高線量建築資材:砕石の出荷先 200社以上か

2012年1月16日 12時18分 更新:1月16日 12時38分

 福島県二本松市の新築マンションから高い放射線量が検出された問題で16日、汚染された建築資材の砕石の流通の確認作業が本格化した。経済産業省と国土交通省、県などが業者からの聞き取りなどを行っているが、出荷先は200社以上に及ぶとみられ、使用されたのはマンションや橋などのほか、仮設住宅が含まれる可能性もあるという。関係者からは「対応が遅れて全国に広がった『稲わら問題』と同じ構図だ」と怒りの声も出ている。

 「高線量」の原因とされるコンクリート原料の砕石は、計画的避難区域の同県浪江町津島地区で保管されていた。国交省や同市などによると、原発事故から同区域に指定された昨年4月22日までに、砕石業者から県内19社に5200トン出荷された。このうち2社は生コン業者、17社は建設業者で、この先さらに、計200社以上の建設関連業者に納入されているという。

 福島県は、16日午前の部長会議で、国や同市と連携しながら同様事例が他にもないかを調べるなど対応を急ぐことを確認した。(1)住民の転居などの安全確保(2)汚染原因の特定(3)類似の事例がないかの確認--を部局横断的に進める方針。

 原発事故後、汚泥やがれきの再利用については基準が定められたが、コンクリート用の砕石には基準はないままだった。砕石業者を所管する経産省は昨年5月に現地の状況を調べたが、「事業者は避難して出荷していない」との回答を受け、特段の措置は取らなかったという。今回の問題発覚を受け、福島県内の国の相談窓口には、対応の遅れを指摘する電話が次々と入ったという。

 専門家からは、原発事故当時に屋外にあった稲わらの流通を食い止められなかった問題との類似性を指摘する声も。

 近畿大の山崎秀夫教授(環境解析学)は「構図は全く同じだ。採石場は計画的避難区域にあり、国にとっては想定の範囲内で起こっていること。砕石を含め物流がどう動いているか思いが及ばないのが歯がゆい。気の毒なのは砕石業者で、出荷時点で汚染に気づくことは不可能なため、その責任を問われるのはおかしい。国の対策は全て後手に回っており、現場にしわ寄せがきている」と話した。【野倉恵、乾達、鈴木梢】

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