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チベット:大規模暴動から4年 緊張緩和の兆し見えず

 中国チベット自治区ラサで08年3月に起きた大規模暴動から14日で丸4年を迎える。四川省や青海省などのチベット族自治州では、中国政府の政策に抗議し、昨年3月以降の約1年間で計26人が焼身自殺を図るなどチベット族の不満がくすぶり続けている。胡錦濤国家主席は国会にあたる全国人民代表大会(全人代)で改めて従来の社会管理を堅持する考えを強調。緊張が緩和される兆しは見られない。【上海・隅俊之、北京・工藤哲】

 08年の暴動では、ラサでチベット独立を求めるチベット仏教の僧侶や市民による大規模なデモ隊が警官隊と衝突し、多数の死者を出した。今月10日には、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の亡命につながったチベット動乱から53年を迎えた。チベット族の節目となる日が続くが、これまでチベット族居住区で大規模な抗議行動などは伝えられていない。

 ただ、米政府系の自由アジア放送(RFA)などによると、今月4日と5日に四川省アバ・チベット族チャン族自治州アバ県で男女2人が焼身自殺した。その直前の3日には甘粛省甘南チベット族自治州瑪曲県で19歳の女子学生が焼身自殺しており、四川省や青海省以外の地域にも抗議行動が拡大している。

 RFAは、今年1月にインドを訪問し、ダライ・ラマ14世の宗教行事に参加したチベット族数百人が、中国への帰国後に拘束され、ラサの施設で政治教育を受けさせられていると伝えた。

 四川省アバ県のチベット族女性は毎日新聞の電話取材に「周囲の寺院への出入りは警察によって厳しく制限されている」と証言。甘粛省瑪曲県のチベット族女性は「(焼身自殺事件が起きた後の)7日か8日ごろから、多数の警官隊が街に入ってきた。交差点ごとに3、4人の警察官が立って住民の動きを監視している」と訴えた。

 当局はこうした地域への外国人記者の出入りを制限し、情報統制を敷いている模様だ。現地への電話は通じにくい状態が続いている。アバ県では一般家庭に電話をかけていったん切れた後、再度電話をかけてもつながらない状態になった。

 胡主席は9日、全人代でチベット自治区代表団の審議に参加し、「社会の安定維持を継続し、民族の団結と統一を堅持しなければならない」と改めて指示した。RFAは13日、四川省幹部の話として、今年中にチベットの管理政策に従事する幹部1000人をチベット族居住区に派遣すると伝えた。地域の緊張の高まりが背景とみられる。

 ■今年1月以降のチベット族を巡る主な動き

1月8日 青海省のチベット族自治州でチベット仏教高僧が焼身自殺

  24日 四川省色達県でチベット族のデモ隊に治安部隊が発砲。少なくとも2人死亡

  26日 四川省壌塘県でも治安部隊のデモ隊への発砲で20歳の男性が死亡

2月11日 四川省アバ県で19歳のチベット族僧侶が焼身自殺

3月3日 甘粛省瑪曲県でチベット族の女子学生が焼身自殺

  4日 アバ県でチベット族の女性が焼身自殺

  5日 アバ県でチベット族の男性が焼身自殺

 10日 チベット動乱から53年

 14日 ラサの大規模暴動から4年

毎日新聞 2012年3月13日 21時10分

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