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2012年3月14日(水)付

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がれきの処理―「お互いさま」の精神で

復興を妨げる震災被災地のがれきを、どう処理していくか。政府が閣僚会議を開いた。福島県内のがれきは、原発事故の放射能汚染の恐れが大きいことを踏まえ、国の直轄もまじえて県内[記事全文]

原発世論調査―国民の不信は当然だ

朝日新聞が大震災から1年で実施した世論調査は、原発への厳しい世論を映し出した。定期検査で止まっている原発の運転再開には、57%が反対した。とくに女性は賛成15%に対し、[記事全文]

がれきの処理―「お互いさま」の精神で

 復興を妨げる震災被災地のがれきを、どう処理していくか。政府が閣僚会議を開いた。

 福島県内のがれきは、原発事故の放射能汚染の恐れが大きいことを踏まえ、国の直轄もまじえて県内で処理する。

 宮城と岩手の両県は、それぞれ家庭ゴミの19年分、11年分になる大量のがれきを抱えた。焼却場増設などを急いでいるが、最終処理できたのは両県とも1割に満たない。

 政府は両県のがれきを全国の自治体で受け入れてもらう「広域処理」を呼びかけた。

 ところが、住民の反対などからはかばかしくない。これまで実現したのは、東京都など数カ所にとどまる。

 政府は、受け入れてくれるよう、都道府県や政令指定都市に文書で正式に要請することになった。それに伴う費用の補助を処分場拡充などに広げる。

 がれきを燃やした灰について「放射性セシウムが1キロあたり8千ベクレルまでなら通常の埋め立て処理で問題ない」とする環境省のガイドラインは、法律に基づく基準として、自治体にしっかり示すという。

 廃棄物の処理を担ってきたのは自治体で、国はノウハウに乏しい。受け入れようとする自治体に対し、国は十分な支援をしなければならない。

 受け入れ自治体の住民の理解がとても大切だ。

 宮城、岩手両県のがれきは、放射線量が総じて低いとはいえ、ゼロとは限らない。

 被災地から運び出すときや、受け入れ側で焼却するとき、焼却後など、きめ細かく放射線量を測り、国の基準を下回っていることを確かめる。その上でデータを丁寧に住民に説明する。こうした地道な作業を積み重ねていくしかない。

 安全の確認を前提に、一人ひとりが改めて考えたい。放射性物質への不安は人によって異なることを理解したうえで、被災地のためにがれきを受け入れられないか。「困った時はお互いさま」である。

 国会議員の間で、与野党を問わず、自らの地元に協力を呼びかける動きが広がっている。自治体のトップが協力しながら進めようとする試みも始まった。広く受け入れよう。

 がれきを被災地でそのまま埋め立てて、土地のかさあげや防潮林の盛り土に使うなど、燃やす量を減らす策に取り組む必要もある。セメント工場での原料としての利用をはじめ、民間企業の工夫にも期待したい。

 街並み再建の第一歩へ、国をあげて取り組むべきだ。

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原発世論調査―国民の不信は当然だ

 朝日新聞が大震災から1年で実施した世論調査は、原発への厳しい世論を映し出した。

 定期検査で止まっている原発の運転再開には、57%が反対した。とくに女性は賛成15%に対し、反対が67%にのぼる。

 原発を段階的に減らし、将来はやめることにも、全体の70%が賛成している。

 なかでも注目すべきは、原発に対する政府の安全対策への信頼のなさだ。「あまり信頼していない」「まったく信頼していない」で80%に達する。

 根っこにあるのは「これまで原発を動かしてきた人」への不信感の大きさだろう。

 それなのに、原子力事業者の姿勢も、規制行政のあり方も根本から改まってはいない。

 いまも「規制」を担うのは、原子力安全・保安院や原子力安全委員会だ。4月にできるはずの原子力規制庁は、法案審議のめどすら立っていない。

 各原発の安全対策はまだ部分的だし、周辺地域の防災対策の見直しにいたっては、ほとんど手つかずの状態だ。

 その一方で、再稼働に向けたストレステストは粛々と進む。報告書の中身に疑問が指摘されても、関西電力大飯原発3、4号機については近く「審査は妥当」との判断が出そうだ。

 これでは、政府が現状をろくに改善しようともしないで、政府の安全対策を信頼しろと言っているようにしか見えない。

 調査からは、このまま54基の原発がすべて止まりそうな現状への戸惑いも浮かんでいる。

 再稼働に反対の人も、脱原発に賛成の人も、どちらも原発停止による経済への影響については、「大いに」「ある程度」をあわせて約7割が「心配している」と答えているのだ。

 安全性を最優先にしつつ、経済活動に負荷をかけすぎない目配りをした脱・原発依存を進めてほしい――。多くの国民は、こんな冷静な視点で原発を見すえているようだ。

 野田政権は、この世論に真剣かつ具体的に応えるべきだ。

 まず、この夏の需給対策を早く打ち出すことだ。地域ごとの電力供給力を、第三者をまじえて精査し、データを公開する。あわせて料金やサービスの仕組みを工夫し、節電を促す。

 それでも電気が足りないとなったとき、初めて最小限の再稼働を検討する必要が出てくる。しかも、それは老朽化した原発の廃炉と同時並行の話でなければ説得力などない。

 こうした手順を踏まずに、いまの「まず再稼働ありき」では必ず行き詰まる。

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