最終更新: 2012/03/14 01:41

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自主避難する選択をした福島市の家族の不安と希望の1年を追いました。

自主避難する選択をした福島市の家族の不安と希望の1年を追いました。
高い放射線量が確認されながらも、避難対象とならなかった地域では、故郷を離れ、自主避難する選択をした住民がいます。
行政の線引きに翻弄された福島市の家族。
その不安と希望の1年を追いました。

放射能から子どもを守るため決断した自主避難。
福島の家族が新しい土地で直面する不安と驚き、そして希望。
福島第1原発からおよそ60kmの福島市に住む、上野一詔さん(当時37)と娘の愛奈ちゃん(当時7)。
あの日から、放射能の中での生活を強いられていた。
放射性物質の吸い込みを防ぐため、外出時のマスクは欠かせない。
自宅マンションの入り口付近は、極めて高い放射線量の「ホットスポット」が存在している。
上野さんは、愛奈ちゃんに放射線の危険性を教え、被ばくを避けるために外遊びを禁じた。
閉じこもりがちな生活が続き、響生君(当時3)から笑顔が消えた。
福島の親にとって、将来への不安を植え付けたのが、枝野官房長官(当時)の「直ちに健康に影響を及ぼすものではありません」という言葉だった。
上野さん一家は2011年10月、福島市からおよそ600km離れた、札幌市に自主避難していた。
上野一詔さん(38)は「よかったですね。普通に外で遊べるっていう状況がね、なかったですからね、福島いた時は。毎日、放射能、放射能でしたからね。もう、それこそ買い物行くときでもね、車に乗る前まで、ただ駐車場に行くだけですけど、それだけでさえマスク、マスクって騒いでましたからね。異常でしたね」と話した。
現在、上野さんの家族4人は、無料で提供された3DKの雇用促進住宅で暮らしている。
新しい生活になじめるのか。
夫婦が一番心配していたのは、長女の愛奈ちゃん(8)だった。
愛奈ちゃんは「さみしかったけど、だんだん慣れてきたから、楽しくなってきた」と話した。
テレビや冷蔵庫など、家電セットは日本赤十字から提供を受けた。
そしてボランティアの手厚い支援に、上野さんは驚いたという。
上野さんは「『学校通学するのに、スキーウエアだよ』って言われて、びっくりして。そしたらもらえるってことで」と話した。
精神的にも経済的にも厳しい避難生活を支えているのは、市民団体の存在だった。
その1つが、NPO(非営利団体)の「むすびば」。
市民に呼びかけて、あらゆる生活用品を集め、自主避難の家族に無料で提供している。
上野さんの妻・淳子さん(36)は「どれにしようか、迷っていたんですけど。これを入れる? まず」と話した。
この日、上野さん一家は、響生君の洋服とホットカーペットを持ち帰った。
「むすびば」うけいれ隊の佐々木 睦子さんは「北海道は寒いので、こういった形の羽毛の布団が、とても喜ばれます。でも、とても高いので、高い品物なので、避難してきている方が購入するのはかなり難しい。こちらに見に来ていただいて、好きなものを選んでいただくんですよ」と話した。
上野さんと同じ住宅に住む吉田 しのぶさん(34)は2012年2月、福島・須賀川市から2歳と5歳の子どもを連れて自主避難した。
吉田さんは「(福島では)外も出してもらえないから、窓ガラスをガンガンたたくんですね。もう外に出たいって。やっぱそれ見た時にすっごい切なくなっちゃって。とりあえず、(福島を)出ようと」と話した。
吉田さんの夫は、仕事のために地元に残った。
現在、自主避難している人は数千人とみられるが、吉田さんのように母子だけのケースが多いという。
まだローンが残る福島市の自宅マンションを手放して、自主避難を選んだ上野さん。
経済的に厳しくなり、北海道では切り詰めた生活を続けている。
東京電力は、自主避難の子どもと妊婦に1人60万円、それ以外は、1人8万円の賠償基準を公表したが、3月にようやく受け付けが始まったばかり。
上野さんは、北海道で自動車関連の仕事に就くことができた。
冬は片道2時間の距離を通勤する。
上野さんは「今までの生活レベルを下げるしかないんですよね、避難しちゃうと。何人かはね、厳しいって帰っていっちゃうんでね」と話した。
福島を遠く離れても、わが子が被ばくしたことが、将来どのように影響が出てくるのか。
不安は消えない。
上野さんは「健康被害、本当これは誰もわからない。それが心臓病かもしれないし、それこそ甲状腺がんかもしれない。自分の子どもにも出るかもしれない。ショックですね、そういうことが起きたら。許せないですね」、「わたしの代では多分、福島には帰れないですね。なんで、自分の子ども、その次かな、その次かな、何世代か後には福島には必ず戻ってほしいですね」と話した。
支援団体によると、この3月、新たに北海道へ自主避難するのは40世帯以上。
上野さんは、そうした家族を今度は支える側になろうと決めている。

(03/14 01:11)


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