言論表現活動への公権力介入など、多くの問題が指摘されている「人権救済機関設置法案」が近く、閣議決定されるとの情報がある。国会に提出されると十分な審議もなく他の法案とともに委員会で一括採決し、本会議にかけるのが政府の常套手段だ。衆院法務委員会理事で、弁護士でもある自民党の稲田朋美議員が知られざる危険性について語った。
人権救済は本来は裁判所の役割だ。ところが、同法案で設置される人権委員会は裁判所以上の権限を持つ。到底認めることはできない。
まず、人権委員会が対象とする「人権侵害」の範囲が広すぎる。「自分の人権が侵害された」と思えば、誰でも同委員会に訴えることができる。これは表現の自由を萎縮させる危険がある。
さらに公務員が人権侵害をしたと認定した場合、人権委員会は本人およびその所属機関などに勧告し、措置について報告を求め、措置が講じられなければ公表することになる。公務員には政治家も当然含まれる。これは政治活動に対する重大な制約になる。
例えば、法的にも事実上も、日本政府に責任がない慰安婦問題について「謝罪も賠償もしないのは人権侵害だ」と主張されるとどうなるか。靖国問題について「政治家が参拝するのは気分が悪い。人権侵害だ」と訴えられるとどうか。夫婦別姓問題の場合は…。
鳩山由紀夫政権で法相を務めた千葉景子前参院議員は「夫婦別姓は女性問題」が持論だが、これによれば「夫婦同姓を採用する現行法は人権侵害だ」との主張も可能になる。
そして、人権委員会を構成する各委員だが、地方参政権を有する者から選任されることになっており、民主党が党是とする在日外国人地方参政権が実現すれば、広く外国人が委員に就任できることになる。
実際に、小川敏夫法相はこれに積極的で、2月22日の衆院法務委員会では私見としつつ「外国人であっても職責を果たすにふさわしい人であればよい」と述べている。それでは特定の国の干渉を許すことにならないか。日本人の人権は守れるのか。
人権救済機関設置法案は亡国の法案だ。断固成立を阻止すべきである。(取材・安積明子)