(cache) SS LIBRARY -WORKS:002-004-005:砂理 エピローグ

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砂理 エピローグ

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 砂理が奴隷になってから六年が過ぎた。
 美月へ脅迫の終了を伝えたことで、学校での犬扱いは止まり、寝返った部下も元の鞘に戻った。榊原は写真の放棄を予想以上に拒んだが、砂理に報復の意志がないことと、もう写真からは脅迫の材料としての価値が薄れていることを説明して削除させた。伝え聞いた話によると、別人同然に毒気の消えてしまった砂理は彼女らを咎めず、逆に「これからは仲良くしましょうね」と可憐に微笑みながら言ったらしい。残念ながら退学した僕には現場が見られなかった。教室が震撼したに違いない。突如あらわれた“優しいお嬢様”の存在は部下一同および元取り巻き、更には事情を知らない他学年のファンを中心に学校全体を巻き込んだ大混乱を巻き起こしたのだそうだが、それは別の話。
 生活苦がなくなり、コネを活かして奨学金も貰えることになった僕は大検を受けて進学、大学卒業後には砂理の父の会社に入社した。当然、相当に優待されている。元ライバル企業の息子となれば警戒される恐れもあるだろうと覚悟していたが、今のところ特に睨まれてはいない。
 どうも、砂理の父はそういったしがらみに無頓着な人間であるらしい。逆に、身内を信頼することもない性質といえた。娘の砂理に対しても、早いうちからある程度の権力を与えた上で放任している。名目上僕は砂理の副官に近い立場にいるため、社長と顔を合わせたことも何度かあったが、いかにも鉄の人といった風情の人物だった。僕としても復讐等を目論んではいなかったし、両親とはほぼ絶縁状態にあったので、気兼ねしなくていいのは有り難い。必要に迫られなければ真っ当に回していくつもりだった。
 その日も仕事を終えて、家の門を潜る。
「お帰りなさいませ」
 帰宅した僕を使用人が迎える。
 砂理と婚約してから、僕はこの邸宅に住むようになっていた。豪邸と言うほど大きい住宅ではないが、家事のできる住人が僕以外誰もいないという有様なので使用人が常駐している。鞄と上着を持たせて自室に向かった。
「おかえりなさい、弘樹さん」
 部屋には砂理が待っていた。
 今日は個別に動いていたので、彼女の方が先に帰宅していたのだ。
「ただいま、辛いことはなかったか?」
「大丈夫です。言われたとおりに上手くやれました」
 よし、と頭を撫でてやる。砂理はくすぐったそうに肩を竦めながら、頬を緩ませた。二人の間で実権を握っているのが僕だと言うことは、すでに周知されている。とはいえ実態を知るものは少なく、端から僕は「社長令嬢を上手くたぶらかした男」だと都合よく解釈されていた。
 さっそく胸元に手を伸ばす。細面が朱に染まった。成長するほどその美貌に磨きをかけていった彼女だが、内面には全く角をなくしている。ついでに胸囲が成長したので、からかえる点は一つ減った。
「あ、まだ早いですよ。夕食も済んでないですし」
「今日はあまり会ってなかったから」
「でも、えっと・・・・・・」
 無抵抗に胸を揉まれながら、困り果てた砂理は目尻を下げている。その顔が可笑しくて、つい吹き出してしまった。上質な部屋着を皺だらけにしてやったとしても、彼女が怒ることはない。
「そうだな。口でやってくれないか。続きは食事と風呂の後にしよう」
「はい」
 僕は椅子に座った。それと入れ替わりに椅子から立った砂理は、僕の股間の前に屈み込むと、ズボンのチャックを開けて中から陰茎を取りだした。
 そっと口に含んで、舌で性感を刺激し始める。
 この六年間で上達した舌技が巧みに快楽を喚起した。
「・・・むっ・・・・・・ん・・・っ・・・・・・・はぁ・・・」
 みるみる勃起していく男性器。堅く充血したそれを咥えた口から、息苦しそうな吐息と、舌の立てる水音が聞こえる。舌が動くたびに背筋を昇ってくる快感が疲れた体に染みていった。
 興奮は順調に高まり、やがて射精に至る。
「出るぞ」
 伝えると、砂理は精液を床に零さないように、性器の先をくわえ込む。別の生き物であるかのように蠕動する陰茎が、口の中に精液を吐き出した。注がれていく粘性の液体を、端正な顔が静かに受け入れている。
 砂理は更に尿道に残った分も吸い出してから、精液を飲み込んだ。
「ご苦労様」
 息を整えているところへ労いの言葉をかける。
 穏やかな微笑みが帰ってきた。
 砂理は忠実な犬としてよく遣えてくれている。長いあいだ放っておくと拗ねてしまうという欠点はあったが、それはそれで可愛らしい。
「じゃあ、食べに行くか」
「はい」
 部屋を出る僕の後ろから小刻みな足音がついてくる。気分は晴れ晴れとしていた。こうして満ち足りた日々が、これからも続いていけばいいと心から思う。
 食堂へと向かう廊下に、夢見るような調子の鼻歌が響いた。
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