紙面から(2月21日)/福島原子力事故と安全対策
事故の教訓生かし対策要請
2012/03/05
昨年3月11日に東日本大震災が発生し、10メートルをはるかに超える巨大津波を引き起こした。 東京電力福島第一原子力発電所も津波をかぶり、冷却機能を喪失。 結果として炉心を冷やせず、核燃料が溶け出す過酷事故 (シビアアクシデント) や原子炉建屋上部を吹き飛ばす水素爆発に至った。 この福島第一事故を教訓としたシビアアクシデントを防止するため、経済産業省原子力安全・保安院は昨年3月30日に緊急安全対策を実施するよう電力各社へ指示。 各社は高圧電源車の配備や防潮堤の増強、建屋の水密化といった様々な対策を実施した。 各社の対応状況を報告する。 (上の写真は、非常時でも格納容器のベントが行えるよう、中国電力島根原子力発電所で行われた訓練の様子)
静岡県浜岡防災センターで行われた訓練。屋上に衛星アンテナを設置する中部電力社員
保安院が電力各社へ指示した緊急安全対策は、津波で原子力発電所の交流電源と海水による原子炉冷却設備、使用済み燃料プール冷却設備の3つの機能すべてを失った場合も炉心や使用済み燃料の損傷を防ぐことが目的だ。 そのため緊急点検や対応訓練の実施、緊急時の電源確保など6項目の対策を講じるよう求めた。
緊急対策は福島第一事故を踏まえ、保安院が当面実施すべき津波対策としてまとめたもの。 現在判明している知見に基づき、津波で電源機能などを失った場合も放射性物質の放出を抑えつつ、原子炉の冷却機能を回復することを目的としている。
具体的には各社に対し、 (1) 緊急点検の実施 (2) 緊急時対応計画の点検・訓練 (3) 緊急時の電源確保 (4) 緊急時の最終的な除熱機能の確保 (5) 緊急時の使用済み燃料プールの冷却確保 (6) 各発電所の構造を踏まえた対応策--の6項目の実施を求めた。
うち、緊急点検は津波に起因する緊急時対応の機器・設備が対象。 緊急時対応計画の関連では、原子炉・使用済み燃料プールの冷却機能や交流電源をすべて失った場合を想定した計画の点検や訓練の実施を盛り込んだ。また、福島第一事故が長期化した原因として、海水系ポンプの故障による除熱機能喪失が影響したことを挙げ、海水系施設・機能を喪失した場合の機動的な復旧対策を準備するよう求めている。
保安院は今回の対策指示とあわせて 「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」 を改正。 電源機能喪失などを想定した保全活動体制整備にかかわる規則などを新たに盛り込む。 このほか、原子力設備の技術基準を定める省令解釈についても一部を見直した。 電力各社には改正後の規則に対応した保安規定を整備し、変更認可申請を行うよう求めた。
これを受けて昨年4月4日には、関西電力が経産相に対して原子力発電所の保安規定の変更認可申請を実施。