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酒田市:飛島遠隔医療化 疑問残る市の対応 識者「民主的と言えず」 /山形

 酒田市が離島・飛島の医療体制について現状の「医師常駐」を、4月からテレビを使った「遠隔診療」に変更する。昨年10月に飛島診療所長の杉山誠医師(75)が今年3月での辞意を示したことが発端だが、市は一連の動きについて島民に十分に周知してこなかった。16日には島民への説明会を開くが、これまで島民から意見や要望を吸い上げてこなかった市の手続きに対し、識者から疑問の声が上がる。

 「説明会16日開催」の通知が全島民に届いたのは13日。当初は島の一部の責任者らが対象だったが変更になった。

 大石薫・市健康福祉部長は昨年10月31日に杉山医師に3カ月の勤務延長を要請。杉山医師の辞意は固いと判断して11月8日に県ドクターバンクに医師派遣を要請したが83歳の医師から問い合わせが1件あったのみだった。12月下旬に同市の日本海総合病院へ医師派遣を依頼。今年2月3日に遠隔診療と金・土曜の医師派遣(11月から3月までは派遣なし)の回答を得て同日、杉山医師に契約更新不可を伝えた。

 一方、杉山医師は不安がる島民を見て辞職を翻意し、11月以降に市に辞意撤回を伝えたという。市は医療体制の転換を島民へ情報提供してこなかった。

 市の対応について金子優子山形大教授(行政学)は「住民福祉の向上は個人でできないから税金でやる。住民説明というやるべきことをせず、意見聴取もしない仕方は民主主義とは言えない」と話している。【佐藤伸】

 ◆先行事例の新潟・粟島

 ◇遠隔診療「あくまで代替」 定期船休航は年4日半、ヘリや巡視船で搬送も

 酒田市が飛島に導入する「遠隔診療」は新潟県村上市の沖の粟島に先行事例がある。

 粟島の粟島浦村は無医村。村上市の村上総合病院とはテレビ電話を使った遠隔診療を行う。水曜は内科医が、金曜は脳外科医がいずれも1時間、診療する。急患の際はいつでも対応、遠隔診療で対処できない場合はフェリーで、海や天候が荒れればヘリコプター、巡視船の順で対応する。

 高速船で本土までは1時間弱。冬季は海が荒れるが休航は今季連続4日半だった。飛島は約1時間15分だが、今年は最長で13日連続で、過去3年間では1カ月に17~19日休航することも目立つ。飛島の交通環境は比較にならない。

 同村に約35年勤務する松浦ユリ子看護師はテレビ診療について「光回線になったがフリーズはするし、画像も粗かったりする。視、触、打の直接診療はできないため、あくまでも代替診療だ。飛島ほど休航しないが一昨年、荒天で運べず脳出血で亡くなった方もいた」と説明する。

 飛島の遠隔診療への変更については「粟島は以前から医者はいないから覚悟はできている。しかし飛島はこれまでの医療を享受できなくなる。言葉では言い尽くせない不安がこれから島民を襲うだろう。島民は次の医者が来ると思って成り行きを見つめてきたと思う」と気の毒がる。【佐藤伸】

毎日新聞 2012年3月15日 地方版

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