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【群馬】「農」の業(わざ) 肉牛・乳牛<2> 「低価格・低脂肪牛」の農家 和牛と違う魅力で勝負
日光が差し込む牛舎に、牛が気持ちよさそうに寝そべっている。前橋市市之関町の宮小牧場の小堀正展さん(31)は「肉をぜいたく品にせず、子どもやお年寄りにたくさん食べてほしい」と熱っぽく話す。 大学卒業後、父の後を継いだ。県内数カ所と新潟県に牛舎があり、約三千頭、全て去勢した雄のホルスタイン種を育てる。県内の肉牛農家約七百二十戸のうち、ホルスタインを育てる約九十戸の中で有数の規模だ。 乳牛のイメージが強いホルスタインだが、肉用は和牛や交雑牛と比べて子牛一頭の値が二〜四割ほど、出荷までの飼育期間も約一年と和牛などの二年より短い。肉の価格も安い。 「格付けは和牛や交雑種よりも下。だから価値がないと思われているが、おいしいんだ」と小堀さん。赤身が多くしっかりした味の肉。格付け最上位「A−5」の和牛と比べて脂肪分は七割少ない一方、タンパク質は三割多い。カロリーは半分だ。主に価格面から学校給食などで重宝されてきたが、最近は、ヘルシーさを求める消費者や高齢者にじわじわと人気が広がりつつある。さし入りの高級和牛とは別の魅力が受け入れられてきた。 昨年四月から「低脂肪牛」としてインターネット販売を始め、商標登録をとった。赤身の多い肉は米国や豪州産もあるが、「低脂肪牛は後味も良く、サラッとした脂の質が違う」と自信を見せる。 インターネットのブログやツイッターで消費者への発信にも力を入れる。福島第一原発事故の風評被害で、毎月約三百頭あった出荷が昨年八月にほぼゼロになった時も活用した。出荷先の大阪の食肉処理場に自ら行き、放射性物質の検査の写真や不検出だった結果もブログに公開した。 出荷頭数は持ち直しつつあるが、価格は回復しない。「安全を数字で証明できても、お客に安心を提供するまではできない」と痛感する。だからこそ情報を出し続け、客との信頼関係を築こうとしている。 ホルスタインの肉は関西で昔から需要があるが、関東では和牛が好まれてきた。だが、群馬県食肉卸売市場(玉村町)の担当者は「和牛の支持率が落ちてきている」と指摘。牛肉の価格低迷が続き、中でも高級肉の落ち込みが大きいという。 小堀さんは今、環太平洋連携協定(TPP)の議論にも注目し、将来、低脂肪牛を輸出したいと夢を描く。マレーシアなど海外の友人から情報を集める。「相場が悪い、原発事故が悪いと言っていられない」と牛肉の可能性を追い求める。 <牛肉の格付け> 日本食肉格付協会が行い、上位ほど高く取引される傾向がある。牛1頭から取れる枝肉の割合でA〜Cの3段階に分かれる「歩留(ぶどまり)等級」と、色、脂肪の質、霜降り具合などから5段階に分かれる「肉質等級」で決まる。最上位「A−5」は多くを和牛が占める。 PR情報
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