ニューヨーク(CNNMoney) 信頼性の高い英語の百科事典として評価されてきたブリタニカ百科事典が、244年間にわたる印刷版の歴史に幕を下ろすこととなった。今後はデジタル版と教材の分野に注力する。
米エンサイクロペディア・ブリタニカはこれまで2年ごとにブリタニカ百科事典の新たなセットを発売してきたが、2010年に出た全32巻が印刷版の最後になる。
ホルへ・カウス社長は「ひとつの時代が終わったと言われるだろうし、それも分かるが、われわれに悲しい気持ちはない」と話す。ブリタニカといえば印刷されたセットが浮かぶものの、同社の売上高に占める割合は1%にも達していなかった。94年に出したオンライン版が15%、残る85%は教材関連の売り上げが占めてきたという。
専門家らによれば、電子書籍の普及で最も大きな打撃を受けているのは参考書や事典。「小説は紙の本がいい」という読者はいても、必要な情報はグーグルやウィキペディアで調べるケースが多くなっている。
ブリタニカ百科事典のオンライン版は年額70ドル(約5800円)、アプリ版は月額1.99ドルの有料サービスだ。無料のウィキペディアとの競合について、カウス社長は「ウィキペディアは立派な解釈からうそや中傷まで、社会のつぶやきをすべて網羅するという意味で素晴らしい技術。その一方で正確な事実を知りたいと願う人は、料金を払うことをいとわないだろう」と語った。
時代の流れに合わせ、同社のウェブサイトも来月、交流や双方向性を重視した内容に一新するという。