ニュートリノ研究、中国が韓国を大逆転

1週間先に論文発表、「ノーベル賞候補」幻に

 宇宙誕生の謎を解くカギとなる素粒子ニュートリノの研究で大きくリードしていた韓国の研究陣が、土壇場で中国に追い越された。中国が巨額の予算を投入し、国際的な研究陣と手を結んだ結果、ノーベル賞候補となる内容の研究成果を韓国よりも先に発表したのだ。

 中国大亜湾原子力発電所のニュートリノ研究陣は今月8日、北京高エネルギー物理学研究所で、「電子ニュートリノがミューニュートリノに変化する振動比率を初めて解明した」と発表した。研究陣は翌9日、米物理学会の学術誌『フィジカル・レビュー・レターズ』に研究論文を提出した。

 科学者はこれまでに、3種類のニュートリノ(電子ニュートリノ・ミューニュートリノ・タウニュートリノ)が遠い距離を飛行しながら、別の種類のニュートリノに変化することを突き止めた。これを「ニュートリノ振動」と呼ぶ。科学者はそれを基に宇宙誕生のプロセスを探ってきた。

 過去の研究では、ミューニュートリノとタウニュートリノの振動比率は100%、タウニュートリノと電子ニュートリノの振動比率は80%と判明している。中国の研究陣は、残された電子ニュートリノとミューニュートリノの振動比率が6%であることを初めて突き止めた。ニュートリノ研究はこれまでノーベル賞を3回受賞するほど、物理学の中心分野として位置づけられている。学界では、ニュートリノの振動比率が明らかになるたびに、ノーベル賞候補筆頭に挙げられた。

 ソウル大の金修奉(キム・スボン)教授(物理天文学)は12日、「韓国の研究陣も同じ内容の論文を今週、同じ学会誌に提出する計画だ。昨年末まで世界で韓国が最もリードしていたのに、やられたという感じだ」と語った。

■研究陣の数、予算に大差

 韓国、フランス、中国は、ニュートリノが多く発生する原発の近くと遠くにニュートリノ検出器を設置し、振動比率を探ってきた。金教授の研究チームは昨年5月、霊光原発にニュートリノ検出器を完成させ、8月から検出に着手した。スタートは中国とフランスより3-4年遅れたが、原子炉出力が高い上、自然条件も良好で、研究の進展は最も早かった。

 中国が検出施設を完成させたのは昨年7月だった。韓国は116億ウォン(約8億5000万円)をかけ、検出器2台を設置したが、中国は600億ウォン(約43億9000万円)を投じ、6台を設置した。韓国は大学10校から約50人が研究に加わったが、中国は米国と手を結び、両国の38の機関の約240人による大規模な研究陣を集めた。中国は昨年12月24日から検出作業に入り、わずか55日間で世界的な発見にこぎ着けた。

■円高で部品調達に遅れ

 韓国の専門家は「韓国政府が基礎科学分野に巨額の投資を行った点は認めるが、韓国がリードしている段階でもっと支援をしていたら、状況が変わっていたかもしれない」と残念がった。研究陣がニュートリノ検出器の建設許可を受け、地域住民と環境団体を説得するのに手間取ったため、検出器の完成は予定より1年遅れた。その間に円高が進み、重要部品(日本製光センサー)を購入できずに日程が遅れた面もある。

■ニュートリノとは

12個の基本粒子のうち、電荷を持たない3種類。爪ほどの面積を毎秒1000億個がいかなる反応も起こさずに通過する。

■反物質とは

物質と質量は等しく、電気的な性質だけが異なる物質。宇宙誕生直後には物質と反物質が同量存在したが、現在なぜ物質だけが残っているのかがミステリーだ。

李永完(イ・ヨンワン)記者
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