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天声人語

2012年3月14日(水)付

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 さつま芋の異称に「十三里(じゅうさんり)」がある。「九里四里(くりより)(栗より)うまい十三里」と、江戸時代の焼き芋売りが宣伝したのが始まりらしい。そろばんや九九(くく)のお陰で、日本人は暮らしの中で算術に親しんできた▼だからかどうか当方も、点数はさておき数学が好きだった。誰が解いても答えは一つ、筋道がひらめけば攻めるのみ。そんな「潔さ」にひかれた一人として、学生の数学力の評判を聞くたびに寂しくなる▼数学教員でつくる日本数学会が、48大学の学生約6千人に、小学6年から高校1年までの問題を解いてもらった。多くは新入生で、それほど昔に学んだことではない。しかし、結果は寂しかった▼例えば〈偶数と奇数を足すと奇数になるのはなぜか〉。中2で勉強したはずが、まあまあ論理的に説明できたのは34%だった。「思いつく偶数と奇数を足したらすべて奇数になったから」など、苦しい答えが目立つ。〈二次関数の放物線の特徴を述べよ〉では、「曲がった感じのやつ」という感想のような解答もあった▼数学なんて社会で役立たない、と思うのは気休めである。微積分の出番こそ少ないが、確率や集合のセンスはビジネスにも必要だ。統計を装った情報操作や、数字の手品にだまされないためにも、この科目は味方にしておきたい▼数学嫌いの皆さん。論理的に考える習慣は、人生をより豊かにしてくれるはず。数(すう)が苦(く)より数楽(すうがく)だと、きょう「円周率の日」に再考されてはどうだろう。仲直りに遅すぎることはない。

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