(cache) SS LIBRARY -WORKS:002-004-001:砂理 その2

works:002-004-002

砂理 その2

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 薄ぼんやりとした湯気の立ちこめる手広な浴室のなか、たっぷりと湯の張られた浴槽に肩までつかった私は、自分の裸身を見下ろしていた。
 水面の揺れで歪んで見える、細身の体。
 すらりと長い手脚に、細い腰、小振りではあるが形のよい胸、茂みに隠された陰部。
「・・・・・・っ」
 股間に手を遣る。
 まだ、陰茎に掻き回された感触が残っているように感じた。
 意識し始めると、舐められた足にもむず痒さがぶり返してくる。顔の表面に不快な暖かさを覚えて、湯船から両手で湯を掬った。
 湯を顔にかけて、洗顔する。けれどかけられた精液の臭いが消えた気はしない。
「なんで、こうなるのよっ」
 弘樹を嬲ってやるつもりでいた。
 初めて出会ったのは小学生の頃。中学年になった年、私と弘樹は同じクラスになった。
 クラスを仕切っていた私に対して敬意が見えなかったので、廊下を歩いているところを呼び止めて、調子に乗らないよう注意した。すると奴は興味なさそうに私から視線をそらして去っていった。その時から私は弘樹のことが気に入らなかった。
 後になって奴が、父のライバル企業の子息だと知って、「ああ、それで私に反抗しているんだな」と一旦は納得した。以後、機会を見つけては嫌味をいったり、自慢話を聞かせてやったりしたのだが、弘樹の反応はいつも素っ気なく、どうにも面白くなかった。進学しても関係に変化はなく、弘樹が私に従おうとする様子はない。校内有数の美貌を誇る私と比べて目立たない弘樹だったが、成績では弘樹の方が上回っていたため完全に優越できている気分になれなかった。もっと直接的な嫌がらせをしてやろうかとも考えたが、弘樹には教師や上級生との繋がりが妙に多かったので手を出しづらい。
 そうして整った眉目の上に瘤ができているような心地のまま過ごしていたある日、弘樹は学校を退学する。理由はすぐに父から聞かされた。弘樹の父が経営していた会社が倒産したのだ。厄介だった商売敵が消えて上機嫌の父と同様に、私も愉快で仕方がなかった。あんな捻くれた奴には当然の仕打ちだと思った。
 けれど弘樹のいなくなった学校に通ううちに、私は考え直すようになる。
 これでは不十分だ、と。なぜなら弘樹は、私に屈服して去ったわけではないからだ。不快にさせた罰をきっちりと与えてやらなければならない。そうして私は行動を始めたのだった。
 極貧状態の弘樹との間には、圧倒的な格差がある。
 存分に格の違いを思い知らせてやれる、はずだった。
 

(弄ばれた・・・・・・)
 服を剥かれ、意のままに感じさせられたことを思い出して、赤面した私は湯船に頭を沈める。もし神様がいるなら、あの日の出来事を無かったことにして欲しかった。
 あれだけの辱めは受けたことがない。これまで私を嘲ろうとする生徒はほとんどいなかったし、いたとしても様々な手段で黙らせてきた。そんな私が、痴態を他人の目に曝してしまった。何より屈辱なのは――それが気持ちよかったことだ。
 支配されて喜んでいる自分の体が信じられなかった。
 自慰のときよりも激しい快楽に見舞われて、喘ぎを止めることができなかった。侵してくる弘樹に為す術もなく絶頂させられた。
 築き上げてきたプライドを根こそぎ奪われた私の中には、ここ数日のあいだ羞恥と後悔がぐるぐると渦巻き続けている。何をしていても上の空で、食事もろくに喉を通らない状態だった。
「このままじゃ、駄目だわ」
 きつく、奥歯を噛みしめる。
 顔を上げた私は、浴槽から立ち上がった。
 奪われたものを取り戻さなければならない。それができてこそ自分のはずだ。貞操はもう取り返しようがないが、矜持だけは譲れなかった。
