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不妊治療:インタビュー急接近 野田聖子さん 不妊治療に関する法制化が進みません

第三者からの卵子提供による妊娠について語る自民党の野田聖子元消費者行政担当相=衆院第1議員会館で2010年10月4日、森田剛史撮影
第三者からの卵子提供による妊娠について語る自民党の野田聖子元消費者行政担当相=衆院第1議員会館で2010年10月4日、森田剛史撮影

 <KEY PERSON INTERVIEW>

 ◇実態知らせ議論喚起--自民党衆院議員・野田聖子さん(50)

 生殖補助医療(不妊治療)について厚生労働省の部会や日本学術会議の委員会が報告書をまとめたが、法整備は進んでいない。米国での卵子提供による妊娠を公表した野田聖子自民党衆院議員(50)に聞いた。【聞き手・斎藤広子】

 --来年2月にご出産予定と聞きました。体調はいかがですか?

 ◆ 足がつったり、腰が痛かったりと大変。妊娠していなかったころに比べると気も使います。

 --第三者による卵子提供や代理出産について法制化の動きは止まっています。

 ◆ 不妊治療に消極的、規制的な法律なら作らないほうがいいと考え、当時与党の議員として03年の(厚労省の)部会の報告に反対した。現在、民主党の小宮山洋子さんと一緒に、タレントの向井亜紀さんのような、遺伝上は実子なのに民法で実子となりえない代理出産の救済について特例を作ろうとしている。不妊治療でなかなか法制化が進まないのは一般の人が治療の実態を知らないから。対象はまだ約40万人とされ、ほんの一握りの女性しか苦しんでいないから、厚労省も積極的に法律を整備しようというガッツがない。私が自ら公表し、不妊治療について賛否両論の意見が出て、国会議員が真剣に考え、行政もまともに取り合うようになればありがたい。

 --卵子提供で可能になる高齢出産は医学的リスクが高い。野田さんのような国会議員が行うと、一般の人へも影響があるのではないですか。

 ◆ 子どもを産み育てることはファッションじゃないから、「あの人がやってるから私も」などと女性は軽々しく動かないはず。

 --米国で卵子提供を受けると、数百万円かかります。他の不妊治療に比べかなり高額ですが。

 ◆ うちの夫は車1台あきらめてでも子どもが欲しくてお金を出した。日本でできれば、もっと安くなるはずだ。子どもの臓器移植もそうだが、国内なら適正な医療費の枠内でできるからこんなに費用はかからない。

 --生まれてくる子どもに第三者からの卵子提供を受けたことをどのように話されますか。

 ◆ ある程度ものがわかるようになったら伝えるつもりだ。

 --もし子どもが自分の遺伝上の母親、つまり卵子提供者に会いたいと言ったらどうされますか。

 ◆ 会えないよ、それが約束だと小さいころから言い聞かせるしかない。誰よりも望まれてきた子だから堂々としてくれ、私を信じてくれ、と。子の出自を知る権利で問題が起きるのは、ずっと親に隠されていた結果、親の子でなかったと知り混乱するからではないか。(第三者からの卵子・精子提供で生まれた子が)社会でいじめられる必要はない。もっと子どもの多様性を許容する世の中でなければならない。世界はそうやって少子化を克服しているのに日本だけが「血」を一番大事にしている。

 --子どもの出自を知る権利について、法律などでルールを決めた方がよいと思いますか。

 ◆ 基本的に親が決めるべきで、子どもの福祉を第三者がとやかく言うべきではない。その家の幸せ、その家の価値観がある。

 ◇卵子提供者に謝金必要

 --養子縁組を考えたと公表されています。

 ◆ 私も祖父の家に養子に行ったので、最初は養子縁組を考えた。しかし、見つけることができなかった。現状は法律がないまま任意団体が年をとった親はダメとか、共働きやシングルはダメとか決めている。養子縁組あっせん法を議員立法で提出する予定だ。

 --日本で卵子提供が法的に認められた場合、提供者に謝金を支払う方がよいと思いますか。

 ◆ 私たちのために1、2カ月体を酷使していただいたことへの感謝の気持ちということで、謝金という形で支払うのであれば。卵子提供者の女性には負担をかけることになるので、やっぱりメンテナンス料というか、支払う犠牲に対する謝金があってもいいんじゃないかと思う。しかし、あっせん団体はビジネスを排除し、NPOなどが望ましいと思う。

 --第三者の卵子提供や代理出産で親子関係は複雑になります。

 ◆ (自ら出産して実子と認められる)私のケースを知ってもらうことで向井さんが認められないことが異常だと思ってほしい。遺伝上はつながっていても認めない理由は日本の民法だ。法律はみんなで作るもの。社会の変化に伴い、変わっていかなきゃいけない。少子化の中で一人でも母親を、子どもをつくることが大切になる。

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 ■ことば

 ◇第三者からの卵子提供

 妻の卵巣が機能不全の場合、他の女性から卵子提供を受けて夫の精子と体外受精し、受精卵を妻の子宮に戻す不妊治療。提供女性に採卵時の副作用が出ることなどが課題。03年の厚労省生殖補助医療部会報告は、匿名の第三者のみ▽提供者への報酬は無償▽子の出自を知る権利を容認、などの条件で認めた。日本生殖医学会などは姉妹、友人からの提供も認めるなど独自の方針を示す。

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 ■人物略歴

 ◇のだ・せいこ

 衆院議員。郵政相、消費者行政担当相などを歴任。04年著書「私は、産みたい」で体外受精で妊娠したが流産したことを公表。現在、一般男性と事実婚をしている。今年5月卵子提供を受け、来年2月出産予定。=森田剛史撮影

2010年10月11日

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