Q 他にどんな課題 A 規制乱立、一本化構想も |
食品の虚偽表示の続発で浮き彫りになったのはJAS法の問題点だけではない。「表示」にかかわる法制度と所管する官庁が複数あることや、官庁によって対応がばらばらという縦割り行政の実情までもあらわになった。 食品の「表示」に関する規制は、農水省の所管するJAS法以外に、厚生労働省所管の「食品衛生法」、公正取引委員会の「景品表示法」、経済産業省の「不正競争防止法」の三法が乱立しているのが現状で、それぞれに法の趣旨や罰則も異なる。 例えば加工食品の品質表示ラベルの「原産地」。もし虚偽の表示をすれば、JAS法違反のほかに、「商品の原産地や品質などを誤認させる表示行為」を不正競争と位置づけている不正競争防止法違反にも該当。「原材料名」だと、食品添加物が含まれていれば「飲食を原因とした危害の発生を防止する」という食品衛生法の取り締まり対象にもなる。 この結果、一つの業者に複数の省庁が立ち入り検査を実施し、それぞれの罰則を適用するという消費者に分かりにくい構図を生んでいる。 こうした状況の改善に向けた第一歩として浮上しているのが、JAS法と食品衛生法の一本化だ。政府が進めている食品行政の見直しに合わせ、消費者保護を軸とした包括的法律の制定が構想されている。どの官庁が所管するかなど、組織改編もからむため、実現には時間がかかりそうだが、食品の信頼を担う表示の問題だけに、国の今後の取り組みに対して消費者も注目すべきだろう。 |
JAS法 | 食品衛生法 | 景品表示法 | 不正競争防止法 | |
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所管官庁 | 農 水 省 | 厚生労働省 | 公正取引委 | 経済産業省 |
法の趣旨 | 消費者の商品選択に対する情報提供 | 食中毒など飲食による衛生上の危害の防止 | 公正な競争の確保、消費者の利益保護 | 不正な競争の防止 |
対 象 | すべての飲食料品 | 公衆衛生上の、表示が必要な食品と食品添加物 | 事業者が消費者に提供する商品 | 商品やサービス、広告など |
主な表示項目 | 生鮮食品は名称、原産地など。加工食品は原材料や賞味期限など | 名称、添加物、賞味期限、保存方法、製造業者名など。品目で異なる | 原材料や原産地、製造方法など商品の品質や価格に関して著しく優良、有利であると消費者に誤認されるような表示を禁止 | 商品の原産地や品質、内容、製造方法などについて誤認させるような表示をすることが不正競争行為に該当 |
罰 則 | 改善の指示に従わなければ業者名を公表、さらに改善命令にも応じなければ50万円以下の罰金 | 営業許可の取り消し、営業の禁止または停止。処分に違反して営業すると6カ月以下の懲役または3万円以下の罰金 | 排除命令を行い、業者名を公表。命令に従わなければ2年以下の懲役または300万円以下の罰金 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
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