「今度こそひれ伏させてやる・・・・・・そうよ、二度と反抗しないように調教してやればいいんだわ。考えてみれば、前回はちょっと優しくしすぎたのよ」
 そう決意すると、一気に気分が楽になった。
 なぜこんな簡単なことがいままで思い当たらなかったのか、むしろ不思議でしかたがない。予想外の出来事に混乱していたようだ。
 風呂から上がった私はさっそく机に向かい、夜を徹して計画を立て始めた。
「――待っていなさいよ」
 まずは部下のクラスメイトの名義で防音の効いたアパートを借りよう。家の人間に知られるわけにはいかないから、流石に自室では無理だ。
 それから手錠、ギャグボール、ディルドーetcの調教用具の数々も調達させる。もちろん、調教の現場を撮影してやるためのハンディカムも忘れてはいけないだろう。
 最悪な姿を撮影されていることが難点だが、ばらまく隙を与えずに有無を言わせず拉致してしまえば問題ない。捕まえた後、携帯は衣服ごと処理してしまおう。おそらくバックアップも取ってあるだろうが、その保管場所は躾が終わってからゆっくり聞き出せばいい。
 自分を畏れて縮こまる弘樹を想像して、私はほくそ笑んだ。

 部屋の準備は整った。
「あなたに任せたんだからこんなものよね。まぁこれでいいわ、帰りなさい」
 そういって、セッティングを任せていた女子生徒を下がらせる。女子生徒は固い声で「はい」と答え、部屋を出て行った。ワンルームの部屋に一人残された私は、小躍りしたい気分で、紙袋に詰まった器具を眺める。手錠を手に取り、チェーンのちゃらちゃらと鳴る音に聴き惚れた。
 事前に調べた通りなら、もう一時間もすれば弘樹の仕事時間は終わる。そして仕事帰りの彼を、待ち伏せしていた部下が拉致してこの部屋まで連れてくる手筈になっていた。部下はいずれも父の会社に縁のある生徒なので、私には逆らえない。
 これで準備完了だ。後は待っていればいい。
「・・・・・・ふふ」
 この密室でなら何をしてもいいのだと思うと、どうしても口元を緩めてしまう。上機嫌になった私は即興の歌を口ずさみ始めた。
「かっわい〜豚さん、まぁだかな〜 手錠と鞭がまってるよ〜」
「楽しそうだな」
 呼吸が止まり、一瞬だけ目の前が真っ暗になった。
 驚愕に全身の筋が強ばる。声の聞こえた方角を確かめる勇気がもてず、身動きをとれないまま、声が空耳であることをただ祈った。
 だが祈りも虚しく、鍵の閉まる音が背後から聞こえてくる。
「なんで・・・・・・ここ、に?」
「おまえこそ、こんなところで何をしているんだ?」
ぎこちない動きでこちらへ振り向いた砂理に、よお、と片手をあげて挨拶する。僕がここにいるのがよほど意外だったらしく、強ばった顔からは表情が抜け落ちていた。
 場を和ませるために軽口を一つ。
「奇遇だなぁ、こんなところでばったり会うなんて」
「偶然なわけないでしょう! どうしてここがわかったのよ!?」
「それはその、なんていうか、おまえって人望ないよな」
 その口ぶりから察したのか、蒼白になっていた砂理の顔に朱がはしった。
「告げ口した奴がいたのね?」
「元クラスメイトとはいまでも時々遊んでるからな」
 砂理がまた何か企んでいると教えられた僕は、砂理の部下の一人から調教部屋のことを聞きだし、さらに合い鍵を手に入れることにも成功した。砂理に反感を持っている生徒は多いので、密かになら助けを得ることも難しくない。
「言いなさい、誰が教えたの?」
「個人情報保護法ってものがあるんだ」
「関係ないわよ!」
「そうかもな。でもあんまり詮索しない方が良いんじゃないか? そいつには謝礼として前に撮った画像を渡しておいたから、バレたとわかったら報復されるまえにバラまかれるかもしれない」
「・・・・・・なっ」
「あいつらはおまえの横暴を怖がって従ってるだけなんだから、ちゃんと自衛手段も渡してやれば協力くらいしてくれる。もちろん、画像は僕の手元にもある」
 身構える砂理。僕は携帯を取りだして画面を前に向ける。
