員
「週刊アスキー」総編集長/福岡 俊弘
小さな小さな世界の物語。日本のどこにでもありそうな、とある女子高のフツーの女の子たちのフツーの日常。そんな狭い世界の日常を描いたアニメが、日本だけじゃなく、世界の若者を虜にした。超ビッグな社会現象。それは、間違いなく"けいおん!現象"、いや"けいおん!革命"とすら呼べるものだ。
壮大な背景世界があるわけでも、天地を揺らすような大ロマンスがあるけでもない。ましてや視覚のすべてを奪って放さない壮絶な戦いがあるわけでもない。なのに、これほどまでに切なくて、胸焦がれるアニメを、物語を、他に知らない。いや、本当に、毎回次週が待ち遠しくてならなかったし、最終回が来ることが信じられなかったほどに。
文句なしに満票でテレビ部門の作品賞に選ばせていただきました。審査員も「萌えた」作品でした。
2010年3月9日にZepp Tokyoで行われたバーチャルアイドル「初音ミク」のファーストソロコンサート「Project DIVA Presents 初音ミク ソロコンサート ~こんばんは、初音ミクです。~」そして追加公演として行われた「初音ミク ひるコンサート ~こんにちは、初音ミクです。~」。
バーチャルアイドルのライブとしては初めて聖地Zepp Tokyoで行われ、平日にもかかわらず全国から約5,000人のファンが駆けつけた。約2時間に及ぶステージでは、バーチャルアイドルである「初音ミク」がまるでそこにいるかのように、生バンドをバックにステージパフォーマンスを繰り広げ、会場を熱狂させた。披露された楽曲は、PSPやアーケードの人気ゲーム「初音ミク Project DIVA」シリーズに収録されている全39曲で、同じくバーチャルアイドルの「鏡音リン」「鏡音レン」「巡音ルカ」とともに歌い上げた。2010年9月1日にはソロコンサートの模様が収録されたDVD、Blu-ray、UMD、CDが発売されている。
審査委員長
コンテンツメディアプロデューサー/櫻井 孝昌
第13回アニメーション神戸で「作品賞(ネットワーク部門)」を受賞した「初音ミク」が再びその栄冠に輝いた。いかにこのライブが衝撃的だったかを改めて証明しているものだと思う。それはまた、バーチャルアイドルによる生ライブの完成度ということだけではなく、今後このライブがもたらすであろう世界への影響の大きさあってのことである。総評でも書いた「アニメ文化外交」で世界を周っていると、ミクを筆頭にしたボーカロイドたちへの世界への認知が日増しに上がっていることを痛感する。若者たちにインタビューすると口をそろえたかのように出てくるのが「日本は、日本にしかないものを作る国だ」という発言だ。初音ミクはその象徴となりつつある。「初音ミク」を新たな次元にひっぱりあげていくことは確実な本作品は、経済停滞に苦しむ日本そのものへのひとつの「希望」だと私は考えている。そんなモノづくりをアニメーション神戸は今後も応援していきたい。
fripSideはサウンドコンポーザーでプロデューサーでもある八木沼悟志による音楽ユニット。その活動は2002年より始まり、2009年に声優としても活動している南條愛乃を新ボーカルとして迎え第2期を始動、現在に至る。本作「only my railgun」は「学園都市」と呼ばれる都市を舞台に、超能力者である御坂美琴を中心とした少女たちが繰り広げる物語が多くのファンに支持されたTVアニメ「とある科学の超電磁砲(レールガン)」のオープニングを飾った楽曲である。また、そのプロモーションビデオも話題を呼び、発売後あらゆるチャートの上位にランクされた。その後「LEVEL5-judgelight-」でも引き続き後期オープニングを担当し、2010年10月29日にリリースされた新作OVAでも「future gazer」で作品のオープニングを彩っている。
審査委員
ラジオ関西「青春ラジメニア」パーソナリティ/岩崎 和夫
20年以上もアニソンに接していると、その変化に戸惑うことがあります。元々アニメの為に造られていた曲が、タイアップが目的になってしっまったり・・・。その流れの反動から生まれたのがキャラが唄う主題歌。これ以上ピッタリの歌ってないよね、と納得したものです。
でも、それ以外の「歌でアニメの内容を表現して欲しい」という元々の形をファンが求めていたのも事実。主にゲーム主題歌を中心にした様々な歌手やユニットの存在が、それを表していました。アニメにもその流れが定着して、新主題歌といっていい曲が票を集めました。近頃珍しい明確な内容のアニメと共に、まさに唄いたくなる主題歌!
さあ、皆さん一緒に唄いましょう!!
平成21年7月から平成22年8月の期間中に、日本でアニメーションの制作にかかわり、アニメーションの創作活動を豊かにし、斬新な表現や独創的な活動などを行うことによって今後の活躍が期待できる個人などに与えられる。
長期にわたる活動によって日本のアニメーション界に貢献した個人・団体などに与えられる。
平成21年7月から平成22年8月の期間中に、日本の劇場において公開・上映されたアニメーション作品、あるいはアニメーションを効果的に活用した作品を対象とする。セルアニメーション作品、3Dアニメーション作品、CGを効果的に使用した作品、それらを複合的に活用した作品など表現手法は限定しないが、エンターテインメント作品に限るものとする。高い作品性、企画の新規性、オリジナル性、デジタル技術の応用などの新しい試みによる市場創造性を有する作品を特に評価する。また、国内制作・海外制作を問わないが、国内の人材育成に寄与する作品をより高く評価する。
平成21年7月から平成22年8月の期間中に、日本の地上波、衛星放送、CATVなどのテレビ用に制作・放送されたアニメーション作品、あるいはアニメーションを効果的に活用した作品で、再放送を除外した作品を対象とする。また、レギュラー番組・特別番組に加え、番組の一部として放送された作品も対 象とする。セルアニメーション作品、3Dアニメーション作品、CGを効果的に使用した作品、それらを複合的に活用した作品など表現手法は限定しないが、エンターテインメント作品に限るものとする。高い作品性、企画の新規性、オリジナル性、デジタル技術の応用などの新しい試みによる市場創造性を有する作品を特に評価する。また、国内制作・海外制作を問わないが、国内の人材育成に寄与する作品をより高く評価する。
平成21年7月から平成22年8月の期間中に公開されており、ネットワークメディアのインタラクティブ性を活かしたアニメーション作品、あるいはアニメーションを効果的に活用した作品を対象とする。パーソナルコンピュータ、ゲーム機、携帯端末などのプラットフォームは限定しない。また、2Dアニメーション作品、3Dアニメーション作品、CGIやJAVAなどのプログラムを効果的に使用した作品、それらを複合的に活用した作品など表現手法は限定しないが、エンターテインメント作品に限るものとする。高い作品性、企画の新規性、オリジナル性、デジタル技術の応用などの新しい試みによる市場創造性を有する作品を特に評価する。また、国内制作・海外制作を問わないが、国内の人材育成に寄与する作品をより高く評価する。
平成21年7月から平成22年8月の期間中に、公開されたすべてのアニメーション作品の主題歌を対象とする。テレビ番組中の一部のアニメーションで使用された曲やインストルメンタル曲、ゲームソフトの主題歌なども含む。一般投票を行い、得票数の多い5作品をノミネート作品とする。そのアニメーション作 品のために作られ、作品のスピリットをストレートに歌い上げている曲をより高く評価する。