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週刊・上杉隆
【第126回】 2010年5月20日
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上杉 隆 [ジャーナリスト]

メディアを揺るがす“大贈収賄事件”
官房機密費を懐に入れたマスコミ人たちの常識

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 現に私のもとには英国、米国、中国のメディアから、早速この件に関する取材の依頼が飛び込んできている。

 実際、機密費を受け取ったマスコミ人はどう釈明するのだろう。今回は、「東京新聞」の記事を元に分析してみよう。「東京新聞」からの引用はすべて2010年5月18日付特報欄からのものである。

 政治評論家の三宅久之氏は、中曽根内閣時代、藤波孝生官房長官の秘書から100万円の資金提供があったことを認めた上でこう答えている。

〈藤波氏が予定していた二回の講演会に出られず、代わりに講演し、百万円(講演料)をもらったことがあった。しかし、自分の信条からして恥ずかしいことはしていない。お金の出所が官房機密費かどうかは考えたこともない〉(東京新聞)

 ところが、三宅氏は「週刊ポスト」の筆者の取材記事に対してはこう答えている。

 「(代理講演を)引き受けることにしたら秘書が100万円を持ってきた。藤波のポケットマネーだと思って受け取りました。領収証も書いていない」

 これこそ、「政治とカネ」の問題である。内閣官房からの領収書のないカネは、すなわちそれが機密費である可能性を限りなく高くする。

 さらに、領収書を受け取っていないということは、税務申告を怠っている可能性もあり、所得税法違反の容疑さえも芽生える。

三宅氏はメディアと政治の
距離感を勘違いしているのか

 そもそも毎日新聞政治部出身で、政治評論家という永田町に精通している三宅氏が、官房機密費の存在を知らないはずがない。

 仮に、知らないのであれば、余程の「もぐり記者」か、「愚鈍な記者」のどちらかである。

 そしてメディアと政治権力との距離感について、三宅氏はこうも続けている。

〈提供を「断ればいい」と言うのは簡単だが、必ず相手との関係が悪化する。最終的には良心の問題〉(東京新聞)

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上杉 隆 [ジャーナリスト]

1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局記者、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに。著書に『石原慎太郎「5人の参謀」』 『田中真紀子の恩讐』 『議員秘書という仮面―彼らは何でも知っている』 『田中真紀子の正体』 『小泉の勝利 メディアの敗北』 『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』 『ジャーナリズム崩壊』 『宰相不在―崩壊する政治とメディアを読み解く』 『世襲議員のからくり』 『民主党政権は日本をどう変えるのか』 『政権交代の内幕』 『記者クラブ崩壊 新聞・テレビとの200日戦争』 『暴走検察』 『なぜツイッターでつぶやくと日本が変わるのか』 『上杉隆の40字で答えなさい~きわめて非教科書的な「政治と社会の教科書」~』 『結果を求めない生き方 上杉流脱力仕事術』 『小鳥と柴犬と小沢イチローと』 『永田町奇譚』(共著) 『ウィキリークス以後の日本 自由報道協会(仮)とメディア革命』 『この国の「問題点」続・上杉隆の40字で答えなさい』 最新刊は、『報道災害【原発編】 事実を伝えないメディアの大罪』(共著)『放課後ゴルフ倶楽部』『だからテレビに嫌われる』(堀江貴文との共著)

 


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