 液晶画面にはメールの編集画面が表示されていた。タイトルは『大公開! 砂理のエッチな写真をみせちゃいます☆』。ボタン一つ押せば、グループ全体に局部を曝して精液にまみれた砂理の画像を添付したメールが送信される。
「自分がどんな立場なのか、わかるよな?」
 砂理は顔面を引きつらせる。
「あなたって、最低だわ」
「ひとにケチつける前に自分のやってることを考えてみろよ。こんな部屋を用意しておいてよく言うな。このまえので少しは懲りたんじゃないかと期待したんだが、まだ馬鹿が直ってなかったのか」
「煩い! あなたが生意気だから悪いのよ!」
「そんな態度で良いのか?」
 携帯を前面に出して強調してやると、掴みかかってこようとしていた砂理は動きを止め
た。僕との距離は、一跳びで携帯をもぎ取るには遠い。憎々しげにこちらを睨む砂理へ、僕は一つめの指示をだした。
「まずは両手を頭の後ろで組んでくれ。妙な真似をしないようにな」
 砂理はすぐさま何かを言いかけたが、結局何も言わず、少しのあいだ黙りこんでから再び口を開いた。
「・・・・・・わかったわよ」
 観念した砂理は渋々うでを揚げ、頭の後ろに持って行く――と見せかけて袋から何かを取り出した。勢いよく投擲された警棒は、横っ跳びに躱した僕の服を掠めて壁に衝突する。重い音が響き、砂理の舌打ちがそれに続いた。
 精確な投擲は、反応が間に合わなければ携帯を打ち落としていたに違いない。
「あ〜あ、まさか逆らうなんてな」
「ま、まって!」
 ボタンを押す。ぴ、と電子音が鳴った。
 すると砂理は、目と口を大きく開けた間抜けな表情のまま硬直してしまった。
「はっはっは、『上』のキーを押しただけでそこまで驚かなくてもいいじゃないか。心配しなくても、送信はしてないよ。今回だけは特別に見逃してやる」
「からかった、私をからかったって言うの!?」
「次は送信を押すからな」
「やれるものならやってみなさいよ、どうせ無理なくせに! あなたの首はね、その写真を盾にしてぎりぎりで皮一枚つながってるのよ! その優位がなくなった瞬間にあなたは破滅するわ。だから、送信なんてできるわけない!」
「確かに通報されたら終わりだよ。でもそうなったら、僕が遠慮する理由もなくなるよな?」
「なっ・・・・・・」
 すぐそばまで歩み寄り、砂理の目先まで顔を近づけた。
「表向きは平和なままでないといけないからな。僕が社会的に抹殺されていないうちは、おまえを無事に帰してやらないといけない。逆に言えば、どうせ捕まるならどんな目に遭わせたって構わないってことだ」
 沈黙した砂理は、それでも目を逸らすことはせず、こちらを睨み続けていた。
 共に身動きしないまま、睨み合いはしばらく続いた。
「何か勘違いしているみたいだから教えてあげるけど」
 先に沈黙を破ったのは、砂理の方だった。
「写真を盾に脅して言うこときかせたって、それであんたが偉くなる訳じゃないんだからね。調子に乗らないで欲しいわ」
 吐き捨るように言ってから、後ろに一歩下がった砂理は、両手を頭の後ろで組んだ。
「これでいいんでしょう。次は何をすればいいのよ」
「前に向かって何歩か歩いてくれないか・・・・・・そう、それくらいでいい。それから、しばらくじっとしていてくれ。後ろを振り向くなよ」
 砂理の横を素通りした僕は袋の中を覗いて、用意されていた器具を一通り確かめてみた。各種拘束具、バイブとローター、ディルドーを接続可能な貞操帯、媚薬、首輪に鞭に蝋燭・・・・・・その他諸々。袋の外にもビデオや拘束用らしい金具が各所に設置されている。必要以上に充実している資材を見て、これ全部でいくらするんだろう、と場違いなことを思った。
「なにもたもたしてるのよ。手が疲れるじゃない」
「ちょっとまってろ、すぐに済ませる。あと、やっぱり手は腰の後ろで組んでくれ」
