また、この展示を見れば「1840年のアヘン戦争以降、半植民地・半封建の社会状況に陥った中国人民が屈辱や窮状に抗って立ち上がり、ありとあらゆる方法で国家の復興を試みた」ことが分かるという。
数年に及ぶ改修工事を経て昨年再開館した中国国家博物館はよく整理されており、興味深い展示物でいっぱいだ。しかし、そこから発せられる政治的なメッセージは生々しく、かつ執拗だ。
博物館の展示に込められた強烈な政治的メッセージ
アヘン戦争の展示には、「帝国主義の列強が蜂の大群のように中国に押し寄せ、我が国の財宝を奪い、人民を殺害していった」という説明が添えられている。1930年代の日本による侵略にもかなり広大なスペースが割かれている。
しかし国民党と共産党が戦った内戦については、どちらかと言えば通り一遍の展示しかない。筆者をガイドしてくれた学生は、その理由を次のように説明してくれた。「そんなに面白くありませんから。中国人が中国人と戦っただけですよ」
共産主義体制の中国に関する展示は、さらに大幅に編集されている。少なくとも2000万人が亡くなった飢饉を引き起こした「大躍進政策」については、共産党支配の初期に見られた「後退」という曖昧な表現で言及されているだけだ。文化大革命の混乱と恐怖は紹介されていない。1989年の天安門広場での虐殺も同様だ。
ポスト共産主義体制の中国が作る中国近代史の博物館は果たしてどのようなものになるのか、考えてみると面白い。自らがもたらした現代中国の悲劇の一部について展示を行うことは、まず間違いないだろう。しかし、今の他の展示物に漂う非常に国家主義的な雰囲気は、消えずに残るかもしれない。
北京大学のある教授は筆者にこう話してくれた。「外国人による搾取を強調する姿勢は変わらないだろう。この国では誰もが、6歳のころからそういう歴史を信じるよう教えられている」
外国人が現代の中国とかかわりを持とうとする際には、中国が自らの過去をどのように認識しているかを理解することが重要だ。中国の子供はひとり残らず、英国人が引き起こしたアヘン戦争について学校で教わっている。だが不思議なことに、英国の学校に通った筆者には、歴史の授業でこの戦争の話が出たという記憶がない。
中国史を勉強しておくことは、外国人が現代中国の不透明な政治を理解するうえでも役立つだろう。
-
決して捨てたものではない日本のビジネス文化 (2012.03.15)
-
恐ろしいデレバレッジングが始まった (2012.03.15)
-
東アフリカが熱い! 石油大手の新たな開拓地 (2012.03.14)
-
米国による新たな「中国叩き」 (2012.03.13)
-
防火壁の議論を再開するユーロ圏 (2012.03.13)
-
インドの綿花禁輸措置に中国が抗議 (2012.03.12)
-
震災から1年:遅い復興ペースに募る不満 (2012.03.12)
-
混迷続く共和党指名争い、勢いづくオバマ大統領 (2012.03.09)
-
ギリシャ救済、投資家の参加表明で関門突破 (2012.03.09)