君が代訴訟:教職員側「やり過ぎに歯止め」

2012年1月16日 21時51分 更新:1月17日 1時28分

減給処分が取り消しの判決が出て笑顔の渡辺厚子さん(左)と君が代不起立訴訟原告団共同代表の星野直之さん=東京・霞が関の司法記者クラブで2012年1月16日、梅村直承撮影
減給処分が取り消しの判決が出て笑顔の渡辺厚子さん(左)と君が代不起立訴訟原告団共同代表の星野直之さん=東京・霞が関の司法記者クラブで2012年1月16日、梅村直承撮影

 「大きな意義がある」。東京都教委による懲戒処分の一部を「不当」と指摘した16日の「君が代斉唱不起立訴訟」最高裁判決。教職員側は「やり過ぎに歯止めをかけた」と評価した。一方、都側は「今後も処分方針に変わりはない」との姿勢を示し、判決後も双方の溝は埋まらない。

 ◇都は方針変えず

 「訴えが聞き入れられて良かった」。昨年3月まで特別支援学校で教壇に立った元教員、渡辺厚子さん(61)は同日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見し、減給処分の取り消しを喜んだ。

 03年の都教委通達に基づき、日の丸が掲げられた壇上に車いすの子供たちも上がって卒業証書を受け取ることになった。渡辺さんはこれに反対し04年の卒業式で起立せず、2年前に服装違反を理由に受けた戒告処分も累積されて減給となった。喜びつつも「多くの原告の戒告処分が取り消されなかった点は憤りを感じる」と語った。

 日の丸掲揚妨害なども重なり停職処分が変わらなかった根津公子さん(61)は「訴えが最高裁に届かなかったのは非常に悔しい」としつつ「停職を『やってはいけない』とした部分は良かった」と淡々と話した。

 大原正行・都教育長は「戒告処分の判決については都の主張が認められたと考える。減給と停職の処分に関する判決については厳粛に受け止める」とのコメントを出した。都教育庁人事部の担当者は「処分は慎重に判断してきた。なぜ一部が認められなかったのか」と戸惑う。今後については「処分はこれまで通り(不起立の)回数や状況を考慮して判断していくやり方に変わりはない」と話した。都の処分者は03年度の卒業式から11年度の入学式まで延べ437人。初年度は203人だったが10年度は9人に激減し、11年度の入学式では1人だけ。現場では「問題を起こしそうな教員を式典になるべく参加させないようにした結果」との指摘もある。【和田武士、柳澤一男】

 ◇大阪の橋下市長「判決研究する」

 判決を受けて、大阪維新の会幹事長の松井一郎・大阪府知事は「『単に(職務命令違反の)回数で停職処分まではやりすぎだ』との判断が出ており、見直さなければならない」と述べ、維新の会が提案している教育基本条例案の規定を見直す考えを示した。条例案は「同一の職務命令違反を3回行った教職員を分限免職」としている。松井知事は2月府議会で条例案の修正案を提出する方針だ。

 一方、維新代表の橋下徹・大阪市長は判決について「思想の話じゃない。法令や条例に従うのが公務員で、僕の感覚なら辞めればいいと思う」としたうえで「条例案では、職務命令違反に対する指導研修を明記しており、現時点で見直すつもりはないが、判決については今後研究したい」と話した。【堀文彦】

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