 僕は携帯をしまってから、ひとまず必要な準備を手早く済ませた。それから先ほどまで砂理が弄っていた手錠を拾い、腰の後ろに回った砂理の両手首にかける。これで手を前に出すことができなくなった。
 手錠の鎖を掴んだ僕は、それを強く引っぱって砂理を後ろに倒す。
「痛っ・・・・・・何するのよ!」
「べたで悪いが、これを使ってみようと思うんだ」
 遠隔リモコン付きのバイブレーターを床に倒れた砂理に見せる。
「こんなものまでわざわざ用意してるってことは、もしかして、挿れて欲しかったんじゃないか?」
「馬鹿じゃないの? それを用意した理由なんて、あなたの尻に突っ込んでやるために決まってるじゃない。今からでも遅くないのよ、優しく開発してあげるから私に身を委ねなさいよ」
「その威勢のよさだけは冗談抜きで尊敬したくなってきたけどな。じゃあ、その減らず口
に免じて選ばせてやる。バイブにはローションを塗った方がいいか? それともローション無しでいいか?」
「あった方がいいわよ。決まってるわ」
「ローションをつけて欲しければ、尻字で『ひんにゅう』と書いて見せてくれ。ひらがなでいいぞ」
「ばっ、馬鹿じゃないの!? 胸の大きさがなんだって言うのよ!」
「僕はただ書いてみろと言っただけだ。そうか、砂理は胸が小さいのを気にしていたんだな。可哀想なことを意識させてしまって御免」
「――っ」
「で、どうする。尻字で『ひんにゅう』と書くか、ローション無しで挿れるか」
「無しで挿れてやるわよ!」
 眉間の筋をふるわせながら、砂理は即答する。怒気がそのまま熱風になって吹き付けてきそうな剣幕だった。
「そうかそうか。まぁ、大丈夫かもな。初めてじゃないんだし」
「煩い!」
 僕は砂理のロングスカートを捲りあげた。すらりとした長い足と、その付け根を隠すオレンジのショーツが露わになる。やたらとヒールの尖ったサンダルを履いているのは、踏みつけるのに使うつもりだったからなのだろうか。
 砂理は動揺を見せまいとしてか、歯を食いしばって無表情を作っている。
 その両足を掴んで、左右に開いた。砂理は股を開いた格好になる。僕はショーツに覆われた秘所に身を寄せて、ポケットからジャックナイフを取り出した。
 砂理が僅かに身を震わせる。
「布が邪魔だな」
 ショーツの側部と、肌との間に刃を差し込み、外向きにはしらせた刃で幅の狭い側部の布を切断した。ナイフをしまった僕は、切断されたショーツの端を指先でつまんで、脇へ除ける。
 茂みに覆われた陰部が部屋の空気に曝された。
 意地の賜物か、砂理は羞恥を押さえ込んで、表面上はほとんど動じた様子を見せない。
「挿れるぞ」
 バイブを茂みの中に差し込んだ。割れ目に先端が当たると、砂理が身動ぎしたかすかな振動がバイブ越しに僕の手へ伝わる。そのまま割れ目の奥へ先端を進入させた。
「くっ」
 苦悶。陰部が全く濡れていない今の状態では、相当の痛みがあるはずだ。
 バイブの侵入が停まった。幾らか力を込めたが、固い壁に阻まれて奥へ進めない。
「ん・・・・・・っ」
「進まないな。それならこうしてみよう」
 リモコンを操作して、バイブを作動させた。
 『中』に設定された振動が潤滑油のない膣内を襲う。
「ぐっ、あ・・・・・・・んっ」
「大丈夫か、まだ四分の一も挿ってないぞ?」
 振動を『強』に上げる。
「――――っ や、やめて! それを、とめてっ!」
 スイッチOFF
「どうする、まだ頑張るか?」
「抜いて。いいわよ、尻字で『ひんにゅう』って書けばいいんでしょう!?」
 砂理は自棄気味に叫んだ。
 バイブを引き抜いてやると、体のバネだけで器用に立ち上がる。こちらに背を向け、前屈みになった体制で尻を動かし始めた。
「ちょっとまった」
 僕は尻字を書き出した砂理に近寄って、スカートの裾を掴んだ。一息に捲り上げて白い尻を丸出しにする。ロングスカートをエリマキトカゲのように広げ、裸の下半身を突き出した格好だった。
「よし。続けていいぞ」
「へ、変態! こんなことして何が嬉しいって言うのよ、程度の低さが知れるわね!」
