(2012.03.14)

己の限界に挑戦する
プロバスケットボール選手     青木勇人さん     38歳

ワンダフルワークス49回目は、横浜ビー・コルセアーズでプレーしていらっしゃる、プロバスケットボール選手の青木勇人選手です。プロという厳しい舞台で活躍するために、何を大事にしているのかを伺って来ました。インタビュー中、静かな口調に隠れた熱いハートが伝わってきました。

きっかけは友達の笑顔

質問
—バスケットボールを始めたきっかけを教えて下さい。
青木さん
小学校の頃、はじめはサッカーをやっていたんですが、そこが全く練習をしないチームだったので、試合にも勝てないし、どうやって上手くなればいいのかもわからない。それでサッカーを辞めて「何をしようか」というときに、校庭から体育館を眺めていると、友達がとても楽しそうにスポーツをやっていたんですね、それがバスケとの出会いです。 友達の笑顔に誘われました。
質問
—背番号33番というのは何か思い入れのある数字なのでしょうか?
青木さん
そうですね、ラリー・バードという選手がつけていた背番号です。バスケを始めた頃に、雑誌でバードとマジック・ジョンソンという80年代のNBAを代表する2大スーパースターを特集する記事があって、アメリカにはこういう華やかな舞台であるんだな、と思いました。影響を受けたというより、それがとても印象的だったのを覚えています。 当時はプロ野球ぐらいしか、プロのスポーツリーグを知りませんでしたからね。
質問
—日本にもバスケットボールのプロリーグができると決まったとき、何を思いましたか?
青木さん
こんな時代がきたのか、ということですね。自分の好きなものをどうやって仕事にしていくか、ということでずっと苦労してきました。当然ですけどプロがない時代は、プロになるという目標が立てられませんでしたから、バスケに関わりながら仕事をするとなると学校の先生ぐらいしかありませんでした。続けていてよかったと思うし、世の中何があるかわからないですね。

楽しんで成長する

質問
—プロになって良かったこと、苦労されたことを教えて下さい。
青木さん
自分のことを自分で責任が取れる環境、自分の限界を試せる環境にいられるということが幸せです。逆に言えば、自分の限界に挑戦し続けなくてはならないということですね。年齢も年齢ですから、「速く走れ」「もっと高く飛べ」と言われても、今の自分が持っているものでは難しいことが出てきます。それを補うために自分が何をすべきか、どういう武器を持てばいのか、それを考えてチャレンジすることが面白くもありますし、大変です。
質問
—ご自分を支えているものは何だと思いますか?
青木さん
楽観的なところですね。 真面目に自分を楽観視しています。不足分を補うための何かを探したり、バランスを取りながら色々な状況に対応できると信じてやっています。自分が変われる、ということを楽しんでいるんですね。 プロに求められるのはどんな環境にでも対応できる柔軟さで、寒い体育館でもシュートを入れるとか、暑い場所でも体力を保つとか、コーチによって目指すバスケが違ったりだとか、常に微調整を繰り返して与えられた環境に耐えられる人間だけがプロとして残れるんじゃないかな。
質問
—充実しているときはどんな時ですか?
青木さん
自分がシュートを決めて、会場のお客さんが総立ちになるという場面を何度か経験しています。あの盛り上がる瞬間を、たとえ自分のプレーじゃなくても、その場にいるプレイヤー・スタッフ・お客さんの皆で共感、共有できることが幸せですね。何度でも味わいたいし、お客さんにそういう風に感じてもらうのがやりがいの仕事ですから、モチベーションにもつながっていきます。

自立・経緯・覚悟

質問
—会社での仕事、という視点で見た場合のチームとは何でしょうか?
青木さん
コートにいる5人がフラットな関係で、ひとつのプロジェクトを成功させる感じですかね。 それぞれがスペシャリストで、一人ひとりが一番いいところを出し合うのと同時に、お互いの不足分を補う。 自分のスペシャルな部分では1番になる努力を続けて、常に同じ結果を出せるように精進し続けているメンバーが集まったのがチームです。
質問
—チームプレーを通して普段から意識していることはありますか?
青木さん
外国人選手に限らず、日本人選手同士でも、育ってきた環境が同じ人間なんて誰もいません。それを認めるということが一番大事で、新しい自分を作ることにつながります。 自立・経緯・覚悟、この3つを大切にしています。 自立は自分に責任を持つこと。経緯は自分とは違う考え、意見を認めること。覚悟はどんな環境にも対応できるようチャレンジすること。これらがあれば世界のどんな場所でも生きていけます。

全力でやれば夢は

質問
—子供の頃から続けていたことが職業になった青木さんから、夢に向かって頑張っている若者にアドバイスをお願いします。
青木さん
夢は叶わないことがある、ということを悟れば夢は叶うということです。 結局叶わなかっただとしても、チャレンジして、チャレンジして、チャレンジしてダメだったときに新しい夢が出てくると思います。そうやっていけば段々と自分の方に夢が近づいてくると思うんです。 最初の夢が叶わなくても、次の夢が叶うことは絶対に来るので、まずは夢があれば必ず出来るところまでやる。叶わないということがわかった時の覚悟、次を見つけに行く勇気は、自分が全力でやりきったという後なら必ず出てきます。人生の中で全部出しきった!と思えることは幸せだし、なかなか無いですからね。
質問
—休日はどのように気分転換をされていますか?
青木さん
行ったことのない場所に出かけます。お寺であったり街や通ったことのない道であったり色々なんですが、どこそこに行くというのが目的じゃなくて、新しいものを見つけに行くのが目的です。 鎌倉に住んでいるので、海へサーフィンをしに行ったり、浜辺を散歩したり。風邪もひけないし、怪我もできないので本業に差し障りのない程度に嗜んでいます(笑) 。
質問
—青木選手にとって仕事とは何でしょうか?
青木さん
常に自分に挑戦できる場所、これに尽きます。

>>横浜ビー・コルセアーズ

取材・文・撮影/三井泰平