北朝鮮:金正恩氏、クーデター警戒 内部文書で処分指示

金正恩氏=朝鮮中央通信
金正恩氏=朝鮮中央通信

 【北京・米村耕一】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)氏が朝鮮人民軍最高司令官に任命された翌日の昨年12月31日、朝鮮労働党幹部に対し、指導部内で正恩新体制に反発する人物を特定して処分するよう指示していたことが13日、毎日新聞が入手した内部文書で分かった。独裁者だった金正日(キム・ジョンイル)総書記の急死を受けて新指導者になった直後の正恩氏が、内部からのクーデターの動きに強い危機感を抱き、その排除を急いでいた様子が明らかになった。正恩氏の党内部での発言が表面化するのは初めて。

 内部文書は、正恩氏が12月31日、朝鮮労働党中央委員会幹部に対して指示した「マルスム(お言葉)」の記録。

 正恩氏は金総書記の遺訓を順守する立場を強調し、「一寸漏らすことなく、一歩の譲歩もなく、無条件に最後まで(遺訓を)遂行しようとするのが、私の動かぬ決心である」と表明した。その中でも「人民の生活を向上させること」を最重要課題に位置づけ、「食糧問題を解決することが、最も切迫な問題になっている」との認識を示した。

 さらに「人民生活を向上させるには、多段階的に変化させるべきである」と述べ、急な変化を伴う措置を取らないよう求めた。

 正恩氏は故金日成(キム・イルソン)国家主席の生誕100年を迎える4月15日(太陽節)を前に、北朝鮮内で住民生活の改善への期待感が高まっていることを念頭に「太陽節以後、人民の生活問題が完全に解決されるというような宣伝はすべきでない」と戒めた。また、生活苦に対して住民から不平不満の声が上がっている点を認めながらも「(不満の声が)わが国の制度に対する反感の芽だとレッテルを貼って、そのような人々を法的に扱ってはならない」と指摘し、生活苦による不満と体制批判を結び付けて処罰しないよう強調した。

 そのうえで、正恩氏は「本当に危険なのは、腹の中に刀を隠し、時期を待っている極少数の不純分子である」との認識を示したうえ「人民保安、司法検察部門のイルクン(活動家)たちは、徹底的に腹の中に刀を隠している人々をえり分け、処理すべきである」と訴えた。

 正恩氏は韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領に対して強い嫌悪感を示している。「李」が韓国語で「2」と同音であり、「明博」のイニシャルが「MB」となるのを皮肉って「李明博逆徒は、知能指数が2MB(メガバイト)しかなく、政治的に無知だ」などと切り捨てた。

2012年03月14日 09時49分

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