「尻を見たいんじゃない。屈服させたがっている相手の前で尻を丸出しにして振らなければいけない砂理の醜態を愉しみたいんだ。ほら、よしよし、撫でてやるから頑張って字を書けよな」
「撫でるなぁ」
 尻を撫でられた砂理は一気に赤面して、逃げるように身を捩る。ようやく見せた動揺に興の乗ってきた僕は、撫でる範囲を腰回り一帯に広げた。
「早く続きを書いたらどうだ? まだ『ひんにゅう』の『ひ』が途中だろう。僕は終わるまで撫で続けるぞ?」
「この・・・・・・っ!」
 依然として尻を撫でられ続けながらも砂理は尻を動かす。耳まで真っ赤になって歯を食いしばっていた。
「ひ」「ん」「に」
「読み上げるな!」
 そうこうするうちに文字が書き上がる。脂汗の浮かんだ砂理の顔には疲労の色が現れていた。眼光の強さにも陰りが見える。
「じゃあ、今度こそ挿れよう。もちろんローション付きで」
 片足を上げさせ、立ったままで股を開かせる。僕は上がった側の腿を下から支えながら、ローションで濡らしたバイブレーターを割れ目の中へ挿入した。今度は途中で詰まることなく、あっさりと膣の奥へ入っていく。
「順調だな。尻を撫でたのがよかったか?」
「そんなわけないでしょ」
 十分奥まで入れてから、足とスカートを元に戻した。これで外見上は何の変哲もない私服姿になる。しかし実際にはスカートの中に下着がなく、膣内へバイブレーターが仕込まれていた。
「弱めから行ってみるぞ。すぐ腰砕けになるなよー」
 スイッチを入れた。このバイブレーターはリモコン操作で強さと振動の種類を調整できる。今は強さが『弱』で、細かい振動が継続し続けるモードたった。
 振動に局部を攻められている砂理はまだ直立を保っているが、堪えるような表情や肩の震えを見る限り、感じているようだ。
「気持ちいいかー?」
「最悪よ」
「ならちゃんと気持ちよくさせてやらないとな。振動させたままいつまで立っていられるか試してみよう」
 強さを『中』まで上げる。モーターの回転音が高くなるのと同時に、砂理は体を痙攣させた。
「んくっ・・・あ・・・・・・・!」
 堅く食いしばられていた口から切ない声が漏れる。接地の悪いサンダル履きの足がふるふると震え、床には愛液が滴っていた。だが崩れ落ちるには至っていない。肩で息をしている状態だったが、まだ呼吸は安定している。余裕を残しているようだ。
「抵抗するじゃないか」
「そ、そう簡単にっ、思い通りになるなんて、思わないことねっ」
「そこまで言うなら勝負をしよう。この時計が・・・・・・」
 僕は携帯を開いて床に置いた。液晶の端に写っているデジタル時計は秒単位まで表示される。現時刻は四時二分四〇秒。
「四時五分になるまで立っていられたら、前に撮った画像を捨ててやるよ」
 言いながら、バイブの振動を断続的に激しい波が来るモードに切り替えた。
 提案に驚いていた砂理は、パターンの変わった波に身を捩る。
「ん・・・んっ・・・・・・っ」
 時刻は四時三分丁度。
「あんたの魂胆なんて、わかって、るわよっ。どうせ捨てる気なんて、ないんだわ。立ってても、口先で、上手いことを言って、誤魔化すのよ。卑怯者!」
「そんなことはしない。僕は約束を守るよ。おまえが半裸で精液まみれになっている画像はちゃんと削除する。だって――どうせ無理だろ?」
 スイッチを『強』へスライドさせる。振動の強さはこれが最大だった。
 激しい振動音がスカートの奥から聞こえてくる。
「――っ!」
「どうだ?」
「ま、まだよ。ま・・・まだぁ!」
 口ではそういっているものの、既に砂理の足腰はがくがく震え、無理をしているのは明らかだった。渾身で気を張ることで辛うじて持ちこたえているに過ぎない。とはいえ、ここまで耐えられただけでも大したものだ。
「腰が震えてるぞ? まだ一分以上あるのに我慢しきれるのか?」
「・・・っ・・・・・・っん・・・」
 砂理は応えない。もう余裕がないのだろう。
