原発:40年廃炉、一転「60年」容認へ 政府が方針

2012年1月17日 21時27分 更新:1月18日 0時48分

 政府は17日、原則40年で廃炉にすると公表していた原発の運転期間について「20年を超えない期間、1回に限り延長を可能とする」との方針を新たに明らかにした。今月6日に細野豪志環境相が「40年で廃炉」方針を公表した際には例外もあり得るとの見解を示していたが、年数は明らかにしていなかった。この「例外規定」が適用されれば、国内で今後認められる原発の運転期間は最長60年となる。【江口一】

 政府は、24日に召集される通常国会に関連法案を提出し、4月1日施行を目指す。

 内閣官房原子力安全規制組織等改革準備室によると、関連法案では、原子炉等規制法に「40年」の運転期間制限を明記する一方、「環境相の認可を受けて20年を超えない期間、1回に限り延長を可能とする」との規定を追加する。具体的な期間は、20年を上限に政令で定める。

 延長の考え方は米国を踏襲したもの。米国では法律で認められた40年の運転期間の後、交換困難な機器類の劣化対策を確認し、原子力規制委員会の許可が得られれば、最長20年の延長が何度でも認められる。同準備室は「国際的な動向を参考にした」と説明する。

 細野氏は6日に「原則40年で廃炉」の方針を公表した際、事業者から運転延長の申請があった場合は(1)施設自体の老朽化の評価(2)施設を保全できる技術的能力--を審査し、問題ない限り延長を承認する、との例外規定を示していた。一方、この規定により、事故リスクが高い老朽化原発を減らしていくという原発安全規制が形式化するとの指摘もあった。

 ◇「60年」経産省の従来見解に合致

 原発の寿命を原則40年と定めながら、その発表から11日後に最長で20年もの延長を容認した今回の原子炉等規制法の改正案は、「60年運転でも十分な余裕がある」としてきた経済産業省の従来見解に合致し、政府の原発規制姿勢が後退した印象を与えるものと言える。政府は「延長には高いハードルを設ける」と例外を強調するが、具体的な延長基準は示されず、専門家から強い疑問の声が出ている。

 内閣官房の担当者は、20年という延長期間の根拠として米国の例を挙げ、「世界的に認められている。(延長できる)可能性として短すぎるのも妥当ではない」と説明。具体的な延長期間や基準は、新たな規制機関となる原子力安全庁で、専門家の意見を聞いて政令などで決めるという。

 原発の老朽化問題に詳しい市民団体「原子力資料情報室」の上澤(かみさわ)千尋氏は「米国でも延長基準は緩く、実際に(運転延長が)例外になるかどうか疑問だ。原子炉の劣化を診断する方法が技術的に確立していないことを真摯(しんし)に受け止めるべきだ」と厳しく批判しており、原発の40年運転制限制が形骸化する恐れは依然ぬぐいきれない。【西川拓、比嘉洋】

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