東日本大震災の津波で岩手県大槌町の吉里吉里漁港から流され、兵庫県沖の日本海で見つかった小型船が12日、岩手県内に戻った。津軽海峡を通って約1500キロ漂流したとみられる。震災から1年。海岸で津波にさらわれて死亡した持ち主の息子に渡された。
船は左官業の野崎長一さん(当時63)が釣りなどに使っていた、長さ5.7メートル、幅1.6メートルの「第3長栄丸」。昨年12月31日に兵庫県香美町の沖合を漂流しているところを、地元の漁船が見つけた。
12日は同町内の建材会社のトラックで、野崎さんの次男で岩手県釜石市鵜住居町に住む貞治さん(33)のもとに届けられた。受け取った貞治さんは「父の宝物。一緒に釣りをした思い出もある。修理して、また海に浮かべてあげたい」と話し、いつも野崎さんが座っていた後部に遺影を置いた。
船を届けた建材会社は、大槌に支援物資を運んだこともある。社長の仲村正彦さん(55)は「これも何かの縁。これからも支援を続けていきたい」と話していた。