 快感に歪んだ口から熱い息を荒げて、振動が来るたびに喘ぎを噛み殺している。吹き出した汗が服を湿らせ、垂れた愛液が床を濡らしていた。
 四時四分。残り時間は一分だ。
 リモコンを操作し、これまでの二つのモードの中間にある、振動がリズミカルに連続するモードに切り替えた。
「ぁ・・・っあぁ・・・・・・」
 種類の違った刺激を膣内に受けて、一瞬、砂理の顔から険しさが消えた。荒げてこそいたがテンポの安定していた呼吸がぴたりと止まる。
「もうお終いか?」
 スパートをかけた。モードを切り替え、様々な振動をかわるがわる与える。
 液晶へ視線を向けた砂理の表情に、悔しげな色が広がった。残りは四十秒。今の砂理には長すぎる時間だった。
「・・・くっ・・・・・・あぁ・・・いやっ・・・・・・まって・・・」
「限界か? もう立ってられないか?」
「く、のぉ・・・ぁ・・・・・・ん――――ああぁっ!」
 甲高い声が砂理の口から発される。
 腰砕けになると同時に、砂理は絶頂していた。
「あ・・・ぁあん・・・っ・・・・・・んっ・・・あぁ・・・・・・」
 横たわった砂理は陸に揚げられた魚のようにビクビクと体を痙攣させ、狂ったように腰をうねらせている。これまで耐え続けてきた快感が、堰を切って一気に体を襲っているようだった。後ろに回った両手が手錠で繋がった状態では股間へ手を伸ばすことはできず、必死に下半身を動かしてもフィットする形状のバイブレーターは外れない。
「・・・はぁん・・・ぁ・・・・・・あん・・・んっ・・・」
 あまりに格好悪い姿だったので、僕は声を上げて笑った。
 それに対して悪態をつく余裕すらないらしく、僕が腹を抱えている間、砂理はずっと痙攣を続けていた。
「――ふぅ、面白いなぁおまえは。そうか、頑張って堪えすぎたんだな。それで腰砕けになったとたんに気が緩んで、一気にイってしまったんだな」
 前回もそうだったが、砂理は一旦乱れてしまえば脆い。強烈なプライドによって嵌められたタガが外れれば、後は思いのままだ。
「・・・・・・ぁ・・・て・・・と、とめてっ・・・それっ・・・・・・バイブ、とめてぇ・・・・・・っ」
「そうだなぁ。まぁ、バイブはもう許してやろうか」
 僕はリモコンを部屋の隅へ投げた。
 かん、とリモコンは床を跳ね、壁にぶつかって停まった。
「勝手にスイッチを切ってもいいぞ。手が使えなくても舌があるだろ」
 砂理の顔に苦渋が浮かぶ。部屋はそれなりに手広で、砂理のいる位置からリモコンの落ちている位置までは四メートルほど離れていた。
 快楽に弛緩して力の入らない体を芋虫のように伸び縮みさせて、砂理は床を這いずり始めた。愛液を跡に残しながらの前進は、鈍い。痙攣する背筋は押し出す力をほとんど奪われていた。
「・・・はぁ・・・くっ・・・・・・あ・・・はぁ・・・ああっ・・・」
「手伝おうか」
 僕は砂理に近寄り、スカートを踏みつけた。
 芋虫の前進が阻まれる。砂理が涙目になって僕を見上げた。
「進むの大変だろう。余計な重りを外してやるよ」
 砂理の腰へ手を遣り、スカートのホックを外し、ファスナーも降ろしてやる。
「さぁ進むんだ。リモコンはまだ遠いぞ」
「く――っ」
 呻きながらも、砂理は進んだ。
 スカートから下半身が引きずり出され、白いヒップと、激しく振動しているバイブを生やした陰部が露出する。下半身裸のまま、砂理は床を這っていった。
 砂理がリモコンまであと一メートルの位置まで辿り着いたところで、僕はいった。
「そういえば、さっき四時五分まで耐えられたら画像を消してやるっていってたよな。実はあのとき、もしもおまえがあのまま耐え切りそうだったら邪魔するためにやってやろうと思っていたことがあったんだ」
 僕は砂理を跨いで、そのまましゃがみ込み、両手を構える。
「ボタン操作以外はしないってルールだから、これもありだよなーとか吹かすつもりだったんだが、考えてみれば無理があるよな。笑っていいぞ」
 両手を後ろから回して、人差し指を砂理の胸の先端に当てた。
 そして、軽く押し込みつつくりくりと指先を回す。
「――んんっ!」
「ボタン操作〜」
 砂理は仰け反った。
「・・・あっ・・・ふぅ・・・・・・っ、ああぁっ!」
 新たな刺激が加わったことで閾値を超えたらしく、砂理は二度目の絶頂を迎えた。
「ん、そんなにいいか。もっとやろう。ボタン以外の部分もちゃんとな」
「はあっ、やめっ・・・あっ・・・・・・ん、はぁ・・・」
 身を仰け反らせたことで、かえって胸を突き出す格好になってしまう砂理。その胸を服の上から弄り回す。過敏になっている胸をもみしだくうちに、三度目の絶頂が砂理を絶叫させた。
「ぁ――――っ・・・・・・はぁ・・・はぁっ・・・くぅ・・・っ・・・はぁ・・・」
「はは、ごめんごめん。遊びすぎた」
 長時間の振動と立て続けの絶頂に疲れ果て、砂理はぐったりと横たわっている。もう這いずって進む力は残っていないようだった。
「今のは僕が悪かった。リモコンは僕が取ってこよう」
 部屋の隅からリモコンを広い、砂理の隣まで戻ってくる。
 そして僕はズボンのベルトを外した。
「白状しよう。砂理があまりにも滑稽なものだから、僕も我慢できずに一回イってしまったんだ」
 ズボンの前を開き、精液で濡れた下着を表に出す。その中にリモコンを突っ込んで、下着に付着した精液をリモコンに擦り付けた。
 精液に塗れたリモコンを、砂理の顔の前に差し出す。
 眉を顰める砂理へ、言った。
「スイッチを切っていいぞ。舌でな」
 虚ろになっていた瞳に、嫌悪の色が再燃する。
「あ、なた・・・いいと、おもってる、の・・・この・・・」
 快感に震える声で言った。
「・・・この、わたし・・・に・・・・・・こん、な・・・こんな、侮辱っ・・・」
「この私って、どんな私だよ。いままでずっと勘違いしていたみたいだな」
 鋭く睨んでくる双眸を真っ直ぐ睨み返す。
「おまえはな、犬なんだ」
「いっ・・・・・・!?」
「犬だから、ご主人様の精液を喜んで舐めるんだ。そうだろ?」
「そん、な・・・な・・・なんで、わたっ・・・私が・・・・・・」
「舐めなくてもいいんだぞ。それだとバイブは動いたままだけどな。それとも、ここで腰振りダンスでもするか? 上手くいけばすっぽ抜けてくれるかもな」
「畜・・・生っ・・・・・・」
「小汚い犬が何を言ってるんだ」
「私が小汚いですって!?」
「ほら、止めて欲しかったらさっさと舐めろよ。駄犬。いつまでも待っていてやるぞ」
 上気していた顔をさらに紅潮させる砂理を前にして、にやけた笑いが止まらなかった。どれほど凄んで見せたところで、丸出しの下半身を快感に捩らせながらでは、何の迫力もない。
 砂理の逡巡は長く続かなかった。
 屈辱に震える顔をリモコンへ寄せて、乾きかけた精液が塗られたボタンへ舌を押しつける。かち、とスイッチの乾いた音が響き、バイブは止まった。
 舌先に、粘りのある液体が糸を引いた。
 振動の余韻が引くと共に、ようやく快楽から解放された砂理がぐったりと床に伏せる。
「よくできたな、犬」
「認めない・・・・・・」
 息も絶え絶えに、反駁が絞り出される。
「認めないわ。だって、こんなの・・・・・・無理矢理やらされただけじゃない」
「快楽に耐えきれずにか?」
「違うっ!」
「何が違う。悶え転がって、三回もイったくせに」
「だって・・・それは・・・・・・」
「仕方がないな、もう少しやってやろう。僕はまだ一回しかイってないし、丁度いいよな」
 僕は下着を降ろして、ポケットからビニールで包装されたゴム製品を取り出した。封を切り、ゴム製の膜を陰茎にはめる。
「そんな、まだ・・・なの?」
「今日はコンドームを忘れなかったぞ。流石に妊娠させたらまずいからな」
 それから僕は、砂理が泣き喚いて嘆願するまで行為を続